"30 for 30" Rodman: For Better or Worse / 日本未公開 (2019) (TV) 1718本目
ロドマンは狂っている。追憶的ロドマン狂騒記『"30 for 30" Rodman: For Better or Worse』
デニス・ロドマン。きっと誰の脳裏にもあの派手な衣装(特にウェディングドレス)をまとった破天荒な男というイメージが残っていると思う。私が彼の名前を聞くと毎回思い出すのが、まだネット回線が光回線だのDSLだの言う前のネット回線あけぼの...掛け放題の頃を思い出す。信じられないだろうけど、昔はネットに繋げるために電話回線を利用するので、その分電話代がかかるのだ。30分ネットに繋げれば30分の電話代を払うことになる。だけど夜の11時になると掛け放題になる。そのチャンスだけ、ネットに十分に繋がれた時代... その頃にはまだツイッターやフェイスブックどころか、ブログすらなかった。人と繋がるのは、メールを介したメーリングリストだった。当時からNBA好きの私はNBAのメーリングリストに入っていた。そのメーリングリストで絶大な存在感を放っていたのが、デニス・ロドマンのファンの男性だ(ここまで説明メッチャ長くなった)。名前こそ失念してしまいましたが、デニス・ロドマンの話題になる度に、この頃を思い出す。ちなみにその頃のメールクライアントは、Eudora...(涙目)。みんな元気でしょうか?少なくともデニス・ロドマン本人は元気のようです。ESPNの「30 for 30」シリーズの最新作は、そんなデニス・ロドマンのドキュメンタリー。ジェイミー・フォックスがナレーションと制作総指揮を担当。
軍人の父は幼い頃に家族を捨て、母と姉に囲まれて成長したデニス・ロドマン。今となっては信じられない事だが、非常にシャイな性格でいじめられっ子だった。姉の1人がバスケットボールで才能を開花させるが、デニス本人は目立たない性格で、高校を卒業し、テキサス州ダラスの国際空港で働くも、他の人たちと共に盗みを働き逮捕され解雇。母からも追い出され、1人ホームレス生活まで経験する。しかし、その後に5フィート9インチ(175㎝)だったロドマンが突然11インチ(27㎝)も成長を遂げる。姉の影響で高校のバスケットボールのチームに入ってはいたが、フルシーズンプレーしたことすらなかったが、短大のチームにスカウトされる。そこで目を見張る活躍を見せ、オクラホマ州の小さな大学に転入。大きな大学組織NCAAではなく、小さな大学のアスリート組織NAIAにて更に活躍。所属した3シーズン全てでオール・アメリカンに選ばれ、リバウンド王2回。その成績にデトロイト・ピストンズが目をつけ、ドラフト2巡目27番目に選ばれてNBA入り(サラッと書いたけど、これは物凄い奇跡です)。その頃のデトロイト・ピストンズはチャック・デイリーHCの下、アイゼイア・トーマスやジョー・デュマースなどの若手が成長しつつあり、東の強豪として活躍していた。デニス・ロドマンと同じ年にジョン・サリーも加入。デトロイト・ピストンズのライバルは、同じく若手スター選手マイケル・ジョーダンやスコティ・ピペンなどが所属していたシカゴ・ブルズ。いい子ちゃんブルズ(というのは語弊あるけど)に対抗すべく、デトロイト・ピストンズは「バッド・ボーイズ」を形成しつつあった...
と、長くなりました。そういえば、デニス・ロドマンには自伝映画『Bad As I Wanna Be: The Dennis Rodman Story / デニス・ロッドマン ストーリー (1998)』というテレビ映画がある。ベストセラーとなった自伝本が映画化。ま、映画はアレ(お茶濁す)ですが、映画が作られるほどデニス・ロドマンは人気があったということ。☝の2パラグラフ目はざっと書いたけれど、みんなが良く知るデニス・ロドマンはそのうんと後の事で、シカゴ・ブルズ時代の頃だと思う。デトロイト・ピストンズの頃はパーティも行かない真面目男。ジョン・サリーや元チームメイトは口をそろえて「あの頃はシャイだった。クラブ(踊る方)行ってもミルク飲んでた」という。そんなシャイな男がどうして、あのマドンナと付き合って、ヴァンダムと共に映画『ダブルチーム』に出たり、自分の結婚を発表するのになぜかロドマンがウェディングドレス着ちゃうような人になったのか... このドキュメンタリーで良く分かる。父親の不在が大きいし、あとそれまで目立たなかった人が目立つようになるとコントロールが効かなくなる。
私の記憶の中のデニス・ロドマンは、狂ったようにリバウンドを取っていた。ガードで小さいくせに同じように虎視眈々とリバウンドを狙っているラッセル・ウェストブルックを見ていると、現役時代のロドマンを思い出す。デニス・ロドマンは、ゴール下でひたすらボールがゴールに落ちずに飛び跳ねてくるのを待って絶妙なタイミングでジャンプしてボールを取る姿が忘れられない。「ロドマンは狂っている」。そう言ってしまうと、恐らく人はデニス・ロドマンのウェディングドレスを思い浮かべるだろう。けど私は、狂ったようにリバウンドばかりを狙うデニス・ロドマンの狂気と情熱に敬意を払って言っているのである。ネット回線はいつの間にか繋げ方も回線も速くなっていた。イザコザなんかする暇なかった掛け放題の頃のネット時代を懐かしく思ってしまう。そして、北朝鮮の事で泣いたりしない、リバウンドだけを追っていたロドマンを私は少し懐かしくなってしまうのだ。
(3.75点:1718本目)
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