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映画秘宝 4月号

映画秘宝 4月号
2/21(木)発売の映画秘宝4月号に『If Beale Street Could Talk / ビール・ストリートの恋人たち (2018)』と『Green Book / グリーンブック (2018)』のレビューを寄せております。『ビール・ストリート』の方は映画秘宝発売日の次の日2/22から日本公開、『グリーンブック』の方は3/1から日本公開なので、公開前にも公開後にも是非!

んもう、好きな作品が書けて幸せです。『ビール・ストリート』の方は書く機会ないかな?と思っていたので、尚更。バリー・ジェンキンス監督の『ムーンライト』の尊い儚い感じが好きな人には、絶対に楽しめる作品。言葉少な目でも映像で伝わってくるあの感じ。って、この映画を思い出して、今キーボードを打っているだけでも、ウルウルしてくる。この作品を紹介出来ることの幸せをすごく噛みしめて書きました。

『グリーンブック』は『ヘルプ』とか『ドリーム』とかお好きな方にお勧め。あの当時の状況が分かりやすいと思う。

という訳で、映画秘宝4月号をよろしくお願いいたしまーす!

映画秘宝 2019年 04 月号 [雑誌]

映画秘宝 2019年 04 月号 [雑誌]

If Beale Street Could Talk / ビール・ストリートの恋人たち (2018)

愛によって生まれた『ビール・ストリートの恋人たち』

Moonlight / ムーンライト (2016)』でアカデミー作品賞に輝き、瞬く間に注目監督となったバリー・ジェンキンスの最新作。黒人文学だけでなくアメリカ文学を代表するジェームズ・ボールドウィンの「ビール・ストリートに口あらば」の映画化を次回作にジェンキンス監督は選んだ。監督は人に薦められて読んで決めたという。監督自身が一番注目を集める中で、この原作を選んだこと、それ自体が私にはもう勝者に思えた。なぜなら絶対にまたジェームズ・ボールドウィンの原作を手にする人が増えるからである。そしてこのティッシュとフォニーの物語に初めて触れることになる。それじゃなくても、熱烈な映画ファンならば、この映画をバリー・ジェンキンス監督作品として観る。そしてこの物語を知る。それだけのパワーを今、バリー・ジェンキンスは持っているのである。

「ビール・ストリートとは、ニューオリンズ<正しくはテネシー州メンフィス>の通りの名前で私の父<養父>やルイ・アームストロング、そしてジャズが生まれたところである。アメリカで生まれた黒人全員は、ビール・ストリートで生まれたのだ...」ジェームズ・ボールドウィン。1970年代ニューヨーク、フォニー(ステファン・ジェームズ)とティッシュ(キキ・レイン)は手を繋ぎ歩いていた。視線を交わし「心の準備は出来た?」とフォニーに聞くティッシュ。画面が変わって、刑務所の面会室でガラス越しに受話器でフォニーに妊娠を伝えるティッシュ。フォニーは刑務所にいるはずのない人物だった。職業訓練校で用具の使い方を学び、普段はレストランで皿洗いなどの仕事をこなしていたフォニー。2人は小さい頃からの幼馴染。だからティッシュには分かる。フォニーがあのような犯罪など決して行わないことを。フォニーが語りかけるフォニーとの固く結ばれた愛について...

< >は私が付け加えました。そうなんです。ジェームズ・ボールドウィンは間違えていたのです。ボールドウィンが語ったルイ・アームストロングが生まれたところを基準にすると、If Bourbon Street Could Talkが正しいのです。でも実はそれはポイントじゃない。ボールドウィンが語るように、ビール・ストリートはアメリカどこにでも存在する、つまりこれは普遍的なメッセージであり物語なのだと。この間違いにはジェンキンス監督も、もちろん知っていて、「それがポイントじゃない、ビール・ストリートはアメリカ黒人の生活を美しく描き出したとともに、黒人への不正を映し出した小説なんだ。フォニーが経験したことが黒人にとってとても身近なことなんだ」と語っている。確かに、今でも冤罪で捕まる黒人は多い。そんな話を今でもニュースでしょっちゅう見るし、私もツイッターでその手の話を書く。その度に私が憤るのは、冤罪で捕まった人たちにはこれだけの物語があるからだ。ティッシュという可愛くて奥ゆかしく、そして忠実な恋人は居ないかもしれないけれど、無償の愛で寄り添うティッシュの母のような存在や、息子・義息のために何でもやる2人の父親みたいな存在や、妹を守るティッシュの姉のような存在が被害者に居るかもしれず、残された彼らの気持ちを考えると心が痛むのだ。愛にも色々な形があることを知る。

そのようなボールドウィンのメッセージを、バリー・ジェンキンス監督は繊細に美しく描き出す。時には、ニコラス・ブリテルの美しい旋律とともに、そして魂をゆさぶるビリー・プレストンニーナ・シモンの曲に合わせたり、ステファン・ジェームズとキキ・レインの視線だけで描いてみたり、『ムーンライト』でも組んだジェームズ・ラクストンのカメラに頼ってみたりして。正直、ジェンキンス監督の初長編監督作品『Medicine for Melancholy / 日本未公開 (2008)』の時には、セピアの映像美が圧巻でしたが、そこまで感情を揺すぶられない感じだったのですが、『ムーンライト』からは感情が揺すぶられる。しかもかなり。『ムーンライト』も『ビール・ストリート』も、主人公が脆いからだと思う。脆いとは弱いということでは決してなく、儚いとかそういう意味の脆さ。そういうのを捉え、美しく見せるのが、ジェンキンス監督の巧さ。『ムーンライト』でも、同性愛者というマイノリティの苦悩を捉え、そして彼らの愛の姿を美しく見せた。今回は若いカップルが直面する困難を描き、そしてまた彼らの愛の姿を美しくそして強く見せた。

この映画で語られる様々な「愛」。しかし今テレビで流れてくる悲惨なニュースに「愛」など全く感じない。虐待にテロに人種や国をターゲットにした誹謗中傷ばかり。時代に逆行しているからこそ『ビール・ストリート』のメッセージを儚く、そしてそこに多様な愛の強さを感じたからこそ、美しく感じるのだ。

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(5点満点:1673本目)

Where Hands Touch / 日本未公開 (2018) 1672本目

第2次世界大戦中ドイツで起きたロミオとジュリエット『Where Hands Touch』

元々古臭いラブストーリーが好き。シェークスピアとかも好きだし、『嵐が丘』とかも好き。悲劇も好きだし、ハッピーエンドも好き。映画にハマる前の小学生時代は「りぼん」を1年半ほど買って読んでいたので、古臭い少女漫画的設定も好き。そんな私が一目置いている恋愛映画監督が、『Love & Basketball / ワン・オン・ワン ファイナル・ゲーム (2000)』のジーナ・プリンス=バイスウッドと、この映画のアマ・アサンテ。この2人は、本当に少女漫画みたいな設定の映画がすこぶる上手い!プリンス=バイスウッド監督は現代的な月9みたいな少女漫画、アサンテ監督は舞台も古い古典の少女漫画を、いつか映画化して欲しい...と、私は願っております。という訳で、アマ・アサンテ監督のこの作品を。その前に、アマ・アサンテ監督はイギリス出身で元々は女優。監督に転身。実在したダイド・エリザベス・ベルの肖像画から、妄想研究して作られた物語『Belle / ベル 〜ある伯爵令嬢の恋〜 (2014)』が最高に良かったです。

第2次世界大戦末期の1944年春、ドイツ西部ラインラントで16歳になったのがレイナ(アマンドラ・ステンバーグ)。ドイツ人の母(アビー・コーニッシュ)と、アフリカ兵の間に出来たのがレイナ。ヒトラー率いるナチス国家では、レイナの身の危険を感じた母が、レイナと息子を連れてベルリンへ逃げた。しかし、そこでも心優しいユダヤ人のパン屋が店先で殺されてしまうのを目撃してしまう。ある日、ナチスの少年・少女たちが、街で大行進をしていた。怖い物見たさでレイナはその行進の後をつける。するとナチス・ドイツ軍の若い兵士ルッツ(ジョージ・マッケイ)に話しかけられる。ルッツは、家で見たビリー・ホリディの写真にレイナは似ているという。2人は次第に仲を深めていくが...

ってもう、悲劇しか待っていないようなストーリーでしょ?ナチス側の人間とそうじゃない人たちなんて、もう無理って感じでしょ?でも仕方なくナチスに所属していた人も居たわけでして... 生きるために仕方ない部分もあった。あと、若いから分からず染められていたナチス色に...っていう人も居た筈。そして障害が大きい&高いほど、若い2人は燃えてしまうもの。戦争で引き裂かれるとか、壁&障害が大きすぎるし高すぎる。しかも第2次世界大戦のドイツなんて...っていうわけで、2人は燃え上がってしまうんですよね。ロミオとジュリエットなんて、ちょーーー恵まれていたじゃん!と思う訳です。レイナなんて、食べる&着るものですら無かったからね。あの時代のドイツで私が生まれていたら、生きていく自信まるで無いわ。ゲルマンだろうと、そうじゃないであろうとも。あんな戦争には一切関わりたくない。と、今回改めて思わせてもらいました。

生きていく目的とか、希望とか、色んなものを失っていきながらも懸命に生きようとしたレイナを演じたアマンドラ・ステンバーグに感動した。『The Hate U Give / 日本未公開 (2018)』といい、意志の強い女の子役は、この子しかいない!って位に合っている。お母さん役のアビー・コーニッシュも最高でした。

この映画、ジェームズ・ボールドウィンの言葉から始まります。『I Am Not Your Negro / 私はあなたのニグロではない (2016)』でも使われていたインタビュー映像の言葉。「幾度もふと思い考えることがある。この国での自分の役割、そして自分の将来がどのような形で入っているのかと」。自国によって壊された自分の将来。この2人の場合、あと1分早ければ... その1分が尊い。1分早ければ、手と手が触れ合うだけでなく、しっかり結ばれたことだろう。

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(4.5点:1672本目)

Monsters and Men / 日本未公開 (2018) 1671本目

注目若手俳優3人の好演と新進監督の好采配『Monsters and Men』

前にも書いたし、ツイッターにも書いたのですが、デンゼル・ワシントンの息子ジョン・デイヴィッド・ワシントンには注目している。今年一番推しな若手。デンゼル様の息子というのを抜きにしても、いい感じの主演男優が出てきたなという印象。そして、これもツイッターに書いたけれど、アンソニー・ラモスにも注目している。プエルトリコ系の俳優で、舞台『ハミルトン』で注目され、スパイク・リー監督のネトフリシリーズ『シーズ・ガッタ・ハヴ・イット』で、かつて映画版でスパイク・リーが演じたマーズを演じた俳優。彼も今凄く注目を集めていて、彼ありきのウィスキーCMにも登場している。そしてケルヴィン・ハリソン・ジュニア。彼はこの映画を機に出てくる俳優だと思う。『The Birth of a Nation / バース・オブ・ネイション (2016)』や『Mudbound / マッドバウンド 哀しき友情 (2017)』等にも出演し、これから注目作品への出演が沢山決まっている俳優です。そして最後になったけれど、監督レイナルド・マーカス・グリーンの初長編映画となるのがこの作品。サンダンス映画祭に出展し、審査員特別賞を受賞した作品。

ニューヨークの街角で運転していたデニス(ジョン・デイヴッド・ワシントン)。車内からはラップが流れていたが、局を変えたら、アル・グリーンの「レッツ・ステイ・トゥギャザー」が流れ、ノリノリでハモるデニス。しかし、その後、警察に車を止められた。自分も警官なのに... バッジを見せてすぐに開放された。大きなため息をつくデニス。別の一角でマニー(アンソニー・ラモス)は仕事の面接を受けていた。帰ってきて着替え、店先で仲間たちとダイスをしていたら、パトカーの音がした。逃げながら目にしたのが、いつも挨拶するDという男が、警官たちから羽交い絞めされていた。急いで携帯で録画するマニー。そしてその近所に住んでいたのが、メジャーリーグ有望選手で高校生のジーリック(ケルヴィン・ハリソン・ジュニア)。3人はこの事件に絡んでいくが...

という訳で、完全にエリック・ガーナー殺人事件ですね。ニューヨークの街角の店先で違法タバコを売っていた所、警官たちに羽交い絞めで窒息させられて殺されてしまった事件。この事件を元に描いていると凄く感じた。でも人が3人集まれば、それぞれの物語が生まれてくるのは当然のこと。それを見事に描いている。そしてそれぞれ違う立場の苦悩が描かれているのも良い。でも3人に感じるのは別の種類だけど「プレッシャー」というモンスター。

3人の主演も素晴らしく。そりゃ、これからどんどん来るよね!と感じました。そしてこの映画を観て思い出したのが、全然違うテーマなんだけど、やはりニューヨークが舞台の『Gun Hill Road / 日本未公開 (2011)』という作品。うん?監督2人ともにグリーンだぞ!と思ったら兄弟!やっぱり。本当に全く違うテーマでして、あちらはトランスジェンダーティーンが主人公。だけど、背景というか舞台のニューヨークの街角に同じ匂いというか雰囲気を感じたんですよね。ニューヨークなんて広いし、それこそ色んな監督が撮っている場所なのに、この兄弟には似たものを感じました。観た後に調べて驚いた。

そして、今のアメリカ問題には欠かせないのが、「ブラック・ライヴス・マター」。『The Hate U Give / 日本未公開 (2018)』と同じですね。今必要な映画。今こそ観るべき映画。

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(4.5点:DVDにて鑑賞)

Lionheart / ライオンハート (2018) 1670本目

ようこそノリウッドへ!『Lionheart / ライオンハート

ナイジェリア映画。という事はアフリカ映画である。が、しかし、アフリカの映画をアフリカ映画とひとつにまとめてしまうのは、結構危険だ。私がかつてアフリカ映画を勉強する為に読んだのが、その道の権威マンシア・ディアワラのAfrican Cinema: Politics and Culture (Blacks in the Diaspora)という本。この本は、植民地支配をしていた国ごとに語られている。国民の娯楽となる映画制作には、植民地支配していた国の支援が不可欠だったからだ。とはいえ、今回のナイジェリア映画も歴史はあるものの、1960年代から映画を作ったオスマン・センベーヌ監督のセネガルに比べると、情報が少ない。セネガルやマリなどのフランス語圏からは、カンヌやベルリンと言った大きな世界映画祭に出展され、そして賞に輝くような監督が沢山誕生しているが、ナイジェリアからはオラ・バログンなどがいるが、国の大きさと人口を考えると少し寂しい。そしてナイジェリアは英語圏なので、娯楽はアメリカからの輸入も多かった。あとアフリカ全体では、インド映画が楽しまれているのもある。しかし、ナイジェリアは近年「ノリウッド」と呼ばれるほどに映画産業が発展しており、その産物が今回の作品であろう。ナイジェリア映画として初となるNetflix作品であり、近年大きくなったトロント映画祭でプレミア上映された。ナイジェリアを代表する女優ジェネヴィーヴ・ナジ主演・監督。

ナイジェリアの南東の位置するエイヌグにて大きなバス会社を経営しているオビアグ家。経営者で家長であるアーネスト(ピート・エドチェ)が倒れ、オジ(ンケム・オウォー)がその跡を引き継ぐことになった。会社の大きな役職につき、自分が継ぐものだと思っていた娘アダエゼ(ジェネヴィーヴ・ナジ)は戸惑い悩む。会社のため、オジに力を貸すアダエゼ。しかし、父が多額の借金をしていた事が分かり、アダエゼとオジは会社存続の為に頑張るが...

この映画観た時、思い出したのが去年ヒットし話題になった『クレイジー・リッチ!』。文化を感じさせる独特なゴージャスさと色彩が綺麗だった。この映画では特にナイジェリアの国旗の色ともなっていて国を感じさせるグリーンの色使いが艶やかで美しい。それが壁やアダエゼのドレスの色だったりする。他のアフリカ映画に比べると、同じような色彩の美しさと伝統を感じつつも、他にないゴージャスさを映像に凄く感じた。そして、映画そのものの内容は、アメリカのタイラー・ペリーを感じさせてくれた。頑張っていたら、誰かが手を差し伸べてくれるかもしれない。そしてナイジェリア映画は、彼らが昔から馴染んでいるアメリカの影響を受けていて娯楽テイストが大きい。オジのおおらかさと自由な所が好きだ。そしてやや堅物な父がとある人物と意気投合するシーンも好き。ああいう所はナイジェリアあるあるなのかな?と思わせてくれた。という感じで、知らなかったことを知れる、そして興味を持たせてくれる。新しい扉を開かせてくれた。

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(3.75点:1670本目)

Green Book / グリーンブック (2018) 1669本目

生き抜くためのサバイバルガイド『グリーンブック』

ただ今開催中(書いているのは1/15)の賞レースで助演男優賞枠を総なめしているのが、本日のこの作品のマハーシャラ・アリ。本戦のアカデミー賞も一番の候補者であり、もし受賞したら『Moonlight / ムーンライト (2016)』に続いて2回目となる。そんなアリが演じたのが、実在するピアニストのドン・シャーリー博士。その名の称号で分かるようにピアニストながら、博士号を持っている。と、私はてっきり彼が主役だと思っていたので、賞レースが始まってからマハーシャラ・アリが助演男優枠だったのが驚きだった。主役は、そのシャーリー博士の運転手を務めたトニー・リップ。『ロード・オブ・ザ・リング』でサラサラヘアーで奥様たちを惑わせた美魔オジ様ヴィゴ・モーテンセンがトニー・リップを演じている。ちなみに、タイトルのグリーン・ブックとは、ニューヨークの郵便職員が発行していた、黒人ツーリストの為の南部ガイドブック「ザ・ニグロ・モータリスト・グリーン・ブック」から。これについては、後で詳しく。

1962年のニューヨーク。NYで有名なナイトクラブの用心棒として裏社会に片足を突っ込んでいたのがトニー・リップ(ヴィゴ・モーテンセン)だった。家の修理に来ていた黒人労働者に水を出したトニーの妻。それを見て、嫌悪を感じそのコップを捨ててしまうトニー。そして数日後、紹介してもらった職の面接に行くと、そこはカーネギー・ホールだった。その階上のゴージャスなアパートに住んでいるのが、ドン・シャーリー博士(マハーシャラ・アリ)。シャーリー博士は、南部へのクリスマス・コンサートツアーで運転手を探していた。出発の日、シャーリー博士のレコード会社から、「グリーン・ブック」を渡される。トニーはレコード会社の人たちから「シャーリー博士は黒人なので、南部では泊まれる所が限られているので気を付けるように」と注意を促された。シャーリー博士とトニーの歪な旅が始まった...

まず、舞台となった1962年という年。南部と言えば、公民権運動。実は1962年には大きな出来事は無かったのだけど、丁度激化していた頃。1957年のリトルロック・ナイン以降に学校での人種融合を目指す活動が盛んになって、1960年には大学生によるシット・イン運動が始まり、その頃に非暴力学生調整委員(SNCC)が設立1961年にはSNCCが中心となりフリーダム・ライダーが行われた。そして1963年にキング牧師が「私には夢がある」の演説をしたワシントン大行進が開催。そして1964年に公民権法が設立1965年にはマルコムX暗殺、キング牧師のセルマ行進ワッツ大暴動があった。(リンクはそれぞれ関連映画作品をつけておりますので、クリックしてみてください)と、大体時代背景は、分かって貰えます?あのワシントン大行進の前で、丁度大きく揺れ動こうとしている直前で、公民権法が設立される前が1962年。そんな中発行されていたのが「グリーン・ブック」。先に書いたように、ニューヨークの郵便職員が発行していたガイドブック。ガイドブックっていったって、「この店が美味しくておススメ!」とか「このホテルはアメニティが充実で最高!」的な感じでは全くない。生き抜くためのサバイバルガイドブックといった方が近い。1896年のプレッシー対ファーガソンの裁判で「分離すれど平等」が認められて以来、黒人には入れないレストランや泊まれないホテルが沢山あった。そして、この映画のセリフにも出てくるが「サンダウン・タウン」=白人の街には踏み入れない事が鉄則であった。南部に住んでいる黒人ならば、何となくその見えないルールは分かっているが、北部や他の州の人には分かりにくい。北部のシカゴから親戚がいるミシシッピーに遊びに来て、そういうルールが分からず殺されてしまったのが14歳のエミット・ティル少年。1955年のことでした。そういう悲劇を無くすため、分かりやすくしたのが「グリーン・ブック」というガイドブックなのである。

実はシャーリー博士の遺族から、この映画は猛烈な批判を浴びている。シャーリー博士とトニー・リップは友達関係ではなかったし、家族から孤立もしていなかったと。なんていうか、作風が『The Help / ヘルプ 〜心がつなぐストーリー〜 (2011)』に似ていると思った(ちなみにこの『グリーンブック』の制作者の1人が『ヘルプ』に出演したオクタヴィア・スペンサー)。白人観客に支持されるタイプの作品。でも私はそれは悪いとは思わない。だって、こういう問題って、(偏見を持つ一部の)白人側にあるので、彼らが好み、そしてこの映画のトニー・リップのように変われるなら、それは最高だと思う。まあでも、史実でトニーが変わったように、映画を史実通りに描いても、多くの観客の心を打ったかもなーとも思う。でもさー、『BlacKkKlansman / ブラック・クランズマン (2018)』の時にも書いたけれど、こういう映画って観て欲しい人は観ないものよね。こういう映画を観る白人観客って元々関心を持つ人が多い。それでも1人でも変えることができるなら...とは思う。

それにマハーシャラ・アリヴィゴ・モーテンセンも凄く良い演技をしている。美魔オジ様モーテンセンはずっと上品な人だなっていうイメージがあったので、あんな感じのビール腹の労働階級男性を演じるとは思いませんでした。

ちなみに南部住んでいるからこそ知っている。今でもサンダウン・タウンはあることを。うちの義弟は帰れなくなり、家族が迎えに行ったことがある。そして義母はいつも一歩手前のハイウェーの出口から出ている。住んでいる所のハイウェー出口付近は、嫌がらせをする人たちが多いそうだ。変わらないけど、いつかは変わって!

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(4点:1669本目)

Support the Girls / 日本未公開 (2018) 1668本目

サポート・ザ・(グッド)・ガールズ『Support the Girls』

SXSW祭でプレミア上映されたインディペンデント映画。その後に劇場公開されたが、限定公開だったのでひっそりと公開された感じ。しかし、批評家からの受けは良い。この映画のことを知ったのは、確かニューヨーク映画批評家サークル賞だったと思う。主演のレジーナ・ホールが最優秀主演女優賞に輝いた。そして、今年に入ってから早々にオバマ前大統領が自らのSNSにアップした「2018年のベスト」の映画部門の最後にこの映画タイトルがあった。正直、私は驚きが隠せなかった。実はその前に図書館でこのDVDを見かけたのだけど、年末で忙しいから来年に入ってからでいいやと思ってしまっていた。ジャケットとかにそこまで期待出来なかったのが理由。で、年明けにオバマのリストを見て、速攻借りに行きました(笑)。オバマがリストにアップする位なら、ネタ的にも観ていて損はないだろうと... ま、私もそこらへんに居る「○○さんが良いって言ったから」に左右される分かりやすい人です。しかも○○さんが著名であればある程影響されちゃう。

リサ(レジーナ・ホール)は、地元にあるバー「ダブル・ワミーズ」のマネジャーだった。ダブル・ワミーズは、女性ウェイトレスがエロい露出の多い服装でサービスするタイプのスポーツバーで、リサは彼女たちのスケジュール管理からプライベートなことまで処理していた。しかしオーナーは無能で無理難題を言ってくるばかりだし、ウェイトレスたちも問題を抱えている人ばかりでてんてこ舞い。リサは恋人から暴力を振るわれたウェイトレスを助ける為、オーナーに内緒で店前でファンドレイジングを始めるが...

まあ、正直、オバマの評価がそこまで高かったのが意外だ。確かにレジーナ・ホールは好演しているし、ウェイトレスの女の子たちも可愛くて魅力的だけど、私の2018年のトップテンには入らないかなーと。明るくて元気が良くて、私が好きそうなタイプの映画ではある。好きな人はハマるかもしれない。オバマみたいに。

ウェイトレス、みんな可愛いんだけど、マーシ役のヘイリー・ルー・リチャードソンが滅茶苦茶可愛かったー!こういう映画のこういう役にありがちな脳みそ足りないタイプに見えて、実は周りも見えていて空気も読めるって感じで、出来る良い子。今日の写真でもレジーナ・ホールの肩に寄りかかって甘えていて、本当に可愛い!今回初めて観たダンエール役のシャイナ・マクへイルは、物凄く雰囲気ある。でも演技は...って感じかな。この子も性格が可愛い。良い子。タトゥの子も笑えた。あの子も良い子。と、良い子が多い!のが、この映画の良さかなー。でも悪い人は本当に悪い。オーナーはクズだし、1人の女の子もダメ過ぎる。そしてこの2人が私を最高にイラっとさせてくれる。あと、この映画のレジーナ・ホールのメイク&ヘアメイクさんは酷いと思う。わざとダサくしたのかもだけど、酷い。あれはない。

なんていうか、使われる立場は辛い。結局のところ、アメリカでは自分で開拓していかないと思い通りにはならない。確かにうわー!ってなる時ある。誰でもああいう時はあると思う。そんな時だって、分かってくれる人は居て側に居てサポートしてくれる。普段の行いがあったからこそ。

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(3.25点:1668本目)