SOUL * BLACK MOVIE * ブラックムービー

ブラックムービー、ブラックスプロイテーションなどについて


*10/15/2018に「ブラックムービー ガイド」本が発売になりました!よろしくお願いします。(10/15/18)

*Cinemoreにて定期的に映画について書いております。
*映画秘宝 1月号にて『ルディ・レイ・ムーア』について寄稿&インタビュー翻訳手伝い。(11/20/19)
*Cinemoreにて『大逆転』(83)についてを寄稿。(7/17/19)
*Cinemoreにて『星の王子ニューヨークへ行く』(88)についてを寄稿。(7/6/19)
*Cinemoreにて『スタンド・バイ・ミー』(86)についてを寄稿。(7/2/19)
*サイゾー 7月号にて『ザ・ヘイト・ユー・ギヴ』についてコメント出しております。(6/18/19)
*Cinemoreにて『シャフト』(2000年)についてを寄稿。(6/26/19)
*映画秘宝 7月号にてジョン・シングルトン追悼記事を寄稿。(5/22/19)
*ENGLISH JOURNAL (イングリッシュジャーナル) 6月号にて「ブラックムービーとアカデミー賞」の記事を寄稿。(5/7/19)
*ユリイカ5月号のスパイク・リー特集にて2本の記事を寄稿。(4/27/19)
*映画秘宝 6月号の「サノスの倒し方大全!」特集でサノスの倒し方を寄稿。(4/20/19)
*Fridayデジタルにて「激ヤバで面白い『ブラック・クランズマン』はトランプへの挑戦状!」というコラムを寄稿。(3/20/19)
*映画秘宝 5月号にてブラックムービー、スパイク・リー、『ブラック・クランズマン』、『ヘイト・ユー・ギブ』を寄稿。(3/20/19)
*映画秘宝 4月号にて『ビール・ストリートの恋人たち』&『グリーンブック』レビューを寄稿。(2/21/19)
*DU BOOKS 「ネットフリックス大解剖 Beyond Netflix」に『親愛なる白人様』について寄稿。(1/25/19)
*映画秘宝 3月号秘宝ベスト&トホホ10&ドラマ・オブ・ザ・イヤー2018に参加。(1/21/19)
*リアルサウンドにて「ブラックムービーの今」というコラムを寄稿。(1/3/19)
*『ブラック・クランズマン』マスコミ向け試写会用プレスにスパイク・リーについて寄稿。(12/19/18)
過去記事

Queen & Slim / 日本未公開 (2019) 1733本目

もうそうなるしかない2人『Queen & Slim』

私がこの『Queen & Slim』を観た直後に思い出した作品がタランティーノの『トゥルー・ロマンス』だ。疾走感とか痛々しさがあって、『トゥルー・ロマンス』と似ている。主演は『Get Out / ゲット・アウト (2017)』や『Black Panther / ブラックパンサー (2018)』のダニエル・カルーヤ。今回初めて大きな役に抜擢されたジョディ・ターナー・スミスがお相手。監督は、ビヨンセの『レモネード』が話題となったミュージックビデオ出身のメリーナ・マツーカス。彼女にとって長編デビュー作となった。AFI祭でワールドプレミア。レッド・ホット・チリ・ペッパーズのフリーやミュージシャンのスタージル・シンプソン(元川崎住民!)とかの出演も話題。

オハイオ州クリーブランドのダイナーで、スリム(ダニエル・カルーヤ)とクイーン(ジョディ・ターナー・スミス)は食事をしていた。2人はいわゆるヤリモク用アプリであるティンダーで知り合ったばかり。しかし、クイーンはその気を失せてしまい、スリムが車で送っていた。運転を少し誤り、蛇行したところで、警察に止められてしまう。スリムは大事(おおごと)にせずに、警察に従うことでやり過ごそうとしたが、弁護士であるクイーンはそれを許さなかった。クイーンの態度にイラついた警官は、運転手のスリムを外に出し、ボディチェックやトランクを調べるなどして、2人をイラつかせた。そして、スリムはつい「寒いから早くしてくれませんか」と言ってしまい、それが警官の逆鱗に触れてしまう。その直後、2人はクリーブランドを南下し、クイーンのおじ(ボキーム・ウッドバイン)がいるニュー・オリンズへと向かっていた...

そう、この映画の面白さは、最初から愛し合うカップルではなかったという所。お互いの第一印象は最悪だ。まるで日本の少女漫画的展開なのです。お姫様抱っこもあるし!でも展開やお姫様抱っこだけで、スリムがSキャラとか王子キャラとかハイスペックとかいう少女漫画的キャラではない。でも、アメリカの男子キャラあるあるの一つ、キリスト教信仰心熱いキャラではある。車のライセンスプレートに「Trust God(神を信じろ)」なんてつけているくらい、かなり相当熱心。スリムはハイスペックではないものの、徐々に分かる部分もあるけれど、割りと良い所の息子。上流ではないけれど、中流階級の出身ぽい。一方、クイーンの方は割りと面倒臭い性格ぽさがあった。それでも弁護士までなったガッツのある女性ではある。そんなちぐはぐな2人が、6日間の旅で知り合い、そして恋に落ちていく訳です。全ては最初から判断を間違えていた...としか、言えない。だから、もうそうなるしかないよねって感じで物語は進んでいく。6日間、恐らく彼ら2人はいつもより大胆で冒険心に満ちていた。でも、やっぱり全ての判断力が欠如している。だが、そんな2人を周りの人々...とりわけ黒人には英雄化してしまう。そんな様子を現代のソレにそのままはめ込んでしまっているのが面白い。ブラックパンサー党だと勝手に判断されたり、そのまま英雄のまま持ち上げられていたりする。絶対に英雄ではないのに。判断を誤っただけなのに。その辺りを意図的に描いていたとしたら、もっとこの作品を好きになれたかもしれない。でも、ジュニア(ジャヒ・ディアロ)を描いたことは、少し意図的に描いているかもしれないとは思った。という点で、この作品は単なる恋愛ロードムービーとも違うのだ。

この作品で一番好きなのが台詞。とても素晴らしい。物語以上だ。最後は上手くて思わず涙がこぼれる。こういう疾走感のある作品には、ああいう熱い出来過ぎな台詞が決まる。でも主人公の2人は熱いというより、クールなのも良い。どことなく冷めている。2人の身長もちぐはぐなのも良い。2人の関係性を表しているようだ。ちなみに今日の写真のシーンは最高なので、楽しみにして欲しい。そして今日の私の決め台詞(結びの言葉)も、このシーンから。ボキーム・ウッドバインのおじさん役も良い。ボキーム・ウッドバインはいつも印象的だ。イラク戦争でおかしくなったけれど、姪っ子を思う気持ちだけは正気。ダサいピンプ役がハマっている。『Pose』にも出ているインディア・ムーアも雰囲気バッチリで良い。

この映画には正しい判断力が必要だ。彼らを英雄視しない判断力。英雄ではないけれど、あのような仕打ちをされるべきではなかった愛おしい2人がいる...その証拠がこの作品に残っているのだ。

(4.5点:1733本目)
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2019年、令和元年。

2019年、令和元年。

今年は令和元年。「元年」を経験するのが2度目となり、「いやー、年食った!私、もう結構年寄りじゃん」と思っております。まあでも、前の「平成元年」の時より、確実に「元年」と書く(打つ)機会は減ったように思う。もう元号使うような時代じゃないかもだし、私は日本の書類あまり書かないからでしょう。なので、そこまで年寄を感じずに済んだ。

まあ今年は、毎年ながらというか、当然なのですが吉凶入り混じった年でした。というか、後半は小さな凶が多め。そして今年はよーーーく割れた!ガラス的な物が!耐熱ガラスの分厚い皿(こんな感じの)をオーブンから取りだして置いた瞬間にバリっバリバリ...って音とともに割れた。時間掛けて作った料理は駄目になるし、掃除大変でした。あと、いきなりパリッーンって音がしたので、音の主を求めて色々な部屋をチェックしたら、トイレの電球が何もしていないのに割れていた。これも掃除が大変でした。数日前には、夫が瓶落としたり。ま、これは夫のおっちょこちょいですが、他2つは不可抗力による割れ。良く割れたなー、今年。あと、今年は買い物の神様に見捨てられた。欲しくて買いに行くと、大抵が売り切れ。そして中々再入荷なし。我慢の年でした。

毎年になりますが、映画ブログなので年間ベストで〆るのがベストなのですが、映画秘宝3月号までお楽しみにしておいてくださいませ!私も、映画秘宝ベスト10&トホホに参加させて頂くようになってから、10年が経ちました。本当ーーーに有り難いことでして、感謝です!って下書きしておいたんですがぁあああああああああああああああああああぁかあああああ... 映画秘宝の休刊ニュースで、私の楽しみとか希望とか夢とか脳とか心とか涙とか、いろんなものがぶっ飛びました。でも、絶対に戻ってくると心から信じて待っております!来年も映画秘宝で年間ベストが出来ると信じております!!!!!!!!!!!

<今年のマイブーム>
さて、今年の私の新しいことといえば、漫画にすっかりハマってしまったことですかね。実は、漫画にハマるのは4回目です。初めてハマったのは小学生の頃。私が小学生の頃の女子は、「りぼん」派と「なかよし」派に分かれておりまして、私はりぼん派でした。って、ここでハマっていた漫画を書いてしまうと、年齢がバレるので控えておきます(* ´艸`)クスクス。あと、その頃には兄が買っていた/借りてきた『こち亀』とか『プロレスラー列伝』や『あしたのジョー』を無茶苦茶読んでました!『こち亀』は28巻とかくらいまでは、かなり読みました。あと、この頃に学校の図書館で読んだ『はだしのゲン』で顔面蒼白になってトラウマになって、お陰で物凄く平和主義になりました。つい先日も夫に「アメリカ人は『はだしのゲン』を読んだ方がいい」説を力説いたしました。でも、中学に入るちょっと前に『バック・トゥ・ザ・フューチャー』観てから、ロードショーとかスクリーンを買い始めて、お小遣いの関係もあり、漫画を買わなくなってしまった。

第二次は、また兄の影響で、高校からそのちょっと2年位ですかね?兄が『モーニング』とか『ビッグコミック』という類の青年漫画雑誌を買っていたので、勝手に読んでいた時期。『美味しんぼ』とか『クッキングパパ』とかの料理系漫画をよく読んでました。ただ、兄発信で自発的ではなかったので、すぐにブーム終わる。

第三次は、結婚して新しいお友達が出来た時ですね。そのお友達が漫画が好きで詳しくて、色々と貸してくれたのです。『行け!稲中卓球部』とか『ガラスの仮面』(||| ゚Д゚|||)(←白目に縦線を表現)とか読ませて頂きましたよ。『あしたのジョー』を大人買いで買い直したのもこの時期です。でも、これまた自発的ではなく、すぐにブームは終了。

そして迎えた今の第四次!これは、今年の1月に放送した『初めて恋をした日に読む話』の影響でブームはやってきました。ドラマの進み具合で、どーーーーしてもその先が知りたいと思っているところに、無料お試し読みが出来るので読んでしまったら、ハマってしまったのです。速攻で、原作を大人買い。そして今に至る... 今、恐ろしいほどにお金をつぎ込んでいます。で、この第四次漫画ブームで、自分自身で気が付いたことがある。私はビジュアルがあった方が、逆に想像力が増す。小説の方が普通は想像力を掻き立てられるというけれど、私は本だとどうしても遅読になってしまい、あまり集中出来ない。でも漫画だとサクサクと読めるし、そこに描かれていないことを逆に読み取ろうと、色々と想像してしまう。映画でもそうです。見えるからこそ、逆に全てが見えていると思っていない。その部分を読み取ろうと私の想像力を掻き立てられる。

<今年のハマりドラマ>
という上の流れを受けて、もちろん『初めて恋をした日に読む話』ですよねー。横浜流星のユリユリは最高でした!横浜流星のことは、『刑事ダンス』の暗い役の時から気になっており、横浜くんが出ているので『怪獣倶楽部』と『兄友』を頑張って見続けた位。だから『はじこい』も深キョンと横浜くんだしーと見始めて、ハマった。そんな訳で、私の中では割りともう有名だった横浜くんがオーディションでユリユリ役を獲得したのは意外だった。てっきりオファーだと思っていたので。原作のユリユリって相当カッコいいのに、超えてきたよね。ただ原作が終わっていないので、ドラマは原作の進みを越した部分から、ちょっと「あれれ?」となったかな。原作が終わってたら、このドラマはもっと伝説になっていたでしょう。原作の良さを更に磨くのが上手い脚本・演出だったので。そして、深キョンが超ー可愛かった。深キョンと言えば、『ルパンの娘』も面白かった。突き抜けた面白さが最高で、小沢真珠とか渡部篤郎とか栗原類とか大貫勇輔という助演も素晴らしかった!深キョンの相手役に瀬戸康史は甘すぎる気がしたけれど、良い意味で予想を裏切るお似合い具合で良かった。『G線上のあなたと私』も最高です!中川大志の理人が原作の理人以上に理人。TBS系ドラマ班には、横浜くんにユリユリ&中川大志に理人をキャスティングした天才がいるね。あとぉおおお、松下由樹が最高ですよね。ああいう友人欲しい!なんて思ってしまうけれど、年齢的に自分がああいう風にならないといけない!と思わされます。波留は、優秀だなーと、毎回思う!そして綺麗。タミちゃんも良かったよね。『盗まれた顔 〜ミアタリ捜査班〜』は、私の願望というか欲望を叶えてくれたドラマでした。ありがとうございました。でも出来れば最後まで私の欲望をおぉおおおお!!玉木宏と町田啓太には、『新しい上司はど天然』を実写化してもらいたいものです。いいコンビだったし、玉木宏のど天然役ハマる筈!あとは、『いだてん』とか『腐女子、うっかりゲイに告る。』とか『これは経費で落ちません!』とかも良かったです。あ、最後の3作全部N○Kですね。『いだてん』は視聴率の話題しかなかったのが残念!最初から最後まで本当に楽しいドラマでした。いや、最初から見続けたからこそ、最後が良かったと言いますか... 見事な伏線回収!『俺の話は長い』も最高でした。ラストが凄く良くてまさか泣いた。安田顕がこれまた表情といいトーンといい、最高でした。ご飯の数だけドラマがある家族でしたね。逆に言えば、ご飯の数だけ作り続けられるドラマかもしれないので、また観たい!久々のホームドラマって感じでした。今年は、生田斗真が『いだてん』も含めて、凄く良かったですね。

そして毎年恒例、世界一遅い「ベスト・オブ・2018」を!

本日の写真は本文とは全く関係ないですが、今年とにかく名前をよく聞いたケルヴィン・ハリソン・ジュニア!今年大きく飛躍した俳優にあやかりたいですね。

今年も1年お付き合いいただきまして、ありがとうございました。皆さまの2020年の益々のご発展をお祈りいたします。2020年もよろしくお願いいたします。皆さま、良いお年を!

21 Bridges / 日本未公開 (2019) 1732本目

チャドウィック・ボーズマンらしいアクション映画『21 Bridges』

チャドウィック・ボーズマン。私にとって、もうボーズマン=ブラックパンサーであって、『Black Panther / ブラックパンサー (2018)』とは切っても切れない。この先、もし『ブラックパンサー』が他の役者でリメイクされることになって、その新しい役者がどんなにピッタリで素敵で男前(その頃は美人の時代かもしれないね)であったとしても、やっぱりボーズマンへの気持ちは変わらない。私にとって永遠にブラックパンサー、それがチャドウィック・ボーズマン。という訳で、ワカンダ市民(自称)の私としては、チャド陛下には覚悟を決めて忠誠心を誓っています。そんな訳で、陛下の新作を観てきました。陛下も出演している『アベンジャーズ』シリーズの監督担当アンソニーとジョーのルッソ兄弟が制作。陛下も主演だけでなく制作も担当。イドリス・エルバ主演の『Luther / 刑事ジョン・ルーサー (2010-2015)』などのTVドラマの演出担当ブライアン・カークの映画長編監督デビュー作。

警察官のお葬式。牧師がスピーチする中、小さな男の子が泣いている。故人の息子アンドレだった。その19年後、ニューヨークのワインバーに2人組の強盗が入った。マイケル(ステファン・ジェームズ)とレイ(テイラー・キッチュ)の2人は元軍人で、そこにコカインがあることを知っていたが、予想以上の量だった。そして、なぜかすぐにパトロール中の警官たちがやってきて、彼らは撃ち合いになる。その末、マイケルとレイは警察官殺しの罪で追われることになった。その捜査を担当することになったのがアンドレチャドウィック・ボーズマン)だった。優秀だった父の影で、自分の能力を証明しようと躍起になっている。アンドレのパートナーに選ばれたのが、麻薬捜査官のフランキー(シエナ・ミラー)。署長(J・K・シモンズ)と衝突しながらも、警察官殺しの2人組を追っていくアンドレだったが...

前に陛下が出演&制作したアクション映画『Message from the King / キングのメッセージ (2016)』が大好きなので、今回もアクション作品ということで楽しみにしてました!『キングのメッセージ』は、今どきにしては渋いアクション作品で、接近戦とか面白かったし、物語も面白く、何と言ってもラストがスッキリする最高の作品でした。今回も、やっぱり渋い。チャド陛下は渋いアクション映画が好きなんだなーと思いました。『キングの』では、ガンアクションというより、素手対決の接近戦が多かったように記憶しているんですが、今回はガンアクションが主。その分、走るシーンが多い。チャドウィック・ボーズマンとステファン・ジェームズがニューヨークの街を颯爽と走るシーンが良いですね。最近、あんまりニューヨークが舞台の映画って少ないので、久々にニューヨークの高層ビルとか密集している感じとかが、十分に楽しめた感じです。地下鉄に乗るのか乗らないのか?あのシーンは最高にワクワクします!あとセリフが良い。終盤でのチャド陛下と鬼教官(シモンズ)の会話は痺れた。そしてステファン・ジェームズが好演。この人の切ない顔はたまらない。相棒テイラー・キッチュとの関係性も良い。こういう作品では、彼ら2人の好演が鍵ですよね。あと悪役。でも、その悪役がすぐに分かっちゃったかな?と。

チャドウィック・ボーズマン作品らしく、エンディングが上手い。終わりよければすべて良し。エンディングがスッキリ、そしてカッコいい作品が好きな私にはたまらない最後でした。そして、やっぱり『Black Panther II / ブラックパンサー2 (2022)』待ち切れなさ過ぎる!

(3.75点:1732本目)

Hitsville: The Making of Motown / 日本未公開 (2019) (TV) 1731本目

大好きなモータウンの詰め合わせ『Hitsville: The Making of Motown

その人のことを知るための質問の中に「無人島に1枚だけアルバムを持っていくなら?」というのがある。1枚だけというのが超難問である。恐らく私は、R&Bと三代目J SOUL BROTHERS曲が200曲位入ったコンピレーションアルバムを持っていくと答えるであろう。そう、私は卑怯者。そんな質問を私に聞いてきた方が悪い!でも、10枚くらいに増やしてくれたら、多分正直に答える。スティーヴィー・ワンダーの「インナーヴィジョンズ」、マーヴィン・ゲイの「ホワッツ・ゴーイン・オン」というアルバムは絶対に入る。フォー・トップスの「リーチ・アウト・アイル・ビー・ゼア」とか、テンプテーションズの「パパ・ワズ・ア・ローリン・ストーン」などの曲も大好きである。そう私はれっきとしたモータウンっ子。ソウル好きになったのは、やっぱりモータウンがあったからだと思う。オーティス・レディングアル・グリーンジェームズ・ブラウンみたいな深いディープなソウルではないけれど、聞きやすく、でもちゃんとソウルを感じるのがモータウン。「インナーヴィジョンズ」とか「ホワッツ・ゴーイン・オン」みたいなアルバム全体の世界観って、すごく深慮されていて、黒人コミュニティに直結しているのを感じる。聞きやすいので、取っつき易くて、手に取れる。でもよーーーく聞いてみたら、「なんじゃこれぇえええ」と凄いのがモータウン。そんなモータウンの歴史を追うドキュメンタリー映画

ミシガン州デトロイトにあるモータウン本社「ヒッツヴィルUSA」で1960年代に行われた「クォリティ・コントロール」ミーティングの音声が聞こえてくる。モータウン創設者ベリー・ゴーディの若い声で「機会はある」と言っているのが聞こえる...

ベリー・ゴーディの幼少期から語られていて、どのようにして「モータウン」が設立していったのかなど、本人や関係者が語っていく。モータウンに関するドキュメンタリー映画は多く、所属バンドの追った『Standing in the Shadows of Motown / 永遠のモータウン (2002)』などもあるが、こちらはオーソドックスにモータウンを追っている。黒人新聞の売り子をしていたベリー・ゴーディ少年は、白人にも売ったら売れるかも?と思いついたのが天才。そこが原点ですね。でも、最初は白人地区に行った少年はベリー1人だったけれど... そのオチが最高でした。「モータウン」が出来て、スモーキー・ロビンソンが関わり...っていう序盤から、スモーキー・ロビンソンベリー・ゴーディが思い出を語り始め、もう最後までずっと2人で仲睦まじい姿を見せてくれました。一緒に歌い始めたり、思い出話が食い違うとどっちが正しいか100ドルで掛け始めたり、また一緒に歌ったり、スモーキーがピアノ弾いてベリーが歌ったり.... もうエンディングのクレジットロールまでずっとそんな調子です。もうそれ読んだだけで、ほのぼのしちゃうくらい楽し気な雰囲気でしょ?「モータウンは家族」と、ベリー・ゴーディが終始語っていたけれど、温かい雰囲気の家族です。それでも、やっぱり色々ある。悲しい別れや、辛い失敗など、そういうのも語っている。秘話としては、やっぱりスティーヴィーの「インナーヴィジョンズ」とマーヴィンの「ホワッツ・ゴーイン・オン」が面白い。そしてどちらもベリー・ゴーディが傷心なのが面白い。あと、マーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師の秘話には、鳥肌立った。しかし、これほどまでに名曲を生み出したモータウンの社歌がダサくて笑ってしまうが、ベリー・ゴーディ本人とスモーキー・ロビンソンが楽しそうなので、こちらも楽しくなってしまう。苦楽を共にしたからこその2人の今の笑顔に、私の心は熱くなった。

モータウンの歴史や背景や秘話や所属アーティストのことなどが、時代や背景に合わせたモータウンの曲とともに語られていく。やっぱりモータウンらしく甘酸っぱい印象だ。「何もないところから始まって、今では国際的な会社となった。モータウンこそ、アメリカン・ドリームを象徴する最高の見本」。私の好きなモータウンがまるでコンピレーションアルバムのように、ギュウギュウにこの作品にはつまっている。

(4.5点:1731本目)
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Luce / 日本未公開 (2019) 1730本目

大人好みな屈折した高校物語『Luce』

今年、一体何回ケルヴィン・ハリソン・ジュニアと書いただろうか?というくらい、今年は沢山の映画に出演していたケルヴィン・ハリソン・ジュニア。一番印象に残っているのが『Monsters and Men / 日本未公開 (2018)』の高校生役。主役3人のうちの1人。その前にも、『12 Years a Slave / それでも夜は明ける (2013)』や『The Birth of a Nation / バース・オブ・ネイション (2016)』にも出演していたらしいけれど印象は残っていない。『Mudbound / マッドバウンド 哀しき友情 (2017)』は、言われてみれば嗚呼!って感じで覚えている。とにかく、今年に入ってからやたらと名前を聞く若手俳優の1人だ。そして、今後も注目作への出演が続いている要注目俳優だ!そんなケルヴィン・ハリソン・ジュニアが主役のドラマ作品。オクタヴィア・スペンサーナオミ・ワッツティム・ロスという実力派ベテランたちが共演。監督は、『The Cloverfield Paradox / クローバーフィールド・パラドックス (2018)』のジュリアス・オナー。

高校生のリュース(ケルヴィン・ハリソン・ジュニア)は、学校のロッカーに何かを置いてから、講堂で学生や先生や親たちの前でスピーチをしていた。リュースのスピーチは大絶賛されたが、ウィルソン先生(オクタヴィア・スペンサー)だけは不満そうだった。帰り道で、そんなウィルソン先生の不満を両親(ナオミ・ワッツティム・ロス)にぶちまけるリュース。リュースは故郷エリトリアの戦争孤児で、今の両親の養子になったのだ。成績優秀、陸上選手としても有望なリュースに育ての親の2人は満足していた。そして、後日ウィルソン先生から呼び出されるリュース。2人の関係が、育ての母を翻弄していく...

これ観ていたら、オクタヴィア・スペンサー主演の『Ma』っていう作品を思い出して、背筋が凍った。今年に関しては、この作品と『Ma』のせいで、高校生が関わってはいけない人物ナンバーワンがオクタヴィア・スペンサー。高校生にとっての要注意人物。オクタヴィア・スペンサーって普通のオバサンぽく見えるけれど、こういうキモいというか危険人物演じるのが意外と上手いよね。とはいえ、この映画は『Ma』と違ってホラー映画ではありません。普通のドラマ作品です。とはいえ(2度目)、監督のジュリアス・オナーはホラー映画を沢山撮っているので、こんな感じでホラーぽくなったのかも。なんというかスリラー調というか、謎が多いまま物語が進んでいく。観客はナオミ・ワッツ演じる育ての母と共に、その謎を少しずつ解明していく。人は、肩書とかで簡単に人を信用してしまうことがあって、その恐ろしさみたいのが垣間見られる。かなり屈折したドラマ。

中々一筋縄ではいかない物語が、玄人好みの演技で語られていく。

(4点:1730本目)
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Burning Cane / 日本未公開 (2019) 1729本目

絶望の底に見えるもの。とんでもない19歳が現れた『Burning Cane』

あなたは17歳のころ、何をしていましたか?何を考えていましたか?私が17歳だったころ... 遥か遠い過去のこと過ぎで記憶が無いけれど、映画の脚本を書こう!とペンを握った記憶がない事だけは確か。いや、そう思ったとしても、実際には書く実力や、書けるという自信や、書いてやろうという勇気すら無かったというのが真実。ところが、この作品の脚本家であり監督のフィリップ・ユーマンズには、その勇気も自信も実力もあった。2000年というミレニアム生まれのユーマンズは、17歳の時にこの脚本を執筆し、そして今現在19歳でこの映画を発表している。とんでもない人である。いや、過去には全く同じとんでもない人がいた。『Straight Out of Brooklyn / ストレート・アウト・オブ・ブルックリン (1991)』のマティ・リッチだ。彼も、17歳でその脚本を書き、19歳の時に映画を発表している。そういう人達の作品は鮮明に記憶に残る。今回も恐らく...というか、確実に私の記憶に鮮明に残るであろう。ロバート・デ・ニーロのトライベッカ映画祭にて上映され、作品賞などを受賞。その際、本作を大変気に入った映画監督エヴァ・デュヴァネイが、自身の配給会社「Array」が配給権を獲得し、アメリカではNetflix配信されている。

ヘレン(カレン・カイア・リヴァース)は、愛犬ジョジョについて回想していた。ジョジョは、毛包虫症という皮膚病を患い、ヘレンはジョジョの為に色々と試してみたが、どれも結果は出なかったことを。一方、ヘレンの息子ダニエル(ドミニーク・マックレラン)は仕事がなく、お酒を浴びるように飲みながら、家で息子ジェレマイア(ブレリン・ケリー)と時間を潰していた。そして街の教会の牧師(ウェンデル・ピアース)もまた、広大な畑に囲まれた真っすぐの2車線を酒気帯び運転で蛇行を繰り返し運転していた。

と、起承転結が無さそうなプロットだ。ルイジアナ州ニューオリンズの郊外の人口少ない小さな街で暮らすこの3人を淡々と追っている。何というか、『Killer of Sheep / 日本未公開 (1977)』のようでもある。LAを舞台に淡々と男の生きる姿を描いた作品。物語がないようで、ちゃんとしっかりとしたその男の物語が描かれた作品は、私の生涯ナンバーワンの映画に今でも君臨している。3人の物語が描かれていないようで、しっかりと描かれている。そしてどことなく、私が知るアメリカの小さな田舎町を思い出した。夫の故郷がこんな感じなのだ。空虚な感じ。小さな町ゆえ、住民全員がお互いを知っているからこそ感じる、私みたいな異物が混ざった時の違和感。でも閉鎖的とも違う、上手く説明出来ないけれど、「無」な感じ。吸った者にしか分からない「無」な空気感。あの感じをすごくスクリーンから感じる。それをスクリーンで感じさせるのは、熟練されたプロでも中々出来ることではない。まるでウィリアム・フォークナーの小説のように、南部特有の土の匂いを感じる。そして多くの映画批評家が口をそろえて「まるでテレンス・マリックの映画のようだ」と言っている。19歳の監督を称賛する言葉としてこれ以上のものはない。でも私が最も驚かされたことは、それではない。聖書を引用しつつ、絶望を描いたことだ。あのエンディングはどうにでも取れる。でも、どう解釈しても、やはり絶望だけが残る。17歳にして、このような救いのないエンディングを書けたのは驚きである。このままではいけないのだ。

このままではいけないことを17歳という未来を担う人はちゃんと知っている。しかもそれを書ける人が現れた。それが希望。フィリップ・ユーマンズは、我々の希望なのだ。

(5点満点:1729本目)
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Black and Blue / 日本未公開 (2019) 1728本目

見た目で物事を判断してはいけない『Black and Blue』

Moonlight / ムーンライト (2016)』のジャンキーなママ、ダニエル・クレイグ主演『007』のマネーペニー... イギリス出身のナオミ・ハリスは、今やイギリスだけじゃなくて、アメリカでも大活躍中だ。その証拠に、この作品で主役の座を手にした。男性とのW主演ではなく、単独で黒人女優が主役の映画が、全米ワイドで劇場公開されるなんてごく稀なこと。今年だったら、『Harriet / 日本未公開 (2019)』くらいかな?『Us / アス (2019)』もルピタ・ニョンゴの単独主演でいいのかな?単館・配信とかなら、もうちょっとあるかも。まあ、それくらい珍しい。共演は、『Baby Boy / サウスセントラルLA (2001)』のタイリースと、『Luke Cage / Marvel ルーク・ケイジ (2016-2018)』のマイク・コルターなど。監督は、『Traffik / セックス・トラフィック 悪夢の週末 (2018)』のディオン・テイラー。

ニューオリンズ市警の新人警官として任務についた元陸軍人のアリシアナオミ・ハリス)。パートナーになったジェニングス(リード・スコット)とともに、早速街のパトロールに出かけた。マイロ(タイリース)が働くコンビニ店の店先で一般人とイザコザになったが、何とか回避。911により、ジェニングスと現場に向かったが、新人なのでパトカーに置いていかれた。中々戻らないジェニングスの様子を見に廃墟に向かった。そこでアリシアは、見てはいけないものを見てしまう。そしてその一部始終をアリシアのボディカメラが収めていた。警察の防弾チョッキが身を守ってくれたが、アリシアは執拗に追われ、駆け込んだマイロのお店でかくまってもらうが...

正直... 正直に書きます。ディオン・テイラー監督だし、予告編見た時には、「ああ...」と思っていました。つまり、スルーでいいかなーと。でも、スルーしないで良かった!割と面白い。思っていた以上に面白い。何ていうか、『Training Day / トレーニング デイ (2001)』ぽいなーと。あそこまで渋くはなく、もうちょっと軽めだけど、状況が似ている。『トレーニング デイ』でイーサン・ホークが演じた役が、今回ナオミ・ハリスが演じた役と同じなんだけど。私が一番気に入ったところは、ナオミ・ハリスのクールさ。こういう女性が主役のアクション映画って、やたらと女性を英雄にしてカッコ良く見せようとするけれど、この映画でのナオミ・ハリスは自然なカッコ良さなんだよね。いや、この映画の英雄には変わりないんだけど、無理していない感じが、凄く気に入った。マッチョイズムとは違う、カッコ良さがナオミ・ハリスにはあったね。眼差しの強さとか、姿勢の良さとか。巻き込まれたタイリースの役も良かった。最後は、アメリカ映画ぽくなくて、キュンとした!あれくらいが逆に良いんだよね。マイク・コルターのリック・ロス(ラッパーの方)ぽさが、これまた良い演出。

タイトルの『Black and Blue』。黒人であり、警官である。警官によって殺されてしまう黒人が多い今、黒人であり警官である主人公はどうするのか?確かに、この映画ではそこに深く踏み込み描いている訳ではないけれど、良いエンディングだったと思う。主人公だけでは変えられないっていうのが描かれている。

すっごい名作!って訳ではないけれど、意外とこういう作品こそ心から楽しんでしまうもの。こういう作品でのカッコいいナオミ・ハリスをまた観たい!そう思わせてくれた。

(3.75点:1728本目)
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