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Joy / ジョイ: 闇と光の間で (2018) 1699本目

人生は自分のものと知らない女性たち『ジョイ: 闇と光の間で』

生まれた時からついてない人生。自分ではそう思っていたけれど、それでもたまに私は恵まれていただけじゃないか?と思ったりも思ったりする。この映画を観た後は、私は平凡で普通な良い人生に恵まれた、と思った。今回の作品の舞台はオーストリアだが、主人公はナイジェリア人女性。ナイジェリア人女性がオーストリアの夜の街で売春婦として生活している話だ。監督は、2014年ベルリン国際映画祭にて『マコンド』が上映されたスダベ・モルテザイ。イラン人の両親の元ドイツ生まれでアメリカのUCLAで映画を学んだ女性。Netflixにて配信。

儀式を受けている女性ジョイ(Anwulika Alphonsus)が居た。Jujuという儀式らしい。そしてジョイは夜になると派手な金髪ストレートのウィッグを付けて、町中に立つ。妹分プレシャス(Mariam Sanusi)は、あどけなさが残っており、まだ素のまま。立つことも忘れ、座り込むばかりで客は全くつなかい。そんな様子を見つつジョイは客を手際よく取っていく。夜明けを迎え、ジョイとプレシャスは家路につく。マダム(Angela Ekeleme)と呼ばれるボスの元締めに売り上げ金を確認させられる。プレシャスの売り上げを確認し、マダムは手下の男たちに指示を出して乱暴させた。ジョイは、プレシャスの面倒をみてちゃんと稼がせるからとマダムに止めるよう懇願する。そして一方でジョイは、彼女たちのような移民売春婦の保護を目的とする団体に話しをマダムに内緒で聞いてもらっていたが...

お金、国籍、性... それらが搾取されてしまう人たちが、この映画の主人公。この映画はそんな人たちを淡々と追っている。しかもテンポも悪い。冒頭の儀式のシーンもやたらと長い。何気ない会話やシーンも長い。場面が間延びすればするほど、主人公ジョイの感覚が麻痺しているのを観客も感じてしまう。こんな人生を送っているジョイにとって、恐らく死ぬほど長く感じる筈だと。しかもこの映画は容赦ない。希望なんて見えない。抑圧された女性が抑圧されたまま、いやきっと抑圧されていることも知らずに結末を迎えたようだ。幾ら生活のためといえ、娘・姉・妹という家族に売春をやらせるなんて、とんでもない馬鹿野郎なのに、そんな事を主人公は気づけない。ハリウッド映画ならば、ジョイはヒーローとしてプレシャスを救い、そしてジョイ自身もそれによって自分を解放するだろう。でもそうではない。そして人にとって国籍とは何なのか?恵まれた国の人にとっては夢のようなパスポートを手にいれたようなものだが、そうじゃない国の人々にとっては足枷のようなものになってしまう。私たちにとってパスポートとは、海外で観光やビジネス旅行のためのもの。でもそうじゃない人たちも沢山いる。そういうことも気づかせてくれる。

家族の為にとジョイは我慢してきた。でもそれは全然家族の為ではなかった。自分の為に人生を生きていくことを知らない女性たちがこの映画にはいて、とても苦しく辛い。

(4点:1699本目)
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