しごきとイジメと暴力と縦社会『ヘルウィーク』
日本とアメリカの大学の大きな差はフラタニティ&ソロリティとサークルだと思う。グループを作って、飲み会したり、ゆくゆくはOBからの就職のヘルプなど、大まかに似ている点はあるけれど、フラタニティの方がはるかに厳しい感じを受ける。フラタニティは規律に厳しくてもっと軍隊的だなーと。特に正式加入前は、軍のブートキャンプ以上!まあ私なんて中学・高校共に部活に属す事もなく...というか、中学の時は強制だったので、とある女子しかいない文科系の部にしかたなく所属。先輩たちは優しくて居心地は良かったけれど、練習で夏休みに朝早く起きるのなんて信じられない!昼にタモさん見たいしーと、速攻幽霊部員に!レンタルビデオに夢中に!高校はバイト人生。その後は、入学式に近くの大学がわんさかサークル勧誘に来ていましたが、私の時代はテニスとかスキーとかのサークルばかりだったので、勿論入る事もなく...バイト仲間と割りと学生時代を謳歌。そんなグループに属すことが出来なかった私が見た『ヘルウィーク』。
邦題『ヘルウィーク』は、フラタニティに正式加入する前の週=ウィークの事。その週は、上級生たちのとんでもない要求を24時間ひたすら従うのみの地獄=ヘルの時。原題の『Burning Sands』は、燃え上がる砂を通り越す(cross the burning sands)=フラタニティの会員になることを固く誓うというフラタニティ用語。どちらもフラタニティ会員になる前の事を意味している。フラタニティに関しては、以前から描かれていて、一番有名なのがスパイク・リーの『School Daze / スクール・デイズ (1988)』。会員になろうとしていたスパイク・リー扮するハーフ・パイントがトイレでバナナを手で...というシーンが印象的でしたよね。フラタニティというよりなぜかダンス映画として描かれた『Stomp the Yard / ストンプ・ザ・ヤード (2007)』もありました。『ストンプ・ザ・ヤード』はフラタニティのステップが描かれていて、これ以降ステップ映画がやたらと増えた。ブラックムービーでのフラタニティ映画って、スパイク・リーの『スクール・デイズ』以外は割りと好意的に描かれている。『スクール・デイズ』もフラタニティの対立を批判している訳で、フラタニティ自体を批判している訳ではないんだよね。そんな中でこの『ヘルウィーク』は変わり種で面白い。
主人公たちにとって、フラタニティの重要性は非常に理解出来た。とても上手い描写でなるほどと思った。それ故に見えなくなっていく出口。『スクール・デイズ』の時と比べると遥かに辛い描写が増えている。過激さを増している。それが余計に規律を守ってもらう為の軍のブートキャンプ的なしごきなのか、たんなる暴力なのか... 加害者たちがマヒしてる様が分かる。特に上級生の太ったビック・シー役とエドウィン役のロティミ(ネトフリ俳優)!いびり役が上手すぎで許さん!となる。その責任者的なリーダーが『ムーンライト』の大人シャイロンを演じたトレヴァンテ・ローズ。彼は割と良心的ではあるのだけど、事はそれ以上に大きくなってしまっている。
でも主人公はフラタニティの規律を反復させられていくうちに、逆に自分で気づいていくんですよね。もうその部分とそこまで辿りつく部分が、この映画上手すぎで大好きです!観ても、そこに辿り着ける人が何人いるか分からないけれど、たどり着いた人はうぉーーーー!!!上手いー!!!とテンション上がりますよ。主人公役のトレヴァー・ジャクソンが相当カッコイイんですが、たんなるヘタレキャラで終わらなかったスクェアも好きだし、フランクも素敵。そして意外とトヤちゃん好きかも。
やっぱりグループとか面倒臭い...とかいうレベルの話じゃないけど、私にはサークルとかフラタニティとかソロリティ絶対に無理!でも自分には経験出来ないフラタニティ映画は面白い。
Burning Sands / ヘルウィーク (2017)(4.75点:1534本目)