ニグロ・アンサンブル劇団...と言えば、泣く子も黙ると言いますか...分かる人には凄く分かる凄い劇団なのである。1967年の夏に俳優のRobert Hooks (ロバート・フックス)と劇作家のダグラス・ターナー・ワード(Douglas Turner Ward)、そして劇場支配人のジェラルド・クローン(Gerald Krone)によって設立された劇団。もちろんそれ以前から黒人が劇団で活躍する事はあっても思いどうりになる事は皆無だった。ロバート・フックスとダグラス・ターナー・ワードが舞台で一緒になった時に、「いつかは黒人によって黒人の為の劇団が作りたい」という夢を一緒に持つようになって、ロバート・フックスが舞台に立ち資金を集め、ダグラス・ターナー・ワードが作品を書いていくようになった。そこで白人の劇場支配人のジェラルド・クローンの助けを借りて、この「ニグロ・アンサンブル劇団」が出来た。ここからはルイ・ゴセット・ジュニア、ローレンス・フィッシュバーン、サミュエル・L・ジャクソン、アンジェラ・バセット、そしてデンゼル・ワシントンという錚々たるメンバーを輩出している。俳優だけでなくて、チャールズ・フューラーやローン・エルダーという劇作家が育ち、彼等はオスカーの脚本部門でノミネートされている。と、まあ凄い劇団なのです。
前置きが長くなりましたが、そのニグロ・アンサンブル劇団が制作の舞台。PBSが放送。PBSは「Great Performances」というタイトルで、1972年から人気の舞台やライブをTV放映しているのです。しかもこの作品の監督はIvan Dixon (アイヴァン・ディクソン)!いい俳優でもあるけれど、いい監督でもあるのです。しかも主役がMary Alice (メアリー・アリス)。しかも4人しか出てこない密室劇。凄いですよー。メアリー・アリスの演技が凄すぎる。途中、神との会話で恍惚してしまうシーンがあって、それはかなりの見もの。あの長台詞をロングショットでカメラ一台で撮り続けたのは、メアリー・アリスの女優根性と俳優でもあるアイヴァン・ディクソンとのガチンコ勝負なのですよ。それに見事にこたえてしまうのが、メアリー・アリスのカッコよさなのですよ。
物語は南部からシカゴにやってきた母と娘のアパートで起こる。何と言うか、母は娘をかなり厳しく躾けた。娘はいい年頃なのに、一人で留守番する時になると母は「いい子に留守番していたら、アイスクリーム買ってきてあげるからね」なんて言われてしまう始末。娘はそんな状況に薬を飲む程に病んでいる。そして一人留守中に来るのが、盲目のブラインド・ジョーダンという男。彼もまた南部からギター1つもって、グレースという女性を探しているのです。人は入れちゃいけないよと母に言われているのに、娘はジョーダンをアパートに入れてしまうのです...
この時代の黒人舞台ドラマは面白かった...「A Raisin in the Sun / レーズン・イン・ザ・サン (1961)」がそれらの始まり。実は続けて別の舞台の映像も見ているのですが、それも面白いのです。ニグロ・アンサンブル劇団、最高!
(5点満点:DVDにて鑑賞)