先日終了したサンダンス映画祭。回を追う毎に大きくなっていく映画祭。大規模になってきた理由には、インディペンデンス映画に重点を置き、ハリウッドのシステム外で映画製作をする映画人育成支援という、創設者ロバート・レッドフォードの心意気が映画人を惹きつけ、コーエン兄弟やマーク・レヴィン、ロバート・ロドリゲス等の今を代表する映像作家達が表現出来る場を提供している事が大きいと思う。そしてそれらの事が映画ファンをも惹きつける。そのサンダンス映画祭に今回ショート映画を出展したのが、タヒアー・ジェッター。16歳で映画監督になろうと決めて、大学はメリーランドの大学で国語を専攻。その後にスパイク・リーも通ったニューヨーク大の映画プログラムに入る。その時の友人の助けを借りて出来たのが、このショート映画。今回ショート映画にエントリーした作品は6467作品。その中から24作品が選ばれて、大賞を目指して戦った。結果を言ってしまうと、残念ながらこの作品はショート部門の大賞は逃した。しかし、私はこの作品が猛烈に好きです。
ブルックリンのアパートで3対3で合コンパーティ。その中で気の合った男と女が一夜を共にした。一夜の恋の後にありがちな冷たい態度を男は見せない。男はせっかくだから、この後食事でもと誘うが、女はそそくさと帰り支度をして、言葉すら交わそうとしない。何も言わないで出て行こうとする所で、男はキレてしまう。
恋愛した人には分かりますよね、この気持ち。私は女だから、特に女の気持ちが良く分かる。私は一夜の恋はしないと決めていたので経験はないが、一夜の恋と決めたなら、男に優しさなんて求めないんですよ。女は情があるから。体と心を切り離す事って、多くの女には難しい。それに私が一夜の恋なんてという自責の念にも駆られている。どうせ先が無いなら、その場ですべてを終わりにしたい。その時が楽しかったなら、それでいい。食事までして、その男を知った所で何があるんでしょうか?と、女脳。しかし男は男で、せっかく優しくしているのになぜ?と思うだろうし、もしかしたら先があるかもしれないじゃないか?と思うんでしょうねー。「話を聞かない男、地図の読めない女」ならぬ、「表情を読めない男、空気を読めない女」でしょうかね?そんな微妙な男と女の関係を、8分間で見事に描いてくれたな...と。これが長編映画となったのが「Medicine for Melancholy / 日本未公開 (2008)」。「Medicine for Melancholy」も面白かったし個性があったけれど、私はこちらのショートの方が好み。書いたように微妙な男と女の状態をスマートに描いていたからこそ、私に何か思い出させる&思わせるような作品になっていた。それにテーマが拡散していなくて集中していたのもいい。こちらの方がより現実的。
タイトルも良いよね。「Close」は近づくという意味もあるけど、閉ざすという意味もある。たった一夜の恋だからこそ、その両極端のものが同居する。
それにしてもこの監督のこれからが楽しみです。スパイク・リーとアーネスト・ディッカーソンの時みたいに、彼が友人を引き連れてニューヨーク大の映画プログラムから新しい波が生まれればまた面白くなりそう。
サンダンスは終わってしまいましたが、期間限定でユーチューブでこの映画は観る事が出来ます。もうちょっとで終了するかもしれないけど、まだもうちょっと鑑賞可能です。
(5点満点:ユーチューブにて鑑賞)