When We Were Kings / モハメド・アリ かけがえのない日々 (1996) 718本目
今なぜこのタイミングでこの映画を見たのか?もちろん「Soul Power / ソウル・パワー (2008)」の日本公開を祝って観てみました。「ソウル・パワー」はこのドキュメンタリーを撮っている時の映像を使った作品。弟分的な作品。「ソウル・パワー」は十分に面白いドキュメンタリーだったけれど、やっぱりあのドキュメンタリーでもモハメド・アリが主役だなと思ってしまいました。その理由はこちらのドキュメンタリーにたっぷりありましたね。モハメド・アリは自然な策士。ボーナス映像でこのドキュメンタリーの監督レオン・ガストが言っていたけれど、モハメド・アリは撮影にも割りと積極的だったとの事。ランニングに出かける時にも時間をちゃんと教えてくれたらしい。逆にジョージ・フォアマンの方は積極的ではなかったとの事。当時の予想もほぼジョージ・フォアマンが優勢だった。けれどこのドキュメンタリーを観ているとやっぱりモハメド・アリが優勢に見える。それはアフリカの現地の人々を味方につけたのが大きいとも思う。あのアントニオ猪木の出場曲ともなった「アリ・ボンバイエ」が印象的。「アフリカは俺の故郷なんだ」と言うアリ。ああいう風にはフォアマンは言えない。あの語り口が人々を惹きつける。やっぱりあのザイール74も含めた全てが「ザ・モハメド・アリ・ショー」だったんだと思います。
この映画の後日談がいいですよね。アカデミー賞のドキュメンタリー部門を授賞した時にステージでのフォアマンとアリの関係。フォアマンがアリを気遣う姿。美しすぎるでしょう。あの極限の状態で戦った男達だからこそ見せる美しさ。そういう美しい後日談だってあの一戦を時代の現象とさせているのです。
ジョージ・フォアマンはもはや「ジョージ・フォアマン・グリル」を愛想よく売る人と思っている若い子が多いと思う。あのグリルはアメリカの家庭に1台必ずあるであろう、もしくはあった事でしょう。うちも小さいのがある。前のお隣さんは野外BBQ用のいい感じのを持っていた。あのフォアマンのCMの愛想の良さで思わず買ってしまう物なのです。でもあの愛想の良さに辿り着くまでにかなり色々と思った事もあると思う。戦った後にアリについて「どうして俺がアリを憧れていたのか気付かせてくれた」なんて素直に言う、フォアマンも超カッコイイんですよ。英語の原題が示す通り、キングは一人じゃなかったという事。
やっぱり幾らウィル・スミスが頑張ってもモハメド・アリはモハメド・アリ。彼のキャラクターに敵う者は居ませんよ。
(5点満点:DVDにて鑑賞)