The Greatest / アリ/ザ・グレーテスト (1977) 1268本目
ファーガソンの事件を受けて、やっぱり戦うといえばこの人かな!と見たくなって再見したのがこの作品。モハメド・アリの自伝映画でありながら、モハメド・アリ自身がモハメド・アリ役!という豪華な作品。というか、モハメド・アリ位までは、そういう映画多いんだよね。ジャッキー・ロビンソンが本人役で出演している自伝映画『The Jackie Robinson Story / ジャッキー・ロビンソン物語 (1950)』とか、ジョー・ルイスが出演の半自伝映画『Spirit of Youth / 日本未公開 (1938)』など。ジャッキー・ロビンソンにジョー・ルイスにモハメド・アリという超スーパースターは、名前だけで人を集められた人たちでしたからね。その中でも一番キャラクターの濃いモハメド・アリが本人役!と素晴らしい状況で出来た作品。
1960年イタリアはローマで開催されたオリンピック。カシアス・クレイは見事ボクシングで金メダルを獲得してアメリカに帰ってきた。空港では盛大な歓迎を受けた。その後はいい生活が待っていた筈だが、白人からの差別は相変わらずだった。歯に衣着せぬクレイは、言葉で白人を負かせる事はあっても、金メダルを取った後でも何も変わっていなかったのだ。悔しくなって金メダルを川に捨ててしまう。それから数年後、ボクサーとして頭角を現していたクレイ(モハメド・アリ)は、真っ赤なスポーツカーに乗っていた。ひょんな事から、「ネイション・オブ・イスラム」のモスクでマルコムX(ジェームス・アール・ジョーンズ)のスピーチを聞いて感銘を受け、モスリムに傾倒する。クレイは世界チャンピオンを掛けた試合を目前としていたが、ネイション・オブ・イスラムの教えに怯えていた人々から迫害を受ける。なんとか試合にこじつけたクレイ。ソニー・リストン(ロジャー・E・モーズリー)との対戦に勝ち、ヘビー級タイトルを獲得するクレイ。それと同時に名前をモハメド・アリと変更。アリの信条により、当時勃発していたベトナム戦争への徴兵を拒否。どんどんと、アリは窮地に立たされるのであった...
いや、ウィル・スミスも『Ali / アリ (2001)』で頑張ったよ。でもやっぱりモハメド・アリを超えられるのはモハメド・アリのみ!モハメド・アリの場合だけは、モハメド・アリの人生をドラマ化するよりも、そのまま映し出したドキュメンタリー映画の方が面白い訳で... それはモハメド・アリの数々のドキュメンタリー映画、例えば『The Fighters / 日本未公開 (1971)』や『When We Were Kings / モハメド・アリ かけがえのない日々 (1996)』といった作品がそれを証明してくれている。だったら、モハメド・アリ本人に演じさせればいい訳で...という事で、この映画はそれだけで面白いのだ!ソニー・リストンを追い詰めていく所、そして女性を言葉巧みに魅了していく所...アリの最大の魅力が詰まっている。しかも試合シーンは実際の試合映像を使っているという豪華さ。そこにスローモーションとか別ショットなどの技術はないが、間のアリとトレーナー達の会話は本物なのか、何なのか錯覚を起こすリアリティさ。しかも脇が豪華!アーネスト・ボーグナインがアリのトレーナー役とか、ジェームス・アール・ジョーンズ(akaダース・ベイダー声)がなんとマルコムXとか!!『アリ』ではジェイミー・フォックスが見事に演じていたドリュー・”バンディーニ”・ブラウンも本人が出演!あの名言「蝶のように舞い蜂のように刺す」を披露。
ただちょっと映画としてまとめ方がイマイチかな?とは感じますね。若干テンポが悪い。そして曲ね。ジョージ・ベンソンの甘い「グレイテスト・ラヴ・オブ・オール」。ホイットニー・ヒューストンのカバーで有名だけど、これがオープニングから流れる。いや愛に満ち溢れていたアリにはピッタリな最高な曲なんですけど、アリ映画には合ってないような。その分、日本ではアントニオ猪木の曲として有名な「アリ、ボンバイエ」が何度も掛かります。やっぱりこっちの方がテンション上がりますね。気合入ってますかー!
この映画の中でモハメド・アリが「もし俺が黒人の同胞達に背を向けたら、彼らはそれをずっと覚えているんだ」って言葉が最高に心に染みた。今回、この時期に見直して本当に良かった。モハメド・アリという最高・最強のスーパースターは、己のリング上だけの戦いではなく、黒人の人たちの権利のためにも戦った勇者。彼は絶対に信条を曲げなかった。屈しなかった。だからこそ人々はモハメド・アリに惚れてしまうんでしょうね。素晴らしく愛おしい、それがアリ。
(4.5点/5点満点中:Unknown:TVにて鑑賞、8/18/14:DVDにて鑑賞)