凄いおどろおどろしいタイトル。「悪魔を地獄に帰すよう祈る」ですよ。クリスチャンやモスリムの口からそんな言葉が発せられるなんて... タイトルではどんな映画か分からないですよね?きっと新しいホラー映画かと思う。私もそう思った。しかしこの映画はリベリア共和国についてのドキュメンタリー。リベリアは西アフリカに位置し、元々はアメリカに渡った...いや、連れて行かれた元奴隷達が1847年にアフリカに戻り国を作った。「自由」という名のリベリアを作った訳です。このドキュメンタリーもその説明から入ります。しかし近年は、国の名前の由来である「自由」とは反対方向に進み、チャールズ・テイラーという独裁者のせいもあって、内戦続き。LURDというグループが反政府軍となって、あちらこちらで戦争が行われている。そんな中、犠牲になるのが女性と子供。女性はレイプされ、子供は親から引き離されて無理矢理兵士にさせられてしまう。女性にとっては、政府軍も反政府軍も同じ。どっちもどっち。もういい加減に戦争は辞めてくれ!と立ち上がるのです。
女性達は「戦争終結」に向けて、クリスチャンもモスリムも壁を破ってお互いが協力して活動していきます。しかし状況はどんどん悪くなり、戦争もエスカレート。女性達の活動に政府軍も反政府軍も無視。そんな中、突然チャールズ・テイラー大統領が彼女達に会う事を約束。女性活動のリーダー的存在のレイマ・ゴーウィが代表でチャールズ・テイラーの前でスピーチ。もう戦争を辞めてくれと訴える。その動きに、反政府軍もガーナでの話し合いに応じる事になった。しかし話し合いは生ぬるいもので、レイマはその当時を「まるでバケーションにでも来ているかのよう」と話している。そこで6週間、座り込みなどで平和的に抗議運動をしていた彼女達だったが、「もうたくさん!」と、彼等が話し合いをしていた部屋のドアの前で座り込みをして中を封鎖する。レイマは「ちゃんと話し合いをしろ!」と訴えた。そこから劇的に変化して、チャールズ・テイラーは亡命をする事になった。今はシエラレオネに戦争を起こした罪で捕まっている。しかし、そこで彼女達の戦いを終わらせなかった。国連の介入がちゃんと行われるか目を光らせ、そして今度は「投票こそ大事」と投票運動を開始。その甲斐あってか、2005年にはエレン・ジョンソン・サーリーフというアフリカにとって初めてとなる女性大統領が誕生。レイマはケネディの娘であるキャロライン・ケネディから賞を贈られたり、アメリカで演説などをしているみたいです。
この映画で感動したのは、ガンジーとかキング牧師が伝えた倫理が勝利する点。やっぱり銃なんかよりもよっぽど強いのが平和的な倫理。しかし実践する方は銃によって脆くも崩れてしまう肉体で、その銃に立ち向かわないといけない。相当な精神的な強さが要求される。しかし今回は女性達がそれに勝利した点が嬉しかった。
一つだけコントのように笑ってしまって椅子から転げ落ちたシーンがある。若い兵士がテレタビーズのバックパックを背負っていた。ティーンエイジャーの大きな体に子供用の...しかもテレタビーズかーい!と突っ込んでしまいました。緊迫していたから余計に...
ビックリするのが、こんなガチガチな政治映画をあのディズニーの子孫の一人であるアビゲイル・ディズニーが製作したという点。ディズニーの中でもガッツのある人がいるんですね。
(4.75点/5点満点中:DVDにて鑑賞)