シドニー・ポワチエが主演・監督の作品です。監督として2作目。監督デビュー作となる前作の「Buck and the Preacher / ブラック・ライダー (1972)」はウエスタンコメディで、その後の作品もコメディが多いので、この作品は異色かもしれない。この当時に人気が爆発した「ある愛の詩」のようなストーリーなので、純粋なラブストーリーです。でもその「ある愛の詩」に比べると随分と大人な物語で現実的です。でもポワチエは、オープニングから救急車のサイレンが鳴り、そして相手役となるヒロインはかなり謎めいていたりと、なぜかサスペンス調な作りなのが面白いですね。しかもアジア系の男に追いかけられたりと、当時のブラックスプロイテーションのアクション系をも思わせてます。でも、内容は純粋なラブストーリー。これが悲しい。大人過ぎなんですよ。私も10年前にこの映画を見ていたら「えぇーー、なんでーーー」となっていたと思うのですが、今となっては「うーん、分かるかも」と思いました。分かりたくないけれど、分かってしまう。若かったらね、行っちゃいなよって思う。それこそ「ある愛の詩」のように若かったら苦境故に燃え上がってロマンチックな映画だったと思う。私自身、10年前だったらかなりの人生の大博打に出ていたと思う。実際にそうだし。でも、今だったら守りに入って無理かなー。でも若いうちに大博打をした私にとってみたら、やってみないと分からない事が沢山ですからね。若くないから出来ないというのもある。そういう大人過ぎる部分も悲しいストーリーでした。大人になると色んな物が見えてくる分、失う物も多いなーと思いました。とにかく悲しい。
「ある愛の詩」は「Love is Blind(恋は盲目)」という台詞が流行、今でも普通に使ったりします。この映画では「This is December for me(私にとっては今は12月)」という台詞があります。12月は1年の終わり。彼女にとっては1年ではなくて、人生という意味。もう残り少ないという事。
この映画では、Sickle Cell(鎌状赤血球症)という病気が出てきます。これはなぜか黒人に多く見られる病気。有名な所では、マイルス・デイビスとかTLCのT-BozとかMobb Deepの一人とかネリーの妹だか姉もそうだったと思う。きっとポワチエはこの映画でこの病気の事も伝えたかったんじゃないかな?とも思いました。後、とってもアフロセントリックな映画でした。アフリカの歌手であり「Sarafina! / サラフィナ! (1992)」等にも出ていたミリアム・マケバが劇中で一曲歌っております。そしてヒロインはアフリカから来ている高官の家族。ロシア語も操る才女だったりします。ポワチエも病院を経営する成功した医師だったりします。この時期に専門職で成功しているアメリカの黒人という設定は珍しいのでは?言葉には出さないけれど、伝えたい事が沢山あったんでしょうね。沢山詰まってます。
ロンドンが舞台というのも良いですね。ヒロインの女性も魅力的だったし、ポワチエの娘役の子もチャーミング。
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(4.25点/5点満点中:DVDにて鑑賞)