SOUL * BLACK MOVIE * ブラックムービー

ブラックムービー、ブラックスプロイテーションなどについて


*10/15/2018に「ブラックムービー ガイド」本が発売になりました!よろしくお願いします。(10/15/18)

*ブルース&ソウル・レコーズ No.173 ティナ・ターナー特集にて、映画『TINA ティナ』について寄稿。 (08/25/23)
*『コカイン・ベア』のプレスシートにコラムを寄稿。 (08/22/23)
*『インスペクション ここで生きる』へのコメントを寄稿。(8/01/23)
*ミュージック・マガジン1月号にて、『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』のレビューを寄稿。(12/2/22)
*12月2日放送bayfm「MUSIC GARAGE:ROOM101」にて『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』についてトーク。(12/2/22)
*10月7日より上映『バビロン』にコメントを寄稿。(10/6/22)
*奈緒さん&風間俊介さん出演の舞台『恭しき娼婦』のパンフレットに寄稿。(6/4/22)
*TOCANA配給『KKKをぶっ飛ばせ!』のパンフレットに寄稿。(4/22/22)
*スターチャンネルEX『スモール・アックス』オフィシャルサイトに解説を寄稿。(3/29/22)
*映画秘宝 5月号にて、連載(終)&最後のサイテー映画2022を寄稿。(3/21/22)
*「This is Charles Burnett チャールズ・バーネット セレクション vol.1」にコメントを寄稿。(3/19/22)
*キネマ旬報 3月上旬号の『ドリームプラン』特集にて、ウィル・スミスについてのコラムを寄稿。(2/19/22)
*映画秘宝 4月号にて、連載&オールタイムベストテン映画を寄稿。(2/21/22)
*映画秘宝 3月号にて、ベスト10に参加。(1/21/22)
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The Inspection / インスペクション ここで生きる (2022) 1855本目

Oorah!


本作へコメントで参加しております。他作品タイトル出して大丈夫か不安だったのですが、大丈夫とのことで良かった。出した方が絶対にこの映画の雰囲気やらメッセージが伝わると思ったので。ということで、8月4日(金)から日本公開を控えております。是非是非。絶対に一緒に「ウーラー!」言いたくなります!! 上映館やスケジュールなどの詳細は、オフィシャルサイトのこちらか☟にて。

2005年ニュージャージー州トレントン。ホームレスのシェルターで寝泊まりしていた若者は、花束を持って久々に実家を訪れる。ノックしても中々出てこない。やっと母(ガブリエル・ユニオン)出て来たと思ったら、息子だと分かっているのに玄関のチェーンすら外さない。何とか家にいれてもらった息子のエリス(ジェレミー・ポープ)は、米軍海兵隊に入るので出生証明書が欲しいと言うのだが...

私の家族がアメリカ軍人だったので、執筆する上で色々と探りを入れた。ちなみに海兵隊ではない。まずは映画の情報などを一切口にせず、「米軍の中で一番厳しいブートキャンプはどこ?」と聞いたら、「海兵隊」と即答された。なんでも期間も他より長いらしい。で、経緯と映画について話す。主人公が同性愛者であること、そして2000年代ということ、海兵隊のブートキャンプが舞台であること... 開口一番「DADT(詳細は後述)の時代に海兵隊でブートキャンプとはかなり厳しいだろうね」だった。正直、元米軍の人たちは自分たちがいた軍種が一番だと思っているので、この発言にとても驚いた。他の軍にいた者が認める位、海兵隊のブートキャンプはとても厳しいのだ。

に加えて、私が最近読んだ本『Half American: The Epic Story of African Americans Fighting World War II at Home and Abroad (English Edition)』によれば、海兵隊での人種融合は指揮していた人の個人的な思想のために遅れ、結構長引いた。それによって、人種差別が長いこと横行していた。そして「DADT」とは、「Don't Ask, Don't Tell」。つまり、同性愛者であることを質問しない、そして言わないということ。元々、同性愛者だとバレると解雇してしまうのが米軍だった。なので、問わないし、オープンにしなければオッケーというのが「DADT」。もちろんそんなルールは、バレてしまえば歪みがある訳で、2011年頃に改正されている。本作の劇中でも「DADT」な筈なのに、ブートキャンプについた瞬間に... とてもリアルである。

長くなってしまったが、主人公はただでさえ厳しい海兵隊のブートキャンプで、人種的、そして同性愛者であるということは、とても厳しい環境だったことが分かるだろう。

そして、本作で厳格な母を演じているのがガブリエル・ユニオン。いつもとはかなり趣が違う役柄。とても大事なことは、彼女は元NBA選手ドウェイン・ウェイドと再婚して、彼女にとって継子となるザヤがトランスジェンダーであること。まだティーンだったザヤの勇気ある告白により、ザヤはユニオンとウェイドに受け入れられ、そして2人は惜しみない支援活動を積極的にしている。なので、本当の彼女は本作で演じた母とは真逆なのである。だからこそ、今回の役には熱がこもったことだろう。

その中で繰り広げられる物語に、とても心が動かされる。しかも監督の半自伝的な物語。とてもパーソナルなことである。特に敬虔なクリスチャンである母との仲がとても感傷的。冒頭では、母は家の中でCL・フランクリン(アレサ・フランクリン父)の説教を聞いているくらい。南部にいると20代位の若者だって車の中で説教を聞いているくらいだ。彼女の場合は宗教的に息子のセクシュアリティを受けいることができなかったようだ。そして、上官役がボキーム・ウッドバイン。彼の存在こそが、「黒人だから」とか主人公に言わせない環境を生み、主人公が必死になったのもリアルだ。人種同士がという馴れ合いもない。いじめっ子グループにも黒人が存在している辺りもリアル。厳しい環境だけでなく、そこには優しさや笑いあったりするのも真実だ。ラストの食堂のシーンで、最初に主人公に声をかけ寄ったのは誰か? そして最初に雄叫びをあげたのは誰か? そこで主人公が必死で探し求めた居場所を自分の力で手に入れたことが良く分かる。

軍のこと、母のこと、同性愛者ということ、ここで描かれたもの全てが今まででもっともリアルに描かれている。それだけにすぐそこで起きている感覚になり、心を抉られる。リアルさの中に『ムーンライト』のような儚さも感じる。そしてラストは立派な軍人が誕生し、アメリカ軍人の人ならばそれを言われれば自分をとても誇らしく感じる言葉で締めくくられる。これは、紛れもないリアルな海兵隊映画だ。

(4.75点/5点満点中)
happinet-phantom.com

The Inspection / インスペクション ここで生きる (2022)