The Blackening / 日本未公開 (2023) 1858本目
This ain't the Blackest shit ever?
『Get Out / ゲット・アウト (2017)』ほどではないけれど、黒人コミュニティでスマッシュヒットとなった最新ホラー・コメディ作品。その『ゲット・アウト』のような巧みさとかはないけれど、『Scary Movie / 最終絶叫計画 (2000)』からパロディを抜いて風刺の方を増々にした作品。一番分かりやすく書くとTVのコメディ番組『In Living Color / 日本未放送 (1990-1994)』をホラー映画にしたような感じなのだけど、その番組は日本では知られていないので分かりにくいですよね。要は、ウェイアンズ家族お得意の風刺コメディをホラーにした感じ。それもその筈、コメディアンのドウェイン・パーキンスが脚本(アイデアも)・出演している作品なのです。正直、あの時の彼がこんな作品を作るようになったのか! と嬉しい感じ。監督は、『Barbershop / バーバーショップ (2002)』のティム・ストーリー。
黒人の奴隷解放を祝う祝日ジュンティーンスの週末に、大学時代からの仲間が10年ぶりに揃うことになって、昔のようにトランプやボードゲーム、そしてお酒やクスリで盛り上がる予定だ。先に到着したのが、モーガン(イヴォンヌ・オージ)とショーン(ジェイ・ファロア)。一番奥の部屋を覗くと沢山のゲームがあり、テーブルに置かれていたのが、「黒人なろう系トリビアゲーム」。いきなり始まり、「ホラー映画の中で死ななかったキャラクターは?」という質問が出され、戸惑う2人だったが、何とか答えを言うが...
そしてその次の日、ドウェイン(ドウェイン・パーキンス)の車で来たのがリサ(アントワネット・ロバートソン)とアリソン(グレース・バイヤーズ)で、先に到着していたキング(メルヴィン・グレッグ)が公園レンジャーに捕まっていた。そして途中の小さなガソリンスタンドに立ち寄りお酒を物色していたシャニーカ(X・メイヨ)は、同じく向かう予定だというクリフトン(ジャーメイン・フォウラー)と合流。そしてリサの元彼で、ドウェインが軽蔑しているンマンディ(シンクア・ウォールズ)も合流するが、モーガンとショーンが見当たらず...
一応何度も書いておくが、『ゲット・アウト』のような上手さはない。が、とんでもない位に面白い。ホラーなのにゲラゲラ笑ってしまう新感覚のホラー・コメディ。『ゲット・アウト』のように後々よーく考えてみると、怖い... というか恐ろしいタイプ。いわゆる「きゃーっ」となる怖さではないが、ホラー映画のメソッド通りに話しが進んでいくホラー映画。正直、犯人もバレバレ(笑)。そんな所も面白さの一つ。脚本がコメディアンで、出演しているドウェイン・パーキンス。出演している人々も半分がコメディアン。なんとセリフの殆どがアドリブだそう。そういう中では、コメディアンではなく俳優であるシンクア・ウォールズ、グレース・バイアーズ、アントワネット・ロバートソン、メルヴィン・グレッグが不利だが、バイヤーズやグレッグは振り切って演じているので、とてもナチュラルで面白く、いいキャラクターになっている。
2重の意味でのブラックジョークが炸裂している。本来の意味である皮肉たっぷりにタブーに切り込んでいくブラックジョーク、そして最近ではブラックツイッターなんていう言い方をするがそれと同じブラック=黒人という意味でのブラックジョーク。黒人だから/黒人同士だからこそ言える皮肉とネガティブなジョーク。黒人コミュニティ内にある「黒人らしさ」の存在をこれでもかという位に風刺し、怖さよりも滑稽にして恐ろしくしたのが上手い。黒人、いやブラックとは何なのか? ブラックホラー映画がまた一歩進歩した。設定とセリフでとにかく楽しむという新感覚のホラー・コメディ。
(4.75点/5点満点中)
The Blackening / 日本未公開 (2023)