10年後の評価が楽しみなギャング・オペラ『Blue Story』
本国イギリスでの劇場公開後の24時間で、映画に関連した事件が25件も勃発した問題作。観たかった。アメリカでも3月後半から劇場公開される予定だったけれど、新型コロナウイルスの影響で延期・変更になって、やっとVODで公開。本国での評判はマチマチのようですが、私的には最高でした。久々に来たなって感じ。イギリスの『Boyz N The Hood / ボーイズ’ン・ザ・フッド (1991)』なんていう言い方をされることもあるみたいですが、作品的には『Menace II Society / メナース II ソサエティー/ポケットいっぱいの涙 (1993)』に近いかなーなんて思います。『HiGH&LOW』にも近いと思った。ラップマンの名前でラップをしているアンドリュー・オンウボルが監督・脚本・ナレーション的なラップを劇中で披露しております。元は、そのラップマンがYoutubeで披露していたシリーズを映画化。
ロンドンの南部にあるペッカムとデトフォード地区には、双方に「ペッカム・ボーイズ」と「ゲトー・ボーイズ」というギャング集団が存在し、お互いがライバルでイザコザが絶えなかった。そんな中、高校で仲が良くなったのが、ティミー(ステファン・オデュボラ)とマルコ(マイケル・ワード)。しかし、ティミーはデトフォードに住み、マルコはペッカムに住んでいた。ティミーは学校が同じリア(カーラ=シモン・スペンス)という女の子が好きだがシャイで中々言い出せなかった。そんな中、ティミーの旧友で現在はデトフォード地区のギャング集団ゲトー・ボーイズの一員キリー(カリ・ベスト)が2人を見つけ、マルコにちょっかいを出してくる。ゲトー・ボーイズに襲撃され、ペッカム・ボーイズが逃げる映像がネットに出回っていた。マルコの兄はペッカム・ボーイズの一員で、リベンジを考えていた。ティミーとマルコはギャングとは無縁だったが、お互いが住んでいる地区というだけでギャング闘争に巻き込まれていく...
プロットでは書ききれないくらい、複雑に色々と絡み合っていきます。もっともっと複雑です!私はこの作品を「ギャング・オペラ」と呼びたい。とても複雑な人間関係だし、でも理解出来るし、切ないし、悲しいし、感情がグチャグチャになる。何だろう、男同士の「ロミオとジュリエット」みたいな。生まれた所から違うだけで悲劇を生んだ的な。物語は最後の最後まで人間関係が複雑で、絶対に先読めないですよ。ラップマンは凄い物語書いた。ただ最初は誰がどのメンバーなのかが、ちょっと分かりにくいかな。分かるようになるとすごく面白くなる。『HiGH&LOW』も最初は複雑で分かりにくいですものね。でも、チームの色とか個性とか分かると凄く面白くなる!あの感じに似ております。
本作に触発されて暴力事件が起きたのは非常に残念。そういうものこそ切なくて不要だと描いているのに。なんでも、ペッカム・ボーイズとゲトー・ボーイズは実在するギャングらしいですね。その関係もあって、暴力事件が多発したのかもしれないです。アメリカでも『ボーイズ’ン・ザ・フッド』とか『New Jack City / ニュー・ジャック・シティ (1991)』公開時に暴力事件が起きて問題になったのを思い出し、90年代のアメリカのあの頃を追懐していた。観た後のなんとも言えない感情もあの頃と同じ。このギャング・オペラは、今は本国では理解されないかもしれない。でも恐らく10年後20年後に再評価されるような作品なのかも。
(5点満点:1754本目)
Blue Story / 日本未公開 (2019)