複雑に絡み合う2人の運命『Who Shot Biggie & Tupac』
いい出来かどうかは置いておいて、今年は完全にトゥパック&ビギー年!『All Eyez on Me / オール・アイズ・オン・ミー (2017)』がそうさせた。映画は決して良い作品ではなかったけれど。でも、そのお陰で、彼らの死がどれだけのインパクトを残したかを示し、そしてまた彼らの作品や生涯にスポットライトを浴びているのは歓迎したい。そして、これはぁあああああああーーー!!私にとっては正直ジョン・F・ケネディ暗殺やザプルーダー・フィルムの真相よりも気になる、「誰がトゥパックとビギーを殺したのか?」。未だに犯人は正式には特定されておらず、逮捕者も出ていない。誰?どうして?なんで?犯人はなぜ捕まらないの??すべての疑問と怒りをこの映画が解決してくれたああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!
CNNのジャーナリストのソルダッド・オブライエンと、ラップ界の重鎮アイス・Tがそのトゥパック・シャクールとノートリアス・B.I.G.の死の真相に迫っていく。ま、実際にはオブライエンが情報を集めて、アイス・Tがラップ界の窓口になってお伺いを立てた感じ。アイス・Tの前だとみんな率直に、そして尊敬を持って話す。だからこそオブライエンが鋭く切り込んでいく。この真相に迫るのに、良いコンビだった。
そんな2人はファヴ・5・フレディなどのヒップホップ界の大御所から、実際に事件現場に居た2人のボディガードやロサンジェルス市警にビギー殺しのマスターマインドと噂されているレジー・ライト・ジュニアや刑務所に居るシュグ・ナイトにも電話インタビューをしている。レジー・ライト・ジュニアのインタビューが見物。ガンガンと核心に迫っていく怖いもの知らずのオブライエンと、顔にすぐ出てしまうレジー・ライト。完全にオブライエンの勝利で面白かった。
そしてトゥパック射殺事件に関しては、銃のプロの人たちと再現し検証していく。その時に重要になるのが、一緒に車に乗っていたトゥパック在籍レーベル創設者シュグ・ナイトが、トゥパック射殺事件の黒幕ではないか?という長きにわたってある噂だ。実は私もこの説を信じていたし、トゥパックの映画『オール・アイズ・オン・ミー』もその仮説の元で作られた感じを凄く受けた。しかし今回の再現により、それは完全に否定された。銃のプロの人たちがトゥパックとシュグが乗っていた車と殺害に使われた銃、そして射撃された距離など全て同じにして検証し、その後に銃のプロの人がランダムに撃った所、トゥパックが座っていた位置などもあり、シュグが撃たれなかったのは本当に偶然の結果だった事が分かったのだ。この検証は、本当に目から鱗であった。
ならば、誰がトゥパックを殺したのか?その答えはロサンジェルス市警(LAPD)のギャング・ユニットの警察官が知っていた。と、ネタバレになるので書きませんが、彼らは証拠も掴んでいで、トゥパック殺害事件を捜査するラスベガス警察にもその証拠を知らせている。が、何故か逮捕には至っていない。というか、もう逮捕も出来ないのである。
そしてビギー殺害事件。こちらも様々な証拠や証言から、犯人は特定されている。が、警察を巻き込むスキャンダルにより、それも逮捕は出来ていない。シュグは、刑務所内から電話でインタビューを受けており、こんな事を話している。「時として最初の事件を解決すれば、次の事件は自ずと解決される事もある。だけど、そうなったか?ならなかっただろう?」と。この2つの事件の場合、ビギー殺害事件が明らかになれば、トゥパック殺害事件も明らかになる。だけれど、2つが複雑な問題に絡み合ってしまった。トゥパックとビギーが生前に複雑な問題に絡み合ってしまったように。
ヒップホップの歴史の生き字引のファヴ・5・フレディとアイス・Tが2人でこんな会話をしていた。ファヴ「今頃2人が生きていたら仲直りして、一緒にスタジオで録音していたかもしれない」、アイス「一緒にツアー」とかね。この2人がこんな会話をしているのを聞いて、そうかもしれないなーと私の目からは涙が止まらなくなった。数奇な運命を辿った2人の死の真相に迫った事で、彼らが生きて遺した軌跡を知る事になった。
Who Shot Biggie & Tupac? / 日本未公開 (2017)(4.25点:1586本目)