Dave Chappelle: Sticks & Stones / デイヴ・シャペルのどこ吹く風 (2019) 1712本目
スタンダップとは...『デイヴ・シャペルのどこ吹く風』
10年に一度の間隔で、スタンダップコメディ界には新星が現れる。とりわけ、黒人のスタンダップコメディは、それが顕著に現れる。60年代のレッド・フォックス&ディック・グレゴリー&マムス・マーブリー、70年代のビル・コズビー&リチャード・プライヤー、80年代のエディ・マーフィ、90年代のクリス・ロックとマーティン・ローレンス、そしてゼロ世代のデイヴ・シャペル、10年代のケヴィン・ハート(私はアレだが一般的には)... そろそろ新星が出てきても良い頃だが、なぜか燻っているように思える。()で追記したように、私はケヴィン・ハートには正直納得していない。ケヴィン・ハートは人気はあるし、今を代表するコメディアンだよねーとは思う。でも正直、デイヴ・シャペル以降の黒人スタンダップコメディアンに、なぜかときめかない。心からすげーーーーーー面白い!と感じられない。いや、1人だけときめいたコメディアンが居たが、その後燻ってしまっていて現在細々と活動中で残念である。という訳で、私を笑い不感症にしてしまったデイヴ・シャペルの最新スタンダップコメディライブ映像を!監督は、いつもと同じ『Save the Children / 日本未公開 (1973)』のスタン・レイサン(ちなみに女優サナー・レイサンの父)。
スタンダップコメディライブ映像にしては珍しく、登場シーンからの映像ではない。主役のデイヴ・シャペルはステージ上でアトランタの観客を笑わせている。プリンスの「1999」をアカペラで歌う。そしてコメディアンながら苦手だという物真似を披露する。「誰だと思う?」というデイヴから観客への問に、多くが「トランプ?」と答える。私もトランプだと思った。にしても、本当に物真似が苦手なのか全然似ていない。そうすると、デイヴは「だからお前たちみたいな...(ネタバレ自粛)」と答えを教えてくれる。笑った。自然と手を叩いて笑っていた。今回の一番好きな部分は、自身が番組を持っていたコメディ・セントラルの検閲担当レネーとの会話で、デイヴがレネーにやり返した言葉。黒人にとっての忌まわしい言葉「Nワード」をスッキリ撃退するパワフルな返し。ぐうの音も出ない。
今回のスタンダップは、前回の『Dave Chappelle: The Bird Revelation / デイヴ・シャペルの冷静沈着 (2018)』に割りと似ている。ルイス・CKの件については、デイヴ・シャペルの意見が崩れることは無さそうだと感じた。そこが少し私には歯がゆく感じた。そして、マイケル・ジャクソンやR・ケリーなどの話にも果敢に自分の意見を言ってくる。この映像の中でデイヴが言っていたこと全てが好きな訳でもないし、笑った訳でもない。少々、居心地の悪い瞬間もあった。そして、その後、インスタグラムをチェックしていた。私は絵を描く人たちが好きで何人かフォローしているが、その1人がこのスタンダップを観て書いた絵を観て、ハッとした。
スダンダップコメディのスタンダップはマイク一本で立って漫談するという意味もあるが、立ち上がることでもある。スタンダップの後に「For」をつければ、何かの為に立ち上がり、守ること。そしてスタンダップの後に「and be counted」をつければ、(問題になったとしても)堂々と意見を述べることである。デイヴのスタンダップコメディとは、何かの為に立ち上がり守りながらも、(恐れずに)堂々と意見を述べながらも、笑わせる。そういうものだ。
(4.75点:1712本目)
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