Native Son / 日本未公開 (2019) 1685本目
3度も映画化されたからこそ見えた現代こそホラー『Native Son』
アメリカ黒人文学を代表する一人リチャード・ライト原作『アメリカの息子』3度目の映画化。って、これって凄いことだよね。同じ話を3回もやるって。昔話的にみんなが知る話と言っても過言じゃない。だって、お父さんが同じ話を2度した時点で「オヤジ、うぜー!その話聞いた!!」って普通思うでしょ?3度聞いても飽きない。オヤジの戯言と名作を一緒にするな!って話でもあります。1940年代に書かれた名作でありますが、今回は舞台劇作家スーザン・ロリ・パークスが現代を舞台に書き直し、新進監督ラシッド・ジョンソンが映画化し、サンダンス映画祭のコンペに出してワールド・プレミアとなりました。サンダンスで有料チャンネルHBOが放映権獲得。
ビガー・トーマス(アシュトン・サンダース)は、家族とともにネズミが出るシカゴのボロアパートで暮らしていた。美容院で働いている恋人ベシー(キキ・レイン)の元へ自転車で向かい、ボスの女に届ける予定の香水をベシーにあげた。レコード屋で時間を潰したり、友人が働く映画館に忍び込んで映画を観たり...と自由気ままに生活していた。母の恋人がダルトン家が運転手を探しているので紹介され、ダルトン家に向かう。そこで主に娘メアリー(マーガレット・クアリー)の運転手として働くようになるが...
と、大まかな部分は原作と同じ。これから起こることも原作と同じ。けど、結末は違う。結末は超現代。もう今を100%反映しております。今だと、そうなるよねっていう。本は、1章「Fear(恐怖)」、2章「Flight(飛躍・逃亡)」、3章「Fate(運命)」と分かれている。今回のは、運命すら奪われてしまう。今が一番恐ろしい時なのかもとドキリとさせられた。現代の状況はホラーですよ。贖いすら出来ない。という訳で、原作にあったキリスト教ぽさも無くなっている。
そして今回はかなりパンク調。監督の趣味なのか、脚本家の趣味なのか、それとも2人の趣味なのか分からないけれど、ビガーは音楽もパンクが好きだし、クラシックすら好き。現代だからラップにしようとは思わなかったのが、個性があってよろしいかと。ファッションもパンク系。でも、オシャレ過ぎで貧乏設定が霞んだ。ああいう革ジャンとか高いじゃないですか!髪の毛グリーンにするのもお金かかるじゃないですか!でもブラックパンサー党のバッチとか良いね。ビガーという名前も、ビギーからだと思われるとかも面白い。そして、今回はセリフがかなり詩的で、物語も詩的に進んでいく。あと主人公が忍び込んで見た映画が『Sweet Sweetback's Baadasssss Song / スウィート・スウィートバック (1971)』なのが最高でーす!それにしても、主演ビガーを演じたアシュトン・サンダースが出演していた『The Equalizer 2 / イコライザー2 (2018)』にて、この原作『アメリカの息子』が大きな役割を果たしておりましたね。そして『The Equalizer / イコライザー (2014)』では、主演のデンゼル・ワシントン様が最後に読んでいたのが、ラルフ・エリソンの『見えない人間』。今回はビガー(アシュトン・サンダース)が冒頭で『見えない人間』を読んでましたね。
でも正直、これだけ見ても原作の描きたかったことは伝わらないと思う。原作読んで、過去作見ることで、この作品の良さが分かる。名作で知る、現在のホラーな状況。
(3.75点:1685本目)
Native Son / 日本未公開 (1951)
Native Son / ネイティブ・サン (1986)
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