全米を騒がした事件が起きた中、同じ街の片隅で生まれた命『For Ahkeem』
ミズーリ州セントルイス近郊のファーガソンで起きたマイク・ブラウン殺人事件(あえて殺人事件と書かせてもらう)... 近年勃発している警察官による過剰な銃暴力により亡くなった無実の黒人青年。そしてその直後に起きた大規模な抗議集会でも、警察側と一般市民が衝突し、日本でもTVなどを通じて報道された。フロリダ州で起きたトレイヴォン・マーティン殺人事件(犯人は警官ではなく自警団風...あくまでも風の一般人)もそうだったが、アメリカ黒人を取り巻く社会問題が浮彫となり、近年を語る上で欠かすことが出来ない悲しい事件となった。そんなファーガソン近くの高校に通う17歳のダジェ・シェルトンを追うドキュメンタリー映画。ベルリン映画祭のドキュメンタリー部門にも参加し、数々の賞を受賞している。
高校生のダジェは、学校で喧嘩をし、母を連れ添って法廷の裁判官の前に居た。ダジェは少々気性が激しく、怒りやすい。近所の友達は何人か銃などで亡くなっている。そんな彼女に裁判官が下した判決は、オルターナティブ・スクールへの転校。問題ある生徒が集まる高校へと転校になった。そこで出会ったのがアントニオ。彼女にとって初の恋人となる男の子だった。アントニオも問題があり、何度か逮捕歴があった。将来には希望が持てず、「将来はごみ収集員か土木作業員になる」と語っている。ダジェも高校卒業を目指して、少しやる気を見せていたが、アントニオがサボり始めると、ダジェもサボり始めてしまう。そして妊娠。ダジェはもう少しで卒業だったが、雲行きが怪しくなる。そして、マイク・ブラウン殺人事件が起きた。そしてダジェは出産する。
マイク・ブラウン殺人事件という、全米を騒がした事件が起きた中、同じ街で同じ年頃の女性を追ったというのが面白い。上の説明でも分かるように、事件前から撮っているので、凄い偶然。そして、そのセントルイスがTVで注目を集める中、「大手のメディアはセントルイスの真実を語っていない」と、1人の女子生徒が嘆いていたのが印象的だ。彼女は「私たちの中には暴動の中、ごみを拾ったりした者がたくさんいるのよ!暴力的な事ばかりをクローズアップしないで!」ということだ。そしてダジェは新しい高校の授業で新聞を作るのだけど、そのトピックは「ブラック・パンサー党」だった。この前の『Step / 日本未公開 (2017)』の時にも思ったけれど、若い子はブラック・パンサー党とかマルコムXが好きなんだなーと。やっぱりマーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師じゃないんだなーと。もっとキング牧師のことも勉強して欲しい!
あと印象的だったのが、妊娠発覚して超音波の時のアントニオの表情。全然モニター見ない。あー、これダメな奴と私は思いました。それでも、出産した時は泣くほど喜んでいたので心変わりしたのかな。しかもこっちが引くほどの号泣。可愛い奴。そのアントニオにも支援する団体があって(ファーザー・プロジェクトとか言っていた気がする)、大人の男性が職などの面倒を見るらしい。でもアントニオぉおおおおお!!!
そして『Step』の時みたいに、今はどうしているんだろう?と気になって検索してみる。ダジェはまあ今も看護系の資格を取る為に頑張っている。垢抜けた。アントニオは分からず。変わるって自分次第。ダジェはその1歩を踏み出しただけでも変わった。でも、現実には本当に難しいこと。でも踏み出すことの大切さ。実感する。
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