音楽の神様が愛し微笑む偉人『クインシーのすべて』
クインシー・ジョーンズ。Q御大。そういえば、何で今まで映画になっていなかったんだろう?ドキュメンタリーだけでなく、ドラマ作品として自伝映画が作られるべき人物である。頭で彼の偉大さを理解していたつもりだけれど、このドキュメンタリーを観て、改めてその偉大過ぎる偉大さにひれ伏した。この映画を語る上で欠かせない映画が『Keep on Keepin' On / 日本未公開 (2014)』。Q御大の師匠でありメンターであり憧れの人物、クラーク・テリーを追ったドキュメンタリー映画。Q御大がプロデューサーを務めた。そんな事もあり、その映画の監督アラン・ヒックスが、Q御大の娘ラシダ・ジョーンズと共に共同で監督した作品。
クインシー・ジョーンズにスミソニアン博物館のアフリカン・アメリカン館のオープニングセレモニーのプロデュースの話が舞い込む。そのセレモニーが無事に終了するまでが追われ、それと同時にクインシーの人生が語られていく...
いきなり映されるのが、Q御大の家に飾ってある超一流エンタテイナーたちとの写真や、夥しい数のプラチナ&ゴールドディスクのフレーム、そして映画のポスター。広い部屋の壁一面に飾ってあるが、恐らくそれはQ御大にとってはごく一部に過ぎない。ポッドキャストの録音でQ御大の自宅に訪れたドクター・ドレが「わーお!」とそれを見て感嘆の声を上げる。ドレは「自分が誰だかご存知ですか?クインシー・ジョーンズですよ!」と、あのドクター・ドレのテンションを上げてしまうQ御大という存在。っていうのが冒頭の2-3分。ここから怒涛のQ御大伝説が語られていく。愛娘ラシダ・ジョーンズが撮影した映像も多く、実にフランクにありのままを話していく。「いつでも書けるように音楽帳とペンは常に自分の側に置いておくんだ。じゃないと神様は(ヘンリー・)マンシーニの方に持っていっちゃうんだ」とか、そんなQ御大の語る言葉こそ、全てメモ書きして自分の周りに残しておきたくなる言葉ばかり。
そんな風に音楽の神に愛されたQ御大は、クラーク・テリーのドキュメンタリーでも感じたけれど、音楽への強い愛を感じる。そして先駆者への愛も非常に強く感じた。この映画の中でも何度もクラーク・テリーの名前が出てきて、クラーク・テリーが微笑む姿が私の頭に浮かびました。そして後輩とか後続へは本当に優しい。ちゃんとアドバイスするし、しかも褒め上手。オープニングセレモニーで歌った若い2人の女の子が褒められた時の彼女たちのリアクション良かったですよねー。彼女たちはQ御大のあの褒め言葉があるから、これからどんな辛い事があっても音楽を嫌いには絶対にならないと思うし、続けると思う。
それにしてもラシダ・ジョーンズが、お母さんのペギー・リプトンにそっくり。特に声。同じだね。2パックの話が出てくるけれど、2パックと姉キタダの話は無かった。2パックと話し合った事は語られているが、揉めたというか、2パックに言われた事は語られていない。何ていうか、この映画を観たら、ラシダがQ御大の子供の中で一番発言力があるのかな?と思った。
レスリー・ゴアの曲がビルボードで1位になった時、2位が坂本九の「上を向いて歩こう」だった!のを私は見逃しませんでしたよ。これから見る方はそのシーンをチェックしてみてください。あと、ケンドリック・ラマーだは会話中になぜかQ御大に毎回聞き返されるのが、ちょっと面白かった。そして写真撮影の時のQ御大のお茶目さも素敵でした。
そうかー、レッド・フォックスの『Sanford and Son / 日本未放送 (1972-1977)』のテーマ曲もQ御大でしたね!私の人生、これまでに随分と意識せずともQ御大の音楽に触れ、そして楽しんできたんだなーと改めて思いました。音楽の神に愛され続けている偉大過ぎる偉人。
Quincy / クインシーのすべて (2018)(4.75点:1654本目)