SuperFly / 日本未公開 (2018) 1645本目
割りとオリジナルに忠実な『Superfly』
あの『Super Fly / スーパーフライ (1972)』のリメイク作品だ。そう、オリジナルには「あの」を付けたくなるし、太文字にし、更には文字を大きくして目立ちさせたくなるほどの名作だ。ピンプが主役でブラックスプロイテーションだけど、誰が何と言おうと名作だ。どこの何が名作かって、やっぱりカーティス・メイフィールドのサウンドトラックは「オールタイム・ベスト・サウンドトラック」のトップテン...どころか、ベスト3にすら入るであろう名曲。こんなにも映画の良さを引き出す曲は中々出会えない。それだけじゃなくて、セリフの随所に70年代にゲトーに住んでいた黒人の生活が垣間見られるのだ。そして主役プリーストを演じたロン・オニールの哀愁。そしてヒロインのジョージア役シーラ・フレイザーの美しさと、それを出し惜しみにしない度胸の良さ。有名写真家でありながら映画『Shaft / 黒いジャガー (1971)』を監督して、ブラックスプロイテーションの新しい波を作ったゴードン・パークスの息子ゴードン・パークス・ジュニアの父親譲りなスタイリッシュさ。全てが見事に融合したのがオリジナル『スーパーフライ』。という訳で、最初にも書いたけれど、今回はそのリメイク作品。舞台はニューヨークのハーレムから、ジョージア州アトランタに変更。
プリースト(トレヴァー・ジャクソン)は、相棒エディ(ジェイソン・ミッチェル)と共にアトランタで麻薬売買で富を築いていた。最近いきがっていて支払いが滞っているリティ(アレン・マルドナド)をしめてきた。女の1人であるシンシア(アンドレア・ロンド)が働いているストリップクラブに出かけて、彼女ジョージア(レックス・スコット・デイヴィス)と落ち合った。そこにはライバル関係ながら良好な関係を築いている「Sno Patrol」の連中が派手に騒いでいた。そのメンバーの1人ジュジュ(カーラン・ウォーカー)がシンシアに軽くあしらわれイライラしていた。クラブから出た所でプリーストにもちょっかいを出すジュジュ。ジュジュは簡単に銃を出し、その銃口をプリーストに向ける...
と、まとめてみたけれど、肝心なスキャターとか新しく登場するメキシコ系カルテルとか入っていない。そう、オリジナルでもジュリアス・ハリス(ブラックスプロイテーションの名バイプレイヤー)が良い味を出していたスキャターのオヤジも出てきます。今回は、『THE WIRE/ザ・ワイヤー』などでお馴染みのマイケル・K・ウィリアムスがスキャター役。なのでスキャターのオヤジとか言えない雰囲気。スキャターのオヤジは、不衛生で不味そうなレストランやっていたけれど、今回のスキャター殿はマーシャルアーツのジムを経営。オシャレな感じでカッコいいし、何しろ強そう。
でもね、現代的にかなりアップデートされてはいるし、舞台も変わったけれど、内容そのものはオリジナルに割りと忠実。プリーストの相棒エディが裏カジノぽい違法ダイスをしていたり、フレディが物語のきっかけになっていたりとか。プリーストのプリティな直毛ロン毛とか。そのロン毛を弄るセリフも面白かった。
が、しかーし!舞台やスケールが広くなった分、黒人コミュニティというのが伝わりにくかった。オリジナルでは、対警官という対立がハッキリとしていて、それで最後にああなるものだから凄くスッキリして最高なのだけど、今回はそれに現代的にメキシコ系カルテルまであったのもある。この話は話で面白かったのではあるが... 黒人コミュニティの声がハッキリとは聞こえてこなかった。このリメイク作ではプリーストとエディの仲間意識は凄く感じるのだけど、オリジナルではそれだけじゃなくて黒人全体の仲間意識が垣間見られたんです。そ、そして!ジョージア役には思い切って欲しかった!オリジナルのあのラブシーンには全然達していない。オリジナルのラブシーンにはそうなるしかない男と女を感じたし、哀愁すら感じた。今回のジョージアにはお高く留まっている感を感じ忠誠心を感じなかった。シンシアのDo or Die感の方が良かった。
一番は、カーティス・メイフィールドとフューチャーの違いですかね。もちろんフューチャーはアトランタを代表するラッパーで素晴らしい楽曲を提供している。現代版にアップデートされていた本作にはピッタリ。でも、やっぱりカーティス・メイフィールドの曲が掛かると「やっぱ、これぇえええええええええええ!これがスーパーフライ!!!!!!」となったのも事実。
SuperFly / 日本未公開 (2018)(3.25点:1645本目)