不思議な映画。とーーてもね。シアトルを舞台にしたサスペンスドラマ。シアトルって、実際は絶対に違うと思うし、住めば都だと思うんだけど、曇りがちっていう情報から、何か暗いイメージあるんだよね。同じシアトルが舞台の「Chronicle / クロニクル (2012)」も超アホな高校生達が主人公で、アホな事ばっかりやってるんだけど、最後には病んじゃってやっぱりどんより暗かったもんね。そんな訳で、超暗いダウンビートな映画。っていうかさ、タイトルの「ポリス・ビート」のビートってビートたけしのビート、ビートを刻むのビートの意味だと思ってたんだけど、「ポリス・ビート」で警察番記者の意味らしい。それで、その「ポリス・ビート」というコラムをシアトルの週刊誌で書いていたチャールズ・ムーダッドダイがこの映画の脚本を共同で書いている。こもムーダッドダイはこの映画の主人公と同じく、アフリカからの移民。映画の主人公Zはセネガルからの移民だけど、このムーダッドダイはローデシア(現ジンバブエ)生まれ。台詞の部分が英語で、主人公のナレーションの部分がウォロフ語。ウォロフ語って、Ousmane Sembene (ウスマン・センベーヌ)の時にも思うんだけど、一人語りの時には妙な説得力というか言葉に厚みが増すように聞こえる言葉だよね。それでいてあのリズムは詩的にも聞こえる。フランス語を聞いてる時と似てるかな?フランスの植民地だったからかもしれないね。
この映画の不思議さは、それだけじゃない。主人公のZはシアトルで自転車警官をやっている移民で、Zがシアトルの事件を処理していく所。Zが処理した事件は不可解な物が多い。多い茂った茂みの中に隠れていた老人、女性の声が海から聞こえてきたからと海に入っていく男性、落ちてきた木の枝で怪我したのに分からない老婆、道端で大きな鳥を殺した男、他人の家に電話を貸してと入り込んで来て気持ち悪い会話をして帰る男、血だらけの死体、自転車が整備不備で職務質問を受けて逆ギレする男、郵便トラックに発砲する男、ポルノ店に立ち入り禁止になる男、転んで倒れた時に荷物を母とその子供に取られた女性、家庭内暴力、スーパーでいきなり生肉をガッツク男、娼婦に惚れて匿ってしまう警官。って挙げてみると、血だらけの死体と家庭内暴力がまともに見えてきちゃう不思議さ。しかもこれらの事件は、実際にシアトルで起こった事件なのです。アメリカは完全に病んでますね。
でも病んでいるのはアメリカだけじゃない。セネガルからの移民のZも、そこで病んできてしまう。恋人のレイチェルがZを置いて、元彼のジェフとキャンプに出かけてしまう!お、でた、逆クリス・ブラウン!元彼だけど、何でもないからー、友達だからー的な。しかも電話しても出ない、折り返し電話も掛けてこない!私だったらこんな扱いをそのままにはしませんねー。っていうか、行かせませんから!自分が辛いの目に見えてるじゃんー。と軽く書きましたが、スクリーンの中ではZはそうとう悩み参ってましたね。だから、行かせないのよー!と私は思ってました。
この独特の雰囲気がオリジナリティあって面白かったですね。この印象的な映画のポスターのように青が印象的。英語の「ブルー」という言葉の持つ「陰気」とか「いやらしさ」が前面に出た「ブルー」。変わっていて面白い映画でした。でも不満があるのは、この主人公のZ以外、みんなルックスがイマイチ!レイチェルもジェフも、Zの相棒の警官も、その警官に恋される娼婦も!娼婦に至っては酷いレベル。どこに一目惚れするねん!と突っ込みたくなるレベル。そしてその唯一ルックスが良かったZを演じた俳優は、この映画の脚本家のブログによると2010年にタイで亡くなっているらしい。この映画のみの出演。淡々と演じていたのが印象的だった。非常に残念。
(4.5点/5点満点中:9/28/12:DVDにて鑑賞)