またもや、というか、またまた健全な一般市民が銃弾で命を亡くした。亡くなった犠牲者は、17歳のトレイヴォン・マーティン。ある日、彼はフロリダのオーランド郊外のサンフォードという白人地区に住む父親の家にNBAのオールスター戦を観に出かけた。帰りにお店でキャンディを買っている所を、ネイバーフッド・ウォッチという団体に入っているジョージ・ジマーマンという男に目撃されている。ネイバーフッド・ウォッチとは、市民団体で市民が協力して地区を見張り、犯罪から自分達を守っていこうという団体。そしてトレイヴォンを見たジマーマンは、警察にすぐに「怪しい行動をしている男がいる。どこか悪い感じだ。たぶん麻薬か何かをしているのだろう」と電話を掛けている。しかし警察はジマーマンに「追跡しない事」と話しているが、ジマーマンはその言葉を無視して、トレイヴォンを追跡。その間に、トレイヴォンの彼女から携帯に電話が入り、トレイヴォンはこう話した。「変な男につけられている」と。彼女は電話口で「走って逃げて」と告げると、次は電話口からトレイヴォンの声でこう聞こえた「何ついてきてるんだよ!」と。すると、別の男の声で「ここで何やってるんだ?」と聞こえ、その直後に電話口の彼女は押された感じの音がして、何も聞こえなくなった。すぐに電話を掛けなおしたが、応答は無かったという。
そして警察が駆けつけた時には、トレイヴォンは胸を撃たれて亡くなっていた。ジマーマンは鼻や背中や後頭部から血が流れていた。目撃証言によれば、取っ組み合いになった時にトレイヴォンはジマーマンに馬乗り状態で上から殴っていて、ジマーマンは助けを呼んでいたとの事。TVインタビューを受けた別の目撃者は取っ組み合いも無かったと証言する者も居る。そしてジマーマンが当初警察に話したのは、トラックに乗っていて通りの名前を見ようと車から降りた時に、トレイヴォンから攻撃されて、怖くなって発砲したとも語っている。
ジマーマンは父によれば、ヒスパニック系。他民族一家で暮らしており、ジマーマンの父は「うちの息子が人種差別なんてありえない。そういう事とは無縁」と語っている。しかし一方では、ボランティアでやっているネイバーフッド・ウォッチに熱心で、住民からは「厳しい」という意見も出ていた。ジマーマンは「部外者だと思われる若い黒人には気をつけろ」というEメールも発信している。またFBIが発表したジマーマンの肉声テープでは「Fu**in coon」と話している。Coonとは黒人への差別用語。しかしこのテープはあまりはっきりしていないようで、ネイティブが聞いてもCoonなのかCluelessなのかpunksなのかcourseなのかはっきりとは分からないという。そして去年明けから、ジマーマンは警察に46回も電話しているという。ジマーマンには2005年に友人の逮捕を邪魔し、警察官に暴力を加えた罪で逮捕されている経験がある。
一方、犠牲者となったトレイヴォン・マーティンは、学業優秀でAとBばかりの生徒(日本的に言えば5と4ばかり)。9歳の頃には台所で火事になった所を、父親を助けて命を救った事もあった。将来は大学に入り、航空メカニックになる事が夢だった。もちろんジマーマンが主張していた麻薬もやっていないし、逮捕歴もない。亡くなった当時に彼のポケットにあったのはスキトルズというキャンディと、アイスティのボトルだけであった。
そして電話口で全てを聞いてしまったトレイヴォンの彼女はトラウマで、病院に入院している。先日ようやく話が出来るようになり、上のように話す事が出来た。
問題となっているのは、その後にジマーマンの正当防衛が認められており、ジマーマンの逮捕には至っていないという事。トレイヴォンの父親は警察にどうしてジマーマンが逮捕されていないのか?を問うと、「ジマーマンは逮捕歴もなく、健全で、しかも刑事司法を学んだ経歴があり、正当防衛について熟知していた」と話したという。そして目撃者の証言では、トレイヴォンが助けを求めて叫んでいたとも言っている。助けを求めた叫びは、一発の銃声の後に聞こえなくなったという。その目撃者は、警察側は助けを求めたのはジマーマンの方だと「訂正」するように、目撃者に述べた。同じ目撃者は、ジマーマンが正当防衛だったとは感じておらず、銃声の後にはトレイヴォンの亡骸にそびえ立っていたジマーマンも見ている。そしてなぜか警察側はジマーマンの正当防衛の訴えを信じこんでおり、一般では行われるアルコールや麻薬のテストをジマーマンに対して行っていない。またサンフォードの警察には、同じような問題が以前にもあり、2005年にはやはり若い黒人の青年がセキュリティの銃によって亡くなっているが、そのセキュリティの1人が元サンフォード警察で働いていた息子だった為もあって、正当防衛が認められて逮捕されていない。また2011年には黒人のホームレスが暴行にあっているが、その暴行を加えた男の父親がサンフォード警察官だった為に、一度は起訴を取りやめている。その捜査をした警官が、今回のトレイヴォンの事件でも不起訴とした警官であるとの事。
トレイヴォンの父親がChange.orgに「わが息子を殺した殺人に起訴を」という嘆願書で、署名を訴えている。
キャンペーン · Prosecute the killer of our son, 17-year-old Trayvon Martin · Change.org
このニュースがツイッターやブログで広まり、3月20日にはようやくFBIとアメリカ司法局が調査を開始すると発表。
そしてジマーマンは地元を離れて、どこかに雲隠れしているとの事。もちろん謝罪すらない。
ブラックムービーの切り込み隊長スパイク・リーは、この問題に対して「I am Trayvon Martin」の運動をしている若者にリツイートで「私はトレイヴォン・マーティンだ。私は生きているべきだった。理由も無く殺された」とツイートメッセージを送っている。
スパイクが言う通り、トレイヴォンは殺される理由なんて全くなかった。黒人の人たちが良く使うフレーズ「運悪い時に運悪い場所に居た」だけなのである。そしてコメディアンヌのワンダ・サイクスはツイッターでこうつぶやいた「もしトレイヴォンが格闘して、ジマーマンから銃を奪い殺したとしたら、トレイヴォンは正当防衛として自由で居られるかしら?#絶対違うわ!」と書いている。そういう事なのである。
最新情報はこちら→にアップしてます。はてなブックマーク - Trayvon Martinに関するblackmovieのブックマーク