"30 for 30" Without Bias / 日本未公開 (2010) 893本目
こういう物語には私、弱いわけで... 「ER」のベントン先生が監督した「Rebound: The Legend of Earl 'The Goat' Manigault / リバウンド (1996)」にも似ているストーリー。でもこちらは、最近凝ってみているESPNが制作のドキュメンタリーの1つ。しかも監督がBETの「American Gangster」の監督。デンゼルのあの映画じゃなくて、テレビのドキュメンタリー番組ね。まあデンゼルがあの映画で演じたフランク・ルーカスとかも取り上げられてましたが、有名なギャングを取り上げて紹介する番組。あのヴィング・レイムスのオジキがあの太い声でナレーションしているのですが、麻薬などの「黒い交際」をめぐる事情がとーーーってもダークで入り込んでしまうドキュメンタリーです。その監督が取ったので、こちらもとっても入り込んでしまいました。
レン・バイアスというバスケットボール選手を追うドキュメンタリー。レン・バイアスはマイケル・ジョーダンとかパトリック・ユーイングやデビット・ロビンソンというスーパースターだらけだったバスケットの黄金期に存在した。大学時代にはノースカロライナ大学時代のマイケル・ジョーダンとも対戦している。その頃にはマイケルかレン・バイアスか?とまで言われた人物。でもよっぽどのバスケットボールファンでないと、日本ではこのレン・バイアスという名前を知る人は少ないと思う。確かに大学で活躍してもNBAで全く活躍しない選手は沢山居る。あの神とまで言われたマイケル・ジョーダンだって、ドラフト1位じゃない。マイケル・ジョーダンよりも上位でピックされた選手はあまりNBAでは活躍せずに終わっている。でもこのレン・バイアスはNBAでは確実に活躍していた筈であった。夫にレン・バイアスを覚えているか聞いてみたら、「当たり前じゃん!」と言われた。夫曰く「丁度いい時に丁度いいチームにピックされたんだよね。あの当時のボストン・セルティックスはチャンピオンで、ラリー・バードとかロバート・パリッシュが居たけど、30代で少し年を取ってきた時期だからね、若いレン・バイアスが入ってチームは活性化されるし、バイアスにとってもベテランのバードなどから教えて貰えただろうし」と。なるほどである。ちなみに同じ年のドラフトにはロン・ハーパーが8位、デニス・ロドマンが27位。このレン・バイアスは2位でボストンに指名されていた。
ではなぜ我々はこのレン・バイアスを全く知らないのか?それは、ドラフトが終了した2日後にオーバードーズで亡くなったからである。オーバードーズというと、麻薬中毒だったと思われるかもしれない。所が違う。たった一回の火遊びが、彼の命を奪ったのです。私的にはオーバードーズ=麻薬とズブズブだと思っていたのです。ちなみに上であげたベントン先生の映画でドン・チードルが演じていたバスケ選手は中毒。でも彼はオーバードーズで死ぬことは無かった。麻薬の怖さを改めて知らされましたね。ちなみに彼が一回やったのがコカイン。コカインとモルトビール(安いビール)をやっていた。彼の葬式には、マイケル・ジョーダンも彼の家族に花を送ったらしい。
このレン・バイアス、生まれながらにバスケの才能があった訳じゃないらしい。中学時代にはバスケチームからクビになってしまう程だった。でも高校に入ってコーチが代わって、才能が開花。大学は地元のメリーランド大学に進む。それは父親の希望でレンの下に居る弟や妹にとって大学という所を身近に感じて欲しいからという理由で地元に決めた。大学でも努力して、シーズンオフの時には体作りの為に、フットボールチームの練習に参加していたそうである。でも地元だった事が逆にこの悲劇を生んでしまったのかもしれない。昔からの友達ブライアン・トリブルがコカインをあの日持っていたからである。
我々が知らないレン・バイアスという選手を知るのにもいいドキュメンタリーだが、アメリカの80年代のあの麻薬狂騒時代の恐ろしさを知るのにもいいドキュメンタリー。悲劇はこれでもか!という位に恐ろしい程に迫ってくる。当事者から家族から当時バイアスの居たDCエリアの若手記者で今は人気スポーツキャスターのマイケル・ウィルボーンなどから色々と話を聞いていて、話の進め方も上手いし忠実に核心に迫っている。それはタイトル通り。文字通り、バイアスの名前である「バイアスなしで」という意味と、Biasの意味である「先入観や偏見なしに」この悲劇を追っている。このドキュメンタリーと、上でもあげた「Rebound: The Legend of Earl 'The Goat' Manigault / リバウンド (1996)」を合わせて見てもらいたい。ドン・チードルとフォレスト・ウィッテカーが共演している佳作。
(4.75点/5点満点中:DVDにて鑑賞)