これは以前からハマっているPBSで放送したブロードウェイ劇のひとつ。正直、これはあんまり期待していなかったのだけど、実はこれが今までで最強かもしれん...
有名な黒人詩人の詩を詠ったり、踊ったり、歌ったりする舞台。男女4人ずつ計8人が出てくるのだけど、特にがっちりと決まった枠内の物語は無いが、南北戦争から今に続く詩が詠まれていきます。と書いても何の事かさっぱり理解してもらえないと思う。ミュージカルとも違うし、同じような詩が詠まれコレオポエムと言われた「For Colored Girls Who Have Considered Suicide/When the Rainbow Is Enuf / 日本未公開 (1982)」とも違う、独特な世界。とは言え、近寄り難さもない。でも前衛的で新鮮。とにかくこのオリジナリティある世界に引き込まれてしまいます。私、平成元年(って事は23年よ!)からの大親友に「昔から詩人的」とついこの間言われました。私、詩が実はひじょーに好きなんですね。学生時代は「字数が少なくて読みやすいから」という最低な理由で読み始めたんですねー。もうバカ丸出し。でもその少ない字数に詰まっている意味や、リズム等にハマってしまったのです。やっぱり一番好きなのがラングストン・ヒューズ(普通)なんですが、実はバイロンも好きです。恋愛バカでもあるのでね。ラングストン・ヒューズだけでなく、ポール・ローレンス・ダンバーにニッキ ジョヴァンニ、サム・グリーンリー(The Spook Who Sat by the Door / ブラック・ミッション/反逆のエージェント (1973)の作者)、サウンドラ・シャープ(タイポじゃないです)、カウンティー・カレン、ジュリアン・ボンド(NAACP)等、総勢様々な分野で活躍する14人の詩がこの舞台で詠まれます。
8人の俳優の中には「Blankman / ブランクマン・フォーエバー (1994)」のLynne Thigpen (リン・シグペン)や、私的にはTVシリーズ「Family Matters」のカール・ウィンズロー役なのですが、一般的には「ダイ・ハード」の一番最初でブルース・ウィリスをトランシーバーで助けた警官役でしょうか...Reginald VelJohnson (レジナルド・ヴェルジョンソン)が出てます。でもメインは双子のクリーヴァント・デリックスとクリントン・デリックス=キャロルの2人。一人はルーサー・ヴァンドロスみたいな声で歌ってくれます。この舞台の音楽もこの双子が担当。非凡な才能を見せ付けてくれてます。リン・シグペンが結構歌えるのもびっくり。
重い感じに思えるかもしれませんが、そんな事全然無い。最後の方でディスコ調の曲になると、コミカルになったりします。全然飽きさせない演出。この舞台で読まれたラングストン・ヒューズの「Note on Commercial Theater」にこめられた思いが、この舞台で実現しているのです。黒人のブルースがジャズ等がいつの間にか有名となってブロードウェイで歌われて、音楽の本質が歪められた哀しさをヒューズは、「いつか誰かが立ち上がり、私の事を話してくれるだろう、そして私の事を書いてくれるだろう...黒人で美しく...そして私の事を歌ってくれるだろう、そして私の事を舞台にしてくれるだろう!それは私自身なのだ!そうさ、それは私自身」...と詠った。この舞台は黒人で美しく歌われた、そういう舞台なのです。
(5点満点中;DVDにて鑑賞)