Death Of A Snowman / 日本未公開 (1978) 817本目
南アフリカ産のブラックスプロイテーション映画。珍しいでしょ?最近になって正規版がDVDとなって登場。ブラックムービーを愛するコミュニティではちょっとした話題になりました。早速私も買いました。コアなコミュニティの間で話題になるだけあって、さすがに面白い!
主役は当時から世界的スターだった南アフリカの俳優ケン・ガンプが演じるスティーブ。彼が新聞記者を演じている。もう一人の主役が、白人の刑事のディール。南アフリカのヨハネスブルクでは、ギャング達が何者かによって殺されるという事件が続く。担当しているのがディール刑事で、いつも現場にすぐに現れるのがスティーブ。2人は前々から事件について協力し合う仲でもあり友人でもあった。スティーブの書いた記事を見て、犯人グループが接触し独占記事を書かせる。「ウォー・オン・クライム」というグループだと言う。街の悪い者達を始末していく彼らは、アンチヒーロー的扱いを受けるが、スティーブとディール刑事には何かしっくり来なかった。捜査をしていくと...
という感じなのですが、上にも書いている通り、普通ーーーなブラックスプロイテーションでしょ?ロサンジェルスとかニューヨークが舞台でも全然違和感無い。いや、さすがに風景とかで畑とか出てくるので、ニューヨークは無理かな?でもロサンジェルスならそれでも全然違和感無い。アパルトヘイト真っ只中の南アフリカで、それについての言及が一切無し!だって、この頃一番アパルトヘイト撤退に向けて動いていた時期ですよ。ソウェト蜂起が1976年で、それから運動が活発化していき1980年代に突入。一番敏感な時だったと思うのです。でもこの映画は「アパルトヘイト」の言及をせずに、それに寡黙に討議している感じを受けましたね。アパルトヘイト政策時代の1950年にシドニー・ポワチエが「Cry, the Beloved Country / 泣け!愛する祖国よ (1951)」を撮影している時に、ヨハネスブルク市内のホテルには泊まれる事が出来ずに、毎日何時間も掛けて車で通わないとダメだったと言っている。そんなアパルトヘイト時代に、この映画はケン・ガンプ演じる主役と、白人の刑事は互いに協力し合うのですよ。しかも同等の立場で。白人刑事は決して上から目線じゃないのです。更に言えば、悪役達も黒人と白人の両方。白人の悪役は黒人に雇われている感じ。さらにさらに、黒人から白人が脅されるなんて場面も。口すっぱくして言いますが、アパルトヘイト時代ですからね。ネルソン・マンデラはまだ監獄ですからね。
でもそれだけじゃないのです。ケン・ガンプ演じるスティーブと親との関係の種明かしとか、エンディングの車のライトとか、さらにエンディングクレジットとか、アメリカのブラックスプロイテーションでも出来なかったようなお洒落なカッコ良さ!ちなみにDVDジャケットで銃を持っているフラワーチルドレンみたいな白人の役者が脚本も担当している。
最近はこういう誰もまだ見てないのに面白い作品に出会えると、よだれ垂らしてゾクゾクしちゃう自分が居ます。ブラックスプロイテーション的面白さと、ブラックムービー的面白さの二つを兼ね備えたこれは本当に良作!!!
(4.75点/5点満点中:DVDにて鑑賞)