1965年のロサンジェルスのワッツ暴動以後に実際にあった話にインスパイアされて出来た物語。映画では主役はリチャード・ケリーになっていますが、モデルになったのはチャールズ・マークスという男性。地域で活動家として活動していたリチャードは、ワッツ暴動が起きた時に呼ばれて参加。暴力は行っていないが、そこに居たという理由で逮捕。裁判で無実を戦うつもりだったが、弁護士に「あの暴動に参加した全員が同じ事言うんだよ。陪審員が信じると思う?」と言われ、しぶしぶ司法取引に応じる。その取引が、母親からの示しでロサンジェルスにある新学校に2学期通い、一定の良い成績を取る事だった。しかしリチャードは夢だった会社への就職が決まっていた。嫌々学校に通うが、そこでは初の黒人学生となってしまい、色々と注目されてしまうのです。そこで若いリチャードの面倒を見るのが、学校で用務員のような事をしているサミュエル。サミュエルを演じているのがルイス・ゴセット・ジュニア。まさに燻し銀という言葉がピッタリ。サミュエルはリチャードを正しい方向に導くが、学校にも利用されて板ばさみにもなってしまうのです。でも物語は割りと普通かな。あんなに人の良かった学長が急に悪魔のようになってしまうのが、何か哀しい。学長も自分の野望との板ばさみではあったけれど...
この映画の見所は物語よりも演技ですね。ルイス・ゴセット・ジュニアは本当にサミュエルそのものという感じがした。リチャード役の若い俳優に語りかけるシーンは実に優しい。実際にも撮影中にその若い俳優に読んでおいた方が良い本などをプレゼントしていたらしい。サミュエルだわ。その若い俳優との雰囲気も良く、会話の部分も台詞も含めて見所。ローレン・ホリーの影のある教授役も良かった。学長も途中で性格変わっちゃうけど、その変わりぷりも上手かった。
この映画を見るとしたらアメリカ版のDVDになると思うけど、ボーナス映像も見ごたえある。チャールズ・マークス本人がサミュエルとの関係について語っていて泣けます。映画で使われたサミュエルの部屋は、実際のサミュエルの部屋にソックリだそうです。
(4点/5点満点中:DVDにて鑑賞)