ジム・ブラウンが出演の『暴動』(1969)の方が観たくてネトフリで検索したら、これが出てきた。ディラン(ビバヒル)かよ!と思ってよーく観るとメルヴィン・ヴァン・ピープルズ御大と息子のマリオ?VP親子?え?と観た作品です。ナショジオの『LA 92 / LA 92 (2017) (TV)』や『Burn Motherfucker, Burn! / 日本未公開 (2017)』等が今年だけでも作られたように、今年はLA暴動から25年。この作品はその1992年のLA暴動から5年後の1997年に作られたTV映画。アジア人、ヒスパニック、白人、黒人の4つの視点から語られているオムニバスドラマなのだ。
ロドニー・キングへの警察官による暴行事件の判決が出た1992年4月29日。ロサンジェルスで小さなマーケット店を開いているリー一家。その息子ジェフリー(ダンテ・バスコ)は、父(マコ岩松)が人々に屈する事に嫌気を感じていた。ロサンジェルスで白人でも黒人でもヒスパニックでもないアジア系である事を弱みだと感じていたジェフリー。仲間とスーパーに買い物に行った時に、警察官たちへの判決が無罪だと知った。その直後にスーパーから人が消えた。そして街中で店舗が荒らされている事をしり、自分の親の店が気になりすぐに帰るが、もう暴漢たちが襲っていた...
と、最初のアジア系家族を描いた「Gold Mountain」のあらすじだけを紹介しましたが、この4つのオムニバスドラマは絶妙に上手く絡み合っている。ただ普通に絡み合っているという訳でもなく、いやー絡まないでぇええ!と思う事は、絡んでいなかったりと上手いのだ。92年のLA暴動について映画では黒人の視点から語れる事が多かった。その中で今年放送されたナショジオの『LA 92』は、人の意見ではなく当時の映像だけをコラージュして達観した視点で描かれていて面白かった。この作品では、敢えて4つの視点から描かれているのが面白いだろう。4つの視点からロドニー・キングへの思いを観るだけでも面白い。白人でしかも警察という立場の人たちからは、ロドニー・キングは忌々しく面倒な事を増やした憎むべき男。しかしヒスパニックにとっては、割とどうでもよく略奪するきっかけと理由を作ってくれた男。その両者のロドニー・キングへのセリフの差が面白い。
そしてアジア系ドラマの思いとか心情とかは、やっぱり私たちには伝わるものが大きい。とは言え、燃えている所にお辞儀はしないけどね!あれ不思議。しかもちゃんとこのアジア系ドラマは、アジア系の人が制作しているのに!あれはないよね。そして確かにアジア系なんだけど、アジア系が混ざり過ぎ!っていう感じもする。リーっていう名前だし店内の仏壇?みたいのから察するに中国系なのかな?と思ったら、父が日本人のマコ岩松さんで、息子がフィリピーノ系のダンテ・バスコ、お母さんはベトナム人。で、お辞儀。まあアジアは全部一緒だと思っているハリウッドぽい感じはした。っていうのはあったけれど、物語は面白かった。ロサンジェルスみたいな大都市で感じる摩訶不思議アジアあるある。
とはいえ、やはり黒人の視点から描かれた「Homecoming」が泣けますね。黒人にとって92年のLA暴動は初めてじゃない。1965年のワッツ暴動もあった。彼らにとっては「1965年からなんで全然変わっていないんだ!」っていう憤りがね...よく描かれていたと思います。ベテランのメルヴィン・ヴァン・ピープルズとシシリー・タイソンが泣かせます。その脇の人たちも割と色んな映画で見た親しみ深い顔ばかりで、キャスティングが素晴らしい。監督は、興味深い黒人革命映画『Drop Squad / ドロップ・スクワッド (1994)』のデヴィッド・C・ジョンソン。最後がね、暴動とは正反対に存在した非暴力を貫いたキング牧師の言葉。その意味を噛みしめる。
Riot / レイジ/連鎖暴動 (1997) (TV)(4.25点:1592本目)