続々と主要の映画賞が発表され始めましたねー。そんな大事な時期に堂々とDVDがアメリカで発売です。上手いぞ!ずるいぞ!何度も書きますが、オスカーの作品賞を取って貰いたいのが「Precious: Based on the Novel Push by Sapphire / プレシャス (2009)」。取ってくれたら黒人が製作・監督した作品で初となる快挙となるから。でも実際にオスカーの作品賞を取るのは...この「ハート・ロッカー」だと思います。私第一予想です。「プレシャス」が取れない理由が幾つかあるんですよね。それまた後ほど別の形で。
この「ハートロッカー」は批評家達に愛されている映画ですね(下の批評家チョイス賞の記事もご覧ください)。タイム誌は「ほぼ完璧」とこの映画を評してます。私はほぼ完璧とまでは思わなかったけれど、今年のトップクラスだとは感じました。「Home of the Brave / 勇者たちの戦場 (2007)」をもっと(もっともっとX10)丁寧に描いた作品です。戦争に関わった兵士たちの心の動きを緻密に描いています。どうして戦争にのめり込んでしまうのか?その描き方が上手いです。人が良くて優しくて頭が良くても戦争に行けば死んでしまう事もある。本当にプロパガンダでも何でもなく、現地の人の為に命かけて助けたとしても、子供たちに石を投げられる事もある。でも自分のやっている事を信じてやり遂げないといけない。どこまで自分の命を懸けるのか?その線引きも自分たちでやっていかないといけない。ヒーローになるつもりもない、でもやらないといけない。そういう兵士達の葛藤が見えてくるんです。とは言え、遠く離れた知らない人達の物語...とも思えない何かパワーを持ってます。主人公はアメリカ人兵士3人。私たちとは全く接点も無さそうですが、でも何となくその兵士3人と自分たちを繋ぎ合わせてくれているように思えました。彼等の経緯や葛藤を見せられたからでしょうか?同じ年位の彼等が今もあの場所で...と思うと、何だか最後は自然に涙が出ました。これまた主人公の3人が三者三様。これまでの経験や体験、境遇とかも違うし、性格も全然違う。でもその3人が同じ大変な経験を通じて繋がりあっていく。その一人が黒人であるが、そこに変に拘る事もなく、自然に同等の人として描かれているのもいい。
またベッカム少年のエピソードもいいですね。外国人同士のイザコザ。言葉や文化を超えて分かり合えたと思っていても...やはり見えない文化や国の違いの壁があるんですよね。こっちは好意があっても、分かり合えない、そして分かり難い事も沢山ある。
この映画で描かれている38日間の一つ一つの事が最後にすべて繋がるという訳ではないけれど、一つ一つの事が彼等3人のキャラクターをそれぞれ形成されていくんです。最後はそれぞれ色んな答えがあるんでしょうが、そうだよねと最後は納得です。シャワーのシーンとか最高ですね。
緊張感のある戦闘シーンばかりと言うわけでもなく、中々笑ってしまう場面もあったりとバランスもいい。それで最後にはじっくりを観客を考えさせてしまう。「戦争反対!」「ブッシュのアホ!」というプロパガンダ映画とは全然違います。そういう強烈な一方的なメッセージを取り込もうとはしてないように感じました。それよりも実際に戦場で戦っている兵士達を一生懸命真剣に描写しようとした所が、この映画に勝利をもたらしたんだと思います。
(5点満点:DVDにて鑑賞)