Willie Dynamite / 日本未公開 (1974) 639本目
前衛作家というか...えげつないというか...ドクター・スネイクスキン事ダリウス・ジェームズが書いた「That's Blaxploitation!」という本の中で、この作品は「間違いなくダントツにベストで本格的な70年代のブラックスプロイテーション映画だ」と称している。いや本当にそう思う。ほぼ完璧。「Across 110th Street / 110番街交差点 (1972)」のラストが好きなのだけど、これはその逆。でもこのラストもまた良い感じだ。
つい先月に予告した通りに元ピンプの作家ドナルド・ゴーインズの半自伝といわれる処女作「Whoreson」を読んだのだけど、あの世界がそのままこの映画になっていると感じました。私、意外と?娼婦が出てくる映画にはまってしまったりします。黒人映画じゃないんだけど、ティーンエイジャーが娼婦になってしまう「大都会の青春」という作品が、私が10代の後半位に深夜で放送されました。未だに忘れられない映画の一つです。今でもたまに気がつくとE-bayでビデオを探すんですが、中々良い感じのが見つかりません。本は割りと簡単に見つかるんですけどね。ビデオは中々。100ドル近かったり。と話がそれました。でも死ぬまでにもう一回見たいな。
この映画の勝者は絶対にコーラを演じたダイアナ・サンズの存在と、後は主役のウィリー・ダイナマイトのファッションですね。今までで見たピンプ映画の中でも一番派手!ニューヨークでピンプで一番になる事が主人公の望み。そのニューヨークの町での撮影でも、野次馬達が思わず指差して笑ってしまっているくらい派手なんです(あ、「I'm Gonna Git You Sucka / ゴールデン・ヒーロー/最後の聖戦 (1988)」で若きにきび顔のショーン&マーロン・ウェイアンズがフライガイの格好を見て指差して笑っていたのは、このパロディなのかもしれない!)。でもあのキャデラックのEL-D事エルドラドの色とか良いですよねー。内装はヒョウ柄。凄いです。笑ってしまいます。まあでもピンプと麻薬等を売ってお金を儲けている人達の違いはそこかもしれないですね。ピンプは存在を猛烈にアピールしますよね。俺は女の金でいい生活してるぞ...みたいな。所が麻薬の売人達は「American Gangster / アメリカン・ギャングスター (2007)」で描写していたように、警察の目から逃れる為に目立たないようにしますものね。
(カラーにイニシャルのWD入り!)
(この色といい形といい...芸術品ですな)
先に書いたようにダイアナ・サンズの存在が素晴らしいです。「A Raisin in the Sun / レーズン・イン・ザ・サン (1961)」ではシドニー・ポワチエの妹でアイヴァン・ディクソン演じるアフリカからの留学生と恋に落ちる女性を演じてました。期待される女優の1人だったのですが、この映画が公開される前に39歳で病気で亡くなっております。「A Raisin in the Sun」でもそうでしたが、本当に素晴らしい女優。この映画では元娼婦だが、今は娼婦を更生させるソーシャル・ワーカーを演じています。修羅場に対応出来る頭の良さと強さを持っているんですが、でも女性的な母性にも溢れている女性を演じています。この彼女の役があるからこそ、ピンプが主役でも映画として耐えられるドラマ作品に仕上がってるんです。
(後姿が切ないウィリーD)
そしてこの映画の主役を演じたのがロスコー・オーマン。何とこの映画と同時に始めた仕事が...あの「セサミストリート」。彼はエルモ等と一緒に子供に今でも一生懸命ABCを全米の子供達に覚えさせているのですよ。となると、この映画のあのラストと今のロスコー・オーマンを無理矢理結びつけてしまうと、この映画のラストは良い感じだと思いませんか?ダイアナ・サンズ演じたソーシャル・ワーカーの願いが叶ったというか。映画の中で「俺がピンプを辞めて、お前みたくソーシャル・ワーカーになれとでも言うのか?」という台詞が、胸に突き刺さります。更生出来て良かったね、と思ってしまうんです。オーマンはボールドなのですが、この頃は「ER」のベントン先生事、エリク・ラ・サ−ルに似てる気がします。後、私がご贔屓にしている「Frankenhood / 日本未公開 (2009)」のジャスパー・レッド君にもたまに似てる。真っ赤なパンツが見え隠れするジャンプスーツから銃を取り出す所とかたまらないですね。
(I'm really glad that you found the way to Sesame St.)
ウィリーを執拗に追いかける警官を演じたのがアルバート・ホール。若い。「Major Payne / デイモン・ウェイアンズはメジャー・ペイン (1995)」ではデーモン・ウェイアンズの上官を演じてましたね。ここではモスリムの警官という面白い設定。ウィリーと同じ黒人という事もあってか、パートナーの白人に色々言われたりするシーンとかがあっていい設定でしたね。またウィリーのママが敬虔なクリスチャンというのも面白い設定。しかもウィリーが実家に帰ったシーンを見ると、かなりの中産家庭。環境が悪いという訳では決してなかったんですよね。そこはドナルド・ゴーインズと被る。「Whoreson」という本では娼婦から生まれた男という設定だったけど、実際のゴーインズは自営業でいい暮らしだったし。
ライバルのピンプのベルもいいですね。ウィリーとは全くタイプの違うピンプ。もう話し方とかもスタイルを持ってます。
また絵もいいですね。ラスト付近でニューヨークの町を歩くウィリーが見つけるのが、モデルのポスター。顔に無造作にイタズラで傷がついてるんです。それを見たウィリーが考えるんですよね。あのシーンはふとした日常が人生を変えていくのを描かれていてとっても良い。
これまたJJジョンソンの才能が...「Across 110th Street / 110番街交差点 (1972)」ではボビー・ウーマックに歌わせていましたが、今回はマーサ・リーヴスの跳ねるような歌声が良いですね。
また長くなりました。まだまだ書きたい事は山ほどありますが... やっぱり面白い映画は私めを饒舌にさせますな。写真入れすぎで余計に読みにくいかな?ごめんね。
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(5点満点:DVDにて白いフワフワの帽子を被りながら鑑賞)