Dolemite / ドールマイト (1975) 1722本目
史上最高に緩い映画は史上最強に愛くるしい映画であった『ドールマイト』
あのエディ・マーフィがルディ・レイ・ムーアを演じる。そう聞いた時、正直言って驚いた。「いやいや、エディ... その前にレッド・フォックスやリチャード・プライヤーを演じて!」と私は思った。エディがプチ引退を撤回してまで挑んだルディ・レイ・ムーア映画。その映画については、また別で書くとして... その映画の題材となっているこの映画を先に。前に100本映画で書いているかもだけど、改めて。
ドールマイト(ルディ・レイ・ムーア)は、ロサンゼルスでクラブ経営をして儲けており、護衛の為に女カラテ軍団を作ったりして、結構モテていた。しかし、ライバルのウィリー・グリーン(ダーヴィル・マーティン)にハメられて、今は刑務所暮らし。クイーン・ビー(レディ・リード)が、何度も刑務所長を説得し、自分で無実を証明することを条件に出所となった。早速、女たちが手厚い歓迎でドールマイトの出所を迎える。無実を証明しようと動くが、なぜか警察たちも執ようにドールマイトの動向を見張り、嫌がらせをしてくるが...
何度でも書くけれど、『ドールマイト』は決して素晴らしい映画ではない。ブラックスプロイテーション映画のパロディ映画『Black Dynamite / 日本未公開 (2009)』でも、ガンマイクが見きれちゃうというパロディをやっていたが、それはこの『ドールマイト』からだ。全てが緩いのだ。まず、刑務所長が囚人を勝手に出所させることは無いですから!全てにおいて緩い。でもその緩さが最高に良かった。駄作と言われるダメな映画は一杯ある!でも、駄作のまま人々に忘れられて終わる映画と、そうじゃない映画っていうのが存在する。これはその後者。どういう訳か「駄作ってだけじゃない映画」として、カルト人気となったのだ。この映画の場合は、緩さが丁度良かった。ダメな映画なんだけど、ルディ・レイ・ムーアがハチャメチャで、でも一生懸命で... それが愛くるしさとなった。ダメな所が魅力になってしまったのだ。カッコいい訳じゃないけれど、何だかんだと人には愛されている。悪い人のくせに、フッドを必死に守ろうとはしている。カッコいいシャフト(リチャード・ラウンドトゥリー)とかハンマー(フレッド・ウィリアムソン)も必要だけど、スタイルもルックスも悪いドールマイトも必要だった。だって世の中には、カッコいい人だけじゃないし、そうじゃない人だって英雄とはまではいかなくても、世の中に役立つってことを証明したいものだから。そんな人たちの希望がドールマイト。だから、ラッパーたちのヒーローになった。ラッパーって割りとルックスには恵まれていない人たちが多いのもある。ドールマイトはあんな感じなのに、女にはモテるし、良い車乗っているし、クラブ経営も上手くいっている「出来る男」だ。何ていうか、今でいうIT社長みたいな感じだ。
そして『Dolemite Is My Name / ルディ・レイ・ムーア (2019)』のプロモで、出演者たちが集まってワイワイと会話している映像を観ていたら、この映画に出てくるジャンキーの話題になって、エディが「あれはルディの知り合いの本物のジャンキーだろうね。もしあの人が本物のジャンキーじゃなかったら、オスカー級だ!」と、みんなで爆笑していた。彼には役名がちゃんとついていて「ハンバーガー・ピンプ」。ハンバーガー・ピンプの残した印象は強く、後の『Menace II Society / メナース II ソサエティー/ポケットいっぱいの涙 (1993)』のチーズバーガー男に受け継がれていく訳です。で、『メナース』などをパロディにした『Don't Be a Menace to South Central While Drinking Your Juice in the Hood / ポップ・ガン (1996)』には2回も出てきましたね!
改めて『ルディ・レイ・ムーア』を観て思う。やはりこの映画の制作秘話もルディ・レイ・ムーア本人も愛くるしい。だからこんなにカルト人気となる愛おしい映画となったのだと。それにおっぱいもカラテもあるし間違いない!!
(3.75点:1722本目)
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