I Can Do Bad All by Myself / 日本未公開 (2009) 638本目
絶好調のタイラー・ペリー。この映画も全米で公開第1週目に興行成績1位を獲得。しかしスパイク・リーに噛み付かれてからは、傷ついたようで年内休業を宣言してしまいました。まだこの口論は続いていて、スパイクはまだペリーに噛み付いております。映像はこちら。「それをやってお金が儲かるのは分かるけど...」と批判されております。タイラー・ペリーは人気番組「60ミニッツ」にて、「私がやっているのは人々の声なのだ。それを取り上げないで欲しい」というコメントをしました。
私は2人共間違っていないと思うのです。色々な意見があるからこそ、人々ですからね。スパイク・リーも一理あるし、タイラー・ペリーだって一理あるんです。2人共に犯罪を起こしている訳じゃないので、どちらかが正しいという事は無いと思うのです。スパイク・リーは考えぬいた芸術肌の映像作家であって、タイラー・ペリーはストーリーテラーであり、2人が映画という物を使って目指しているゴールが全然違うんだと思うんです。
この映画でもやっぱりタイラー・ペリーが感じ取った一般の人々の声と言うのを感じました。タイラー・ペリーの映画の主人公はいつも問題を抱えた一般市民。その問題というのが普通の人にだって起こりうる問題だったりする。全く同じじゃなくてもシチュエーションを少し変えただけでも、普通の人々が共感出来る問題なのだ。今回の場合は姉妹が残した子供達。このシチュエーションを抱えてしまう人も居るだろうし、逆に病気になった家族だって同じシチュエーションになると思う。確かに物語は上手く出来ているかもしれない。特に最後はトントン拍子で進んでいくので余計に。でもタイラー・ペリーの映画で目指しているゴールは神の言葉を伝えるという事だと感じる。今回はそれを余計に感じた。聖書を読んでないとかなりぽかーんとなる台詞やジョークが今回は多いし、ましてやキリスト教信者じゃないのでその信条にもぽかーんとなるが、それでもやっぱりいい言葉は伝わってくるのです。使える部分は多い。熱いゴスペルで「Help me god on my way(神よ私の道に導いてください)」とマーヴィン・ワイナンスが汗を大量にかいて歌っていても、実際に助けてくれるのは周りに居る人達であって、それを映画でも感じるので伝わってくるのです。
今回は子供と行ったのですが、うちの子が映画を見て泣いているのを初めて見ました。その位、子供にも伝わりやすい内容・物語です。確かにお涙頂戴を狙ってきている部分も多いかな?とも感じます。でも泣いちゃうんですよね。
またこれが、タラジ・P・ヘンソンを既に主役に考えて作られたような感じも受けました。彼女にぴったりな役。冒頭のデッカイアフロのカツラとか本当に似合います、彼女には。今回はクラブシンガーという事で歌う事もあったのですが、あの声は完全にアフレコですね。別の人が歌ってます。でも口の動きが一緒なので気づかないと思いますが... 「Hustle & Flow / ハッスル&フロウ (2005)」とかで聞いた歌声とは全然違いましたから。歌声と言えば... タイラー・ペリーが舞台に戻った感じでしたね。今回は歌を大事にしていたと思います。だからこそ、メアリー・J・ブライジとかグラディス・ナイト、マーヴィン・ワイナンスをキャスティングしたのでしょうね。熱い歌が多かった。そして歌っている時のメアリー・J・ブライジがこれまた綺麗。魅力的なんです。マーヴィン・ワイナンスが熱いゴスペルを歌っている時、大量の汗をかいていたんですが、それを見たうちの子は目に涙を溜めて「凄い汗だね」とわざわざ私に言ってきたので、思わず笑ってしまいました。
でも最後の最後...ラストシーンはちょっと爆笑かな。教会を出てきた幸せなエイプリルが向かうのが... そこでメアリー・J・ブライジがまた歌うのですが... ネタバレになるので言いませんが、思わず「○○って!!」と突っ込んでしまいました。アレだけは無いな。タイラー・ペリーの映画ではあれがラストが多いですよね。やっぱり幸せの象徴なのかな?女性にとってのゴールなのかな... スタートなのに。
今回は残念ながらマディアが不発。何だか物凄く優しいおばさんになってます。台詞では笑わせてくれますが、今回は銃を振り回す事が無かった。ちょっと物足りない。でもその分、タラジ・P・ヘンソンがチャキチャキでした。ビギーとパフィーは最高でした。
私にとってはスパイク・リーの映画もタイラー・ペリーの映画も必要なんですよ。私にとっての栄養なんです。ビタミンだってAだけとってもダメだし、CもDも取らないとダメでしょ。それぞれ役割違うし。私にとっては「ケンカはやめてー、2人を止めてー」となります。
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(4.25点/5点満点中:劇場にて鑑賞)