久々に面白いドキュメンタリーでした。ナレーションがフォレスト・ウィッテカーという豪華さ。監督はLA育ちの人に拘ったようで、LAのカーソン育ちのフォレスト・ウィッテカー。監督も白人ですが、LA育ちのようです。LAは観光都市ですが、LAには観光では絶対に伝わらない部分って多いと思います。実際に住んでみて痛い程感じた事も多いです。こんな大都市なのに...と思う事も多かった。街ごとに持つ顔が違うのもですが、まずビックリしたのがブロックという小さい範囲でも大きく違っていたりします。幾度もLAの夢の街ハリウッドで題材となっているワッツやサウスセントラルと呼ばれる地域、ハイウェイに囲まれた区間でもあるのですが、用事がないのにそこでハイウェイを降りる人はまず少ない。LA市民にとってもLAを訪れる観光客等の多くの人にとって、通過点でしかないのです。ワッツやサウスセントラルとはちょっと離れているのですが、クリップスブラッズが生まれた西から東に伸びるスローソン通りにも面しているのが、イングルウッド。こちらも映画にも沢山登場してきましたね。ロサンジェルスの国際空港の近く。「Soul Plane / ソウル・プレイン (2004)」の主人公がここに住んでいる設定でした。この街に入ると急に風景が変わってくるのです。家の窓は鉄格子で覆われていて、まるでタイムスリップしたかのように古い建物が続きます。この映画では、第2次世界大戦でLAの街が工業産業で発展して、それに付随してそこに働く工場で働く人々の為の生活環境や産業も発展したと言ってました。その頃の写真も出ていたのですが、イングルウッドの建物は正にその頃と変わってない印象なんです。そこを北に抜けると急にハングル文字が多くなって韓国人街となるんです。1992年の暴動の引き金ともなった黒人少女が韓国人店主に殺された事件などもありましたね。ロサンジェルスには南部とは違って透明で見え難い差別があるように思えるんです。南部から仕事を求めてロサンジェルスに来た黒人は住む所も限られていたんですよね。その名残もあるのか、見え難い透明で覆われた人種バリアみたいのがあると感じるんです。車社会だから余計にそれも可能なんです。バスや電車だったら、その中で交わる事もあるけれど、車社会だから簡単に孤立もしちゃう。それを描写したのが「Crash / クラッシュ (2005)」という映画だったと思う。
この映画で面白かったのが60歳位??中年の3人の男性の生き様を通して見えてくるロサンジェルスとギャングの歴史。小さい頃にボーイスカウトに入れてもらえなかった、黒人という理由で。そこから人生が変わったという。確かに言い訳に聞こえるかもしれない。でもまたこの声を突き放せば同じ悪循環に陥るだけだと思う。他人は頑張れば出来るとよく言うけれど、それは彼等にとって意味のない言葉に思える。それなりに頑張っている人は多いと思う。でも世の中才能や運のある人ばかりじゃないのが現実だと思う。そして悪循環に陥った人にしか分からない現状もある。とは言え、頑張ってない人達がいるのも現状。周りの環境に流された人がいるのも現状。環境の悪い中、ファッションやスタイルに拘る人もいる。そのファッションやスタイルを理解出来ない人達も多い。でも彼等の価値観の中では、ファッションやスタイルこそが全てだったりする場合もある。社会に出ればその価値観に合わせないといけない時もある。でも彼等に言わせれば価値観の押し付けでしかない。それは音楽とかにも同じ事が言えると思う。
これを見ていて思い出した人達がいる。以前にコンプトンの会社から来てもらって我が家で仕事をしてもらった事があります。今まで同じ仕事を日本でもやってもらった事があるし、アメリカの別の地区の人にもやってもらった事がある。そのコンプトンから来たオジサンと若者2名は今まで来てもらった中で第2位の仕事ぶりでしたね。日本人の2人組みが1位。でも他の日本の会社はこのコンプトンの会社よりもダメな所が多かった。でもそのコンプトンのおじさんは私を使うのが上手かった。褒めて褒めて私を使うのです...(笑)あれ、私使われてる??みたいな。でもまあ彼等みたいに頑張って普通に仕事している人の方が多いとも思う。私が聞いたのは今はブラッズ対クリップスというよりも、ラティーノギャング対黒人ギャングと聞いた。ラティーノの縄張りに普通の一般黒人が足を踏み入れただけで撃たれるとか?実際に一般の黒人の女の子が撃たれた事件もあった。ラティーノギャング対黒人はこちらで。
製作をしたのがNBA選手バロン・デイビス。生まれも育ちもロサンジェルス。大学も地元のUCLAに進む程。プロでは色々と動きましたが、最終的に今はロサンジェルス・クリッパーズ。うえっさい!な男。何を言われてもいい、この映画を作りたかったと言ってました。そしてギャングのコーディネーターとしてボー・テイラーが参加しています。監督も随分とこの方にお世話になったそうです。ボー・テイラーについては、Time誌の記事に詳しいのを見つけました。ここ。
今、クリップスもブラッズもターニングポイントなのかもしれないと思いました。80年代の全盛期に過ごした人達が、もう良い大人となって自分達の子供がその昔の自分達と同じ年頃となってる。変わったんですよ、時代もギャングも。
長くなりました。でも本当に見入ってしまう映画でした。昨日は何かちょっと怖くなったので、電気消せませんでした...その位緊迫した映像も多かったです。この映画が気に入った方は、「Bastards of the Party / 日本未公開 (2005)」もあわせてどうぞ。元ブラッズのクレ・スローアンの作品。同じくLAギャングの歴史を追ってます。
感想はこちら。
(5点満点:DVDにて鑑賞)