いやー、この映画を作ったジーン・バックというお婆さまにパワーを頂いたような作品です。是非、特別版のDVDで見てもらいたい作品です。この方の熱意は素晴らしい。何歳なのか分からないですが、多分フラッパーと呼ばれる時代に生きた女性かもしれませんね。話し方は落ち着いていてとってもクールなんですが、目からパワーを発してました。映画作りに関しては全くの素人という事ですが、この作品はアカデミー賞のドキュメンタリー部門にノミネートされる程でした。カッコいいです。
映画は1958年に撮影された1枚の写真を巡る秘話や思い出話を語っています。その写真が右の写真(小さくてごめんなさい)。この写真に納まっているのが、ニューヨークのジャズミュージシャン達。このドキュメンタリーを見ていて面白いなーと思ったのが、同じ楽器の演奏者達が割りと近くに固まっているという事。撮影秘話によれば、みんなそれぞれ話していたという事なので、やっぱり音楽関係の話をしていたんでしょうね。なのでせっかくの写真の中でも、横を向いていたり、ディジー・ガレスピーにいたっては舌を出していたり(私のお気に入り)とみんな自然体でいいですよね。また思い出話によれば、セロニアス・モンクはメリー・ルー・ウィリアムスというピアニストの女性が好きだったので、写真でも隣で写っていたりするんです。写真の中でも仏頂面のチャールズ・ミンガスは、みんな気難しかったと口を揃える程。カウント・ベイシーは疲れてしまって子供達と一緒に座ってたりします。子供達と帽子を取り合って遊んでいたそう。ウィリー・”ザ・ライオン”・スミスは撮影に訪れているが、疲れてしまって隣の階段で休んでいたので、最終の撮影には写ってなくて、写真が発表された「エスクァイア」誌では居ない事になってます。また時間に間に合わなくて写ってない人も沢山いたりします。
特別版のDVDで見てもらいたいと書いたのには理由があります。ボーナス特典では、「Copycat」というコーナーがあって製作者のジーン・バックが集めた「A Great Day in Harlem」を真似た写真を紹介しています。ハリウッド版だったり、カンザスシティだったり、ニュージャージーやベイエリアだったりと色々。最近ではヒップホップアーティストが雑誌で真似た写真もあって、それも紹介していました。いずれも興味深い写真ばかり。そして、別の特典映像ではあの写真に納まっている人達で、同じ場所に集まって撮った写真もありました。残念ながら亡くなっていたり居場所が見つからなかったりして、前に座っていた少年も合わせて今は3人だけでした。その舞台となったアパートも今では閉鎖されていて窓にはベニアが張っていたりと悲しい雰囲気でした。そう思うと、この映画はガレスピーやアート・ブレイキー等のインタビューがあって良い時に製作したなって思えます。若いカメラマンだったアート・ケインですら亡き人となっていますし... びっくりしたのが「クレイマー、クレイマー」の監督ロバート・ベントンが美術監督をしたという事。後はアート・ブレイキーが晩年も3人のガールフレンドの所を行ったり来たりしていたので、中々居場所を掴めなかったらしい。凄いわ。
感想はこちら。
(4.75点/5点満点中:DVDにて鑑賞)