勢いで。なんかこの映画とはあんまり縁が無かったんですよね。公開されたタイミングとか色々と。
多分好きな人が多いと思います。よくよく考えて見たら、私が好きなフランス映画は「大人は判ってくれない」だけなんですよね。他にも有名なのは見ていますが、心には響かず。メルヴィン・ヴァン・ピープルスの「The Story of a Three-Day Pass / 日本未公開 (1969)」もフランス映画ではあるけれど、アメリカ人が撮っているのでやっぱり違うし、ウスマン・センベーヌのはセネガルだし、「Sugar Cane Alley / マルチニックの少年 (1983)」はマルチニックだし。フランス人によるフランス映画は私にとって手ごわいのかも?最近のリュック・ベンソンとかは大丈夫ですけど。
フランスという国は、フランスという国を誇り高く思っている人が多いという印象というか、英語で現地の人に話すと煙たがられるというのを何度も聞いた事がある。それは親の代からのフランス人であって、私が心響かなかったフランス映画の主人公がそうであったんだと思う。アメリカでは黒人やそれ以降にアメリカに渡った移民たちの存在が無視されているように、フランスでもそうであったのだろう。今回は移民2世達が主役。しかもバックグランドが3人3様。アラブ系、アフリカ系、ユダヤ系の3人。その移民2世達がアメリカに目を向けているというのが非常に面白かった。台詞でもニューヨークがとか、アメリカがとか出てくる。しかもユダヤ系の男の子は、映画「タクシードライバー」のロバート・デ・ニーロの有名な台詞を真似しているのが登場シーン。監督は他にもアメリカに影響を受けたのが分かるように、わざとスパイク・リーがよく使う撮影技法を用いているのも面白い。しかも作品をモノクロで撮っているのも、スパイク・リーの「She's Gotta Have It / シーズ・ガッタ・ハヴ・イット (1986)」とかジム・ジャームッシュの「ストレンジャー・ザン・パラダイス」とかのニューヨーク大映画科を出た映画人達を思わせる。私的には何気ない日常をモノクロで撮っているという点で「Killer of Sheep / 日本未公開 (1977)」を思い出すんですが、それはきっと偶然だと思います。スパイクとかジャームッシュ系を撮りたかったんだと思う。でも音楽がメインストリームでポップな感じで脱力しますが、そこがやっぱり影響されているとは言え、本国と他国の影響度の違いなのかなーと思って面白かった。
みんなそれぞれのバックグランドを持っているのに、全然そっちには目が行かないのも興味深い。彼等の故郷の文化を感じる事も全然ない。移民2世ともなると、全然違ってくるんでしょうね。祖国フランスにだって背をそむけてるんです。しかもタイトルの「憎しみ」は雇用機会や地域政治をしっかり出来ていない政府に向けられるべきなのに、彼等にとっては身近な存在である警察に向けられている。もちろん今回の物語のきっかけとなったのは警察なんですけどね。憎しみからは憎しみしか生まれない。絶望的なんですよね。絶望的と言えば、若い男の子が主人公なのに誰も夢を語らない。唯一、一番しっかりとしていて地に足がついたアフリカ系のユベールが「プロジェクトから出たい」というだけ。夢や希望もないのに、アラブ系のサイードが看板にあった「世界はあなたのもの」を「世界は我々のもの」に変える。で、ラストがあれでしょ?もう絶望的。映画としてはその絶望さが最高ですけど。
何気なさが粋。トイレのおじいちゃんの話しとか、電車に2人もホームレスが乗っていて物乞いされるとか、いきなり街に牛とか... スクリーンに映る映像も粋でしたね。こだわりが見えました。
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(4.5点/5点満点中:DVDにて鑑賞)