Scott Joplin / 日本未公開 (1977) 1830本目
スコット・ジョプリン。作曲家。ラグタイムの王。なのだけど、彼の名前を知らなくても、日本人でも99.9%の人が彼の作った曲を知っている。本当は100%と書いてしまってもいいくらいなのですが、たまーに頑固で天邪鬼な人が「知らないし」とか意地を張るので、保険で99.9%。音楽に全くセンスのない私は、その音程をカタカナ化するセンスもないのですが、タタ、タタタタッターという(絶対違う)「ジ・エンターテイナー」でお馴染みです。これまた「ジ・エンターテイナー」という曲名は知らなくても、この曲は確実にどこかで聞いている。映画『スティング』でアカデミー編曲・歌曲賞を受賞している。もう、その頃にはスコット・ジョプリンは他界していて50年以上経っていた。私のカタカナでは分からないと思いますので、ここでどうぞ! 本人演奏!! 普段聞いているのより速い。本作は、そのアカデミー編曲・歌曲賞受賞後に、『スター・ウォーズ』に出演する直前のビリー・ディ・ウィリアムズが主演で、モータウン・レコードによって制作されたテレビ映画です。ちなみに鑑賞後、久々に伴野準一さんによる名著『スコット・ジョプリン 真実のラグタイム』を再読しました。ミンストレルなどにも触れていて勉強になります。
19世紀の終わりごろ、アーカンソー/テキサスという2つの州が入り混じった街テキサカーナで、父はバイオリン、母はバンジョーと歌という音楽一家で育ったスコット・ジョプリンは、ピアノ演奏を楽しんでいた。いつしか父がいなくなり、母1人で奮闘していたが、その母が亡くなり、ピアノレッスンができなくなり、幼いながらも働きに出て成長したスコット(ビリー・ディ・ウィリアムズ)は売春宿でピアノ演奏していた。同じくピアノ弾きのルイ・ショーヴァン(クリフトン・デイヴィス)に出会い、2人は意気投合してミズーリ州セダリアで行われる賞金をかけたコンテストに出ることにする。そこで出会ったのが、楽譜出版をしているジョン・スターク(アート・カーニー)だった。
ちなみに本の中では本作について触れていないが、伴野さんは御覧になっているのだろうか? なんて思うのだろうか? カットされている部分は多いけれど、本で読んだ通りのスコット・ジョプリンだった。ビリー・ディが演じたスコットは、寡黙で殻に閉じこもった人という印象。本にも「ジョプリンは控え目でもの静かな男だった」とあるが、そのまんま。ジョークを言っても笑ってくれなかったらしい。写真のスコット・ジョプリンも笑っていない。目がマジだ。ビリー・ディのスコットは、気難しいアーティスト気質ぽさがとても出ていた。ビリー・ディは、反対の明るくて軽快な男もやっているので、ちゃんと役作りをしたのだと感じた。そしてルイ・ショーヴァン演じたクリフトン・デイヴィスもとても印象に残る演技だった。そしてラグタイムといえば、ユービー・ブレイクということで、大事なピアノカッティングのシーンで審査員として登場しております。他にもタジ・マハールとかモータウン制作なのでライオネル・リッチーのコモドアーズも出演しています。
物語も、モータウンぽく甘酸っぱい。スコット・ジョプリンとルイ・ショーヴァンの物語はとても甘酸っぱい。悲劇が沢山つまっているが、実際にはもっともっと酸っぱかったと察する。悔しさがあったから、最後は頑なになった。だから余計に切ない。その切なさがラストに、そして時代に翻弄された天才コンポーザーの生き様が役者たちによってよみがえり、目いっぱい詰まっていた。
(9/17/2022:4.5点/5点満点中)
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