Sylvie’s Love / シルヴィ~恋のメロディ~ (2020) 1786本目
描いているものは恋愛だけでない深い『シルヴィ~恋のメロディ~』
50年代のハーレムのレコード店を舞台にしたラブストーリー。と、聞いただけで、もうこれは私の好きな感じなんだろうと思っていた。しかも、相手役の男性の方がジャズミュージシャンという設定。嗚呼、もう絶対にいい感じの映画になるじゃないですか! しかも、しかも、演じるのはナムディ・アソムハ。元NFL選手で、ケリー・ワシントンの夫で、『Crown Heights / 日本未公開 (2017)』では最高の友人を演じ、そして滅茶苦茶ハンサム。しかも、しかも、しかも、テッサ・トンプソンが主役のシルヴィ役。これだけ揃ってダメになる筈がない!!! と、鼻息荒くなりました。期待が大きい分、アレな時もありますが、これは...
シルヴィ(テッサ・トンプソン)は、劇場のロビーで誰かを待っていた。サックスのジャズ・ミュージシャンであるロバート(ナムディ・アソムハ)は、レコーディングをしていた。その後、シルヴィは劇場の外を歩くロバートの姿を発見する。遡ること5年前、レコード店の軒先で求人広告が目に入ったロバートが店内に入ると、シルヴィがテレビに夢中になっていた。気を引くためにセロニアス・モンクのアルバムがどこにあるが聞くが、またすぐテレビに夢中になってしまう。ロバートはモンクのアルバムを買い、求人広告について聞くが「誰も雇っていない」とシルヴィに言われてしまう。しかし、それを聞いていたシルヴィの父(ランス・レディック)から雇われる。ちぐはぐな2人だったが次第に心を通わせていくが...
結論から書いてしまうと、期待が大きくても裏切らないタイプの作品でした! 恋愛だけでなく、時代、音楽とその時代の移り変わり、そして女性の社会進出、それによる家庭での問題、恋愛だけでない色々なサブテーマがあって、それも見事に回収しているのが素晴らしい。一番のお気に入りの部分は、女性の社会進出の部分。シルヴィが頑張っていくところが良い。そういう部分をしっかり見せていて、主となる恋愛ドラマの部分ではちゃんと観客をウットリさせてくれる。そして、シルヴィの友人が時代と共に公民権運動に傾いていたりするので、『フォレスト・ガンプ』のフォレストとジェニー、『The Butler / 大統領の執事の涙 (2013)』のセシルとルイスのように2つのアメリカ史を知ることになる。そしてロバートを通じてジャズの歴史を垣間見たりで、音楽・社会・アメリカの時代の移り変わりを知る。
恋愛ドラマだけの映画じゃないなんて簡単に書いてしまいそうになるけれど、2人の恋愛を描くには、2人が歩んだ人生そのものを描くべきであり、この2人にとって時代こそが彼らの人生であり、彼らの恋愛だった。この映画は皆が思っているよりも深い。そして遥かに美しい。
(5点満点:12/27/20:1786本目)
Sylvie’s Love / シルヴィ~恋のメロディ~ (2020)