Sorry to Bother You / 日本未公開 (2018) 1647本目
お忙しい所恐縮ですが...『Sorry to Bother You』
「お忙しい所恐縮ですが...(Sorry to Bother You)」テレフォンアポイント(通称テレアポ)が多用する言葉。そんなテレアポの世界と現実社会を上手くミックスしながら描いた作品。「The Coup」のブーツ・ライリーによる初長編映画監督作品でもある。2018年のサンダンス映画祭にも出展したが、残念ながら受賞はならず。主演は、『Get Out / ゲット・アウト (2017)』のような話題作から、主演作の『Crown Heights / 日本未公開 (2017)』、更にはTVシリーズ『Atlanta / アトランタ (2016-Present)』にと大活躍中のラキース・スタンフィールド。共演は『Selma / グローリー/明日への行進 (2014)』にてスタンフィールドと共演しているテッサ・トンプソン。『Fruitvale Station / フルートベール駅で (2013)』を成功させているフォレスト・ウィッテカーがプロデューサーとして参加。そして『Fences / フェンス (2016)』や『Mudbound / マッドバウンド 哀しき友情 (2017)』を成功させて、現在メキメキとプロデューサーとして業界で存在感を出しているチャールズ・D・キングもプロデューサーで参加。
カリフォルニア州オークランドで叔父(テリー・クルーズ)の車庫で寝泊まりしているカシアス・グリーン(ラキース・スタンフィールド)。恋人のデトロイト(テッサ・トンプソン)とは上手く行っていたが、定職についておらず、叔父からも家賃を請求されていた。リーガル・ビューという会社のテレアポの仕事を友人のサルヴァドール(ジャーメイン・フォウラー)に紹介してもらって、雇われた。最初は全く上手くいかないカシアスだったが、隣に座っていたベテラン・テレアポのラングストン(ダニー・グローヴァー)から「”白人の声”を使うと良い」というアドバイスを受け、試してみた所、それで大成功を収めるようになっていた。リーガル・ビューの下の階のテレアポから、上の階で特別優遇されるテレアポに昇進するカシアスだったが、下の階のテレアポであるスクイーズ(スティーヴン・ユァン)が労働組合を設立し、サルヴァドールやデトロイトもそちらに参加し...
『ゲット・アウト』のようなシニカルな笑いや皮肉がたっぷりの作品。『ゲット・アウト』がとても分かりやすい物語だったが、それにフライング・ロータスの『Kuso / Kuso (2017)』的なグロテスクな世界を非常にまろやかにした感じで、その二つの作品の真ん中に位置するような感じで描いた皮肉たっぷりの作品。余りに独特だと観客には伝わりにくいけれど、それがこの映画にはない。独特なんだけど、割りと伝わりやすいメッセージ。でも視覚的にもメッセージ的にも独特でユニークで面白い。そんなブーツ・ライリーの独特な世界にラキース・スタンフィールドとテッサ・トンプソンが非常に馴染み、2人は上手くライリーの世界観を表現している。そして『君の名前で僕を呼んで』のような繊細な映画に出演しながら、この映画では悪役を演じているアーミー・ハマーには驚く。凄い悪い人!『君の名前で僕を呼んで』とのふり幅に思考回路がとまるよ。
ちなみにこの映画に出てくる「白人の声」、黒人同士の会話にも良く出てきます。黒人にとっての「作り声」。『Bad Boys / バッド・ボーイズ (1995)』でも、ウィル・スミスとマーティン・ローレンスが豪邸に侵入する時に、ウィルがお邪魔しますと言ったあと、マーティンが「お前の声にはベース音が効きすぎで、白人を怖がらせちゃうぞ!」って怒るシーンありましたよね。声質だけでなく、言葉遣いとかも含めた「白人の声」。社会に馴染む為に仕方なく作る声だけど、黒人同士となると「お前、何白人ぶってるんだ?」と言う意味でもある。こういう黒人社会と白人社会の微妙な違いの面白さのある映画。
Sorry to Bother You / 日本未公開 (2018)(4.5点:1647本目)