Cocaine Bear / 日本未公開 (2023) 1846本目
"With nothin' to gain, except killin' your brain"
この映画の存在は、全米が熱中してしまうのでCM料が一番高くなるNFLスーパーボウルのCMで予告編が流れて知った。この予告CMが我が家でスーパーボウルで一番盛り上がった瞬間でした。単純明快な「コカイン・ベア」というタイトル。コカインの熊。シンプルなのに意味が分からない。流れている予告からは、史実に基づくという。余計に混乱する。なんでも、コカインが全盛期の80年代に実際に起きた事件でコカインを吸った熊がいたらしい。弁護士でありながら悪名高い麻薬密輸をしていたアンドリュー・C・ソートン・二世が、麻薬を積み過ぎで重くなった機体から、コカインをジョージア州の林に投げ捨てたところ、生息していた熊がそれを吸っており、見つかった時の身体はコカインまみれだったという(実際には少量しか吸っていないとも)。と、ここまでウィキ情報( ̄ー ̄)ニヤリ。
1985年、アンドリュー・C・ソートン・二世(マシュー・リース)は、飛行機から軽快にコカインの塊を外に投げていた。墜落していく機体から自分はパラシュートで脱出しようとする。それから... ジョージア州のチャタフーチー=オコネー国有林でハイキングをしていた結婚予定のカップルがいた。結婚準備の話をしながら幸せそうに歩いていたが、熊に遭遇してしまう。その熊は、異様にハイパーだった。一方、チャタフーチー近くに住むディー・ディー(ブルックリン・プリンス)とヘンリー(クリスチャン・コンベリー)は学校をサボって林にある滝を目指していた。そして、セントルイスの麻薬王シド(レイ・リオッタ)は、大量のコカインが林に捨てられてことを知り、息子のエディ(オールデン・エアエンライク)とダヴィード(オシェア・ジャクソン・Jr)を林に送り込んだ。そして、その事件を知ったボブ刑事(アイゼイア・ウィットロック・Jr)がシドたちを逮捕できるかもと林に向かう。林には、安全を守る森林警備隊員(マーゴ・マーティンデイル)と森林を守る会のピーター(ジェシー・タイラー・ファーガソン)がいたが、最近「ドゥチャンプ・ギャング」を名乗る若者3人組に頭を悩ませていた。そして、娘のディー・ディーが学校をサボっていることを知った母(ケリー・ラッセル)が探しに向かった。そんな風変りな人々を林で待ち受けていたのが...
大事なことなので先に書いておこう。史実は最初のアンドリュー・C・ソートン・二世と舞台の林と熊の部分だけである。あとは、フィクション。「史実に基づいた」映画の中なのだが、その90%がフィクションというのも珍しい。
冒頭から最後までとても80年代。冒頭から期待通り。あのハチャメチャだけど、底抜けに明るい、というかバカな感じが最高です。監督は、女優として活躍しつつ監督もこなすエリザベス・バンクス。冒頭の曲、エンディングロールの曲、そして『ET』のオマージュとか、とてもシンプルで分かりやすい。☝のプロット説明文が長くなってしまったけれど、それだけ色んなキャラクターが登場する。しかも全員濃い。でもそれぞれキャラが立っているので、分かりにくいことはない。そういうキャラクター付けもシンプル。そう、この映画は実にシンプル。だけれど、とても笑わせてくる。ボブ刑事役のアイゼイア・ウィットロック・Jrには、「Sheeeeeee-it」という十八番セリフがあるが、今回はそれ以上にシンプルなセリフで笑わせてくれる。マーゴ・マーティンデイルのキャラクターは、すごく頑張っている、色々と。個人的には、救急のアジア人女性のメイクに笑った。80年代「ハリウッド映画の」アジア人女性ぽさがある。これだけ濃いキャラクターがたくさん出ているので、必ず気に入るキャラがいる筈だ。と、ここまでコメディ調で書いたが、ホラー映画でもある。笑えるところは沢山あるのだが、エグイところもあるので、苦手な人は気を付けて欲しい。ホラーコメディながら、80年代に愛を捧げつつ面白く風刺したり、現代を痛烈に茶化して風刺する巧さと笑いがある。
レイ・リオッタは本作が遺作の1本となってしまった。彼のお陰で主役であるクラック・ベアが途中で変化していくのが分かる。クラック・ベアが変わっていくというより、我々の気持ちが変わっていくのである。そういった面白さも意外にもある。単に史実に基づいただけでなく、想像豊かなフィクションだったからこそであろう。主役のベアを含め、濃いキャラクターたちがキメキメなのだ。
(4.25点/5点満点中)