Shaft / シャフト (2000) 1695本目
2000年版『シャフト』の意味をやっと理解した瞬間
哀れな私をお許しください。この映画公開時、私は全くと言って良い程理解していなかったように思います。今回、『Shaft / 黒いジャガー (1971)』から順番を追ってしっかりと再見してようやく私の間違いに気づきました。その間違い、今回キッチリと正させて頂きます!ジョン・シングルトン監督、大変申し訳ございませんでした。そして、私の間違い、シングルトン監督存命中に気づけていたら... もっともっと…もっと長生きして欲しかったです。
夜、NYの街にパトカーの音が鳴り響き、ジョン・シャフト・II(サミュエル・L・ジャクソン)が現場のバーに到着した。現場検証を開始し、目撃者である筈のバーテンダーの女性ダイアン(トニ・コレット)と話すが何もしゃべらず埒があかない。しかし彼女の顎に血がついていることに気づく。別の女性の証言で、バーに居たウォルター(クリスチャン・ベール)が捕まり、そしてダイアンは忽然と消えた。ウォルターの裁判が始まるが、彼の裕福で権力のある実家が保釈金を払い、そしてスイスへと逃がした。2年後、戻ってきたウォルターを逮捕したシャフト。その留置所でウォルターはヒスパニック系麻薬元締めピープルズ・ヘルナンデス(ジェフリー・ライト)と出会う。そしてウォルターはまたもや保釈金で自由になる。苛立つシャフトは警察を辞職してでも、ウォルターを執拗に追っていくが...
公開時、実は「あんまり面白くないな」って思っていたのです。やっぱりサミュエル・L・ジャクソンはどう見てもセックスシンボルじゃないので、ジョン・シャフトではないと。でも今回オリジナルから再見で通して見て、それで正解だったんだと、やっと気づけた。この映画でもオリジナルのジョン・シャフトを演じたリチャード・ラウンドトゥリーがジョン・シャフトとして登場する。そうなのだ。ジョン・シャフトが演じられるのはリチャード・ラウンドトゥリーだけ。それを分かっていたから、ジョン・シングルトン監督はサミュエル・L・ジャクソンをジョン・シャフト・IIにした。しかもIIだから2世という意味ではあるが、シングルトン監督は単純にジョン・シャフトの息子と設定しなかったのも上手かった。ジョン・シャフトという男は、結婚もしなければ、子供を作ることはしなかっただろう。その仕事と共に心中する覚悟があった男である筈である。いつ死ぬか分からないギリギリで生きていた男だから、子供や妻を遺すということはしなかっただろう。その設定だけで、私は泣いた。勝手な解釈かもしれないが、私は泣いた。オリジナル『黒いジャガー』10作品見続けた後だからやっとそれに気が付けた。公開当時の私にはそれが瞬時に読み取れるほど大人じゃなかったのだ。許してください、ジョン・シングルトン監督。だからこそジョン・シャフト・IIは、サミュエル・L・ジャクソンのオリジナルキャラクターとなった。口数少ないリチャード・ラウンドトゥリーのジョン・シャフト・Iとは全く違う、それこそジャクソンの十八番であるマザーファッカーの叫びが炸裂するシャフト。元々色気の無いジャクソンなので、セックスシンボルな部分も排除させた。時代もセックス=パワーとかいうそんな時代じゃないから。70年代だったら、ヴァネッサ・ウィリアムス演じたカーメンとのベッドシーンもあったことだろう。でも今はそんな時代じゃない。カーメンとは相棒として同等に協力し合う。
そして、『黒いジャガー』では幾度となく対立したシャフトと警察。警察をも出し抜き、コミュニティの為に奮闘した。今回はそんな警察の一部となっていたシャフトだが、いずれそんな所とは決別する様を描いているのも良い。アクションシーンは銃アクションとカーチェイスが主だが、シャフトらしい渋さがあった。
そう、2000年ジョン・シングルトン版『シャフト』は時代に合った面白いれっきとした『シャフト』だったのだ。2000年に作られた意味を感じた。そういう時代背景の違いがあることで、それぞれの監督・主演が時代を紡いでいっているのも分かる。2019年版も同じように感じられるのか...今回こそはしっかりと見届けたい。
(4.5点:1695本目)
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