Blackbird / 日本未公開 (2014) 1416本目
おススメする劇きゅーーーーーんとする恋愛映画『Beyond the Lights / 日本未公開 (2014)』は本来ならば、『Blackbird』というこの映画と同じタイトルになる筈だった。主人公の女性歌手が小さい頃から歌っていたのが、ニーナ・シモンの「Blackbird」だったから。けど、この映画とタイトルが被っている事が分かった為か、急きょあちらは変更。こちらが『Blackbird』タイトル戦争に勝った。あちらは全国公開された映画で力関係で言ったら、あちらの方が強そう。でもこちらは同タイトルの小説があったから勝ったんだと思う。という訳で、ラリー・ダップルチャンという同性愛者が書いた小説の映画化を、パトリック=イアン・ポークという同性愛者の監督が制作した青春映画。
舞台はミシシッピー州ハティスバーグ。州都でもなく小さな町。ごくごく普通の南部の小さな町である。そこで高校に通っているのがランディ(ジュリアン・ウォーカー)。話し方や仕草が見るからにちょっと乙女ぽいが、自分はゲイではない!と言い張っている。そんなランディは、時々夢を見る。大抵は、同じ高校に通うトッド(トレイ・ラマー)にキスされるのだ。トッドはフットボール選手で、牧師の娘レスリー(D・ウッズ)と付き合っている男。トッドに好意を抱いているので、その夢を見るたびにランディはシーツを汚してしまうお年頃である。けれど、俺はゲイじゃない!ランディはいつもつるんでいるエフレム(ゲイリー・L・グレイ)とクリスタル(ニッキー・ジェーン)、そしてトッドとレスリーと共に演劇をしている。そして教会では、クワイアでリードを担当している。毎日お祈りは欠かさない敬虔なクリスチャン。母(モニーク)からそのように躾られたのだ。その母は今神経を病んでいる。娘が6年も行方不明なのだ。父(アイゼイア・ワシントン)もたまに様子を伺いには来るが、ほぼ不在である。そんな中、ランディはオーディションを受けて、新しい劇に参加する。そこでマーシャル(ケビン・アレッセ)という年上の男に出会うが...
もうランディを一目見ただけでゲイだろうなとは思ったが、否定するのが面白かった。そしてなるほど、最初はこのように悩むのか!と思いましたね。自覚して、アイデンティティが芽生えるまでには時間を要する。その部分の苦悩を青春映画ぽく描いた作品。ゲイじゃない!と思っているから、試しにクリスタルとやっちゃうのも面白い。で、やった後にランディ号泣って!!笑った。クリスタルより乙女。軽く出来る子と、軽く出来ない子が居るよね。ちなみにクリスタルもバージン。でも酔った勢いで知らない男にロストバージンするよりは、親友のランディの方がマシ!とやってしまう。訳分からないでしょ?良いよね、そういう所。その辺のやりとりが若者ぽくて羨ましかった。
以前、同性愛者への差別的な発言で俳優生命終りかも?という勢いでバッシングを受けたアイゼイア・ワシントンも参加。この映画では、プロデューサーまでしている。手放しに賛成!!とは言わないまでも、ゲイ(かもしれない)息子にソコソコの理解を示している。家には居ないけれど、程よい距離感。でも息子にとっては足りていない愛情。上手い。アイゼイア・ワシントン上手すぎる!ユーモアたっぷりで最高でした。この人のセリフが全部面白かった。
で、逆に全然理解していないのが、母。しかも妹の行方不明で神経はズタズタ。教会が唯一の救い。牧師もそれを知っているから、すごく協力的。ゲイ(かもしれない)息子は罪を犯していると思っている。そんな罪を犯している息子のせいで、妹が行方不明という犠牲を私たちは払わされているのだ!と。そんなひどい事を平気で本人にも言ってしまう。という事で、『Precious: Based on the Novel Push by Sapphire / プレシャス (2009)』の時と同様に毒親を演じている。オスカー獲得して、相当数の出演依頼が来ていると思うけれど、あれからのモニークは役選びにとても慎重。色んな映画に飛びつかない。この映画ならまた自分が発揮出来る!と思ったのも良く分かる。
中々だったけれど、最後に急いで畳んだ感があった。大団円過ぎたね。もうちょっと丁寧に畳んで欲しかった。ってか、分かってたよ!もう!!最初の一コマ目から!!それにしても『Blackbird』というタイトルは、やっぱりあちら『Beyond the Light』の方が合っていたと思います...
(3点/5点満点中:10/11/15:DVDにて鑑賞)