タイトルのフリーダム・サマーとは、1964年ミシシッピー州に全米の大学生が集まり、ミシシッピー州の黒人投票登録率を上げるために活動した事を、そのように呼んでいる。この運動を指揮したのは、SNCC(学生非暴力調整委員会)。その中からボブ・モーゼスが代表としてミシシッピーにやってきた。『Selma / グローリー/明日への行進 (2014)』などで描かれたアラバマ州セルマとの同時進行だったのもあって、こちらは割りと余り知られていない。しかし、『Mississippi Burning / ミシシッピー・バーニング (1988)』や『Murder in Mississippi / マーダー・イン・ミシシッピ/炎の十字架 (1990) (TV)』などで描かれた3人の活動家がミシシッピーのネショバで殺された事をきっかけに注目される。キング牧師もその時にミシシッピーを訪れている。その時の映像が『Mississippi State Secrets / 日本未公開 (2002) (TV)』で見れるのですが、キング牧師は「今この瞬間、私を囲んでいる人の中に殺人者がいると信じてますがね」と発言している。なぜキング牧師がそのような発言をしたのか?
そう、ミシシッピーは州民が払う税金を使って黒人をスパイする「ミシシッピー主権コミッション」なんていうものが存在した。州がお金を払ってクー・クラックス・クランの代わりをやっていた訳ですよ。州のお偉いさんから警察・保安官までが、その団体に居たので、まあーーー大変でした。その団体だけじゃなく、「市民評議会(Citizens' Councils)」なんていう団体もあった。その前年度になる1963年にミシシッピーのNAACPの代表メドガー・エバースが自宅前で暗殺した犯人が、その市民行議会の男。犯人は1994年に再審されるまで野放しになれていたんですよ!という事でも分かるように、両者がいい感じで協力しているので、無敵。黒人は黙っているしか方法は無かった。もちろん普通にクー・クラックス・クランもいる訳ですよ。
そこでSNCCは、全米から大学生を集めてミシシッピーに送る事にした。その頃にはテレビ中継などがあったのもあって、全米の学生が公民権運動に関心を持っていたのだ。実際に物凄く集まった。人種に関係なく。しかし最初は集まったボランティア内でも人種摩擦みたいのがあったらしい。しかしそれを乗り越えて、彼等はミシシッピー全州に隈なく配置される。しかも彼等の多くが黒人宅に滞在する事になった。北部から来た白人大学生たちが、一般の黒人家庭で過ごす事になったのだ。ミシシッピーは、南北戦争後は一番貧しい州として知られている。その底辺で生活している黒人の家はそれ以下である。しかしその経験が大学生たちと黒人との間に友情を生んだのだった。そして大学生なので、近所の黒人の子供たちを集めて「フリーダム・スクール」を設立。
フリーダム・サマーに参加していた当時の学生がインタビューに答えている。女性は口々に「(白人住民から)性的な嫌がらせを受けたわ」と話す。彼等は「黒人とやったのか?」とか「黒人はでかかったか!」などと聞いてきたという。最低ですよね!そして、とある女性は、手首を縄で縛られてしばらく車で引きずられた事もあったそうだ。
このフリーダム・サマーのきっかけになったのが、コメディアンで活動家のDick Gregory / ディック・グレゴリーだったのが興味深い。彼が自家用飛行機を飛ばして、ミシシッピーの貧しい町に食料を運んだ。それが注目を集めたので、活動家たちは「それを夏中やらねばならない」と、フリーダム・サマーを思いついたそうだ。
そしてここで描かれたファニー・ルー・ヘイマーvsアダム・クレイトン・パウエル・ジュニアが非常に面白い!ヘイマーはミシシッピーの地元の女性活動家、パウエルはNYの著名政治家。女優たちとの浮名でも有名。
この映画では先日他界したジュリアン・ボンド氏がインタビューに答えております。安らかに。いままでありがとうございました。
(4.5点/5点満点中:8/21/15:DVDにて鑑賞)