Black is... Black Ain't / 日本未公開 (1994) 1246本目
最近こっち系の映画ばかり見ている気もしないでもない。この前観た『Paris Is Burning / パリ、夜は眠らない。 (1990)』は、80年代後半のLGBTのサブカルを描いたドキュメンタリー。こちらは90年中期のLGBTと黒人コミュニティを描いたドキュメンタリー。どちらもその世界が色濃く捉えられているけど、全然違うタイプ。この映画を撮ったマーロン・リッグスは学者で映画制作者で詩人。そして同性愛者であり、この映画が出来た頃に亡くなっている。というか、完成までもたずに、別の人が制作を完成させた。
マーロン・リッグスはこれまでにも同性愛をテーマにしたドキュメンタリーを撮っていた。その集大成がこの作品。というか、彼の人生を語ろうとしているのがこのドキュメンタリーだ。詩人でもあるリッグスは、このドキュメンタリーをとても独特なリズムで語っている。おばあちゃんのガンボ(オクラやスモークソーセージや海老などが入ったごった煮スープ)が大好きだというリッグス。そのガンボと黒人の人生や同性愛者としての自分を重ね合わせている。テキサス生まれのリッグスは、幼い頃にルイジアナに毎年夏休みになると行っていた。そこで感じた「ライトスキン」と「ダークスキン」の事。そして黒人の呼び名もニグロからブラック、そしてアフリカン・アメリカンに変わって行った事。黒人男性のマッチョで性的なイメージ。そして黒人女性にまつわる「スーパーウーマン」的な通説。ブルースなどに代表される音楽や昔のハリウッド映画の影響。黒人の本当のアイデンティティとは?公民権運動時に活躍しワシントン大行進の発案者でオーガナイザーでもあったベイヤード・ラスティン(同性愛者でもあった)。などなど。
それに加えて、黒人の事も語っていく。面白いのが、アメリカ人でも知らないようなミシシッピーのドリューという小さな町の教会にも行って撮っている。黒人と教会の関係を語っていて、まだティーンの女の子が「ここが私がいるべき場所よ」と語っていた。同じくミシシッピー州のダブリンという町では15人も子供を産んだというおばあちゃんと釣りをしていた。かと思えば、ガラのセント・ヘレナ島まで出てきたりする。サウスカロライナにあるアフリカン村も出てきた。調べたら、まだあるんだね。
途中で挟んでくるビル・T・ジョーンズが振り付けした踊りがこれまた「らしい」雰囲気を醸し出していて良い!
そしてアンジェラ・デイビスにベル・フックスにコーネル・ウェストにマウラナ・カレンガ...と、詳しい人ならその名前を聞いただけでどんな感じか理解出来るような面子がインタビューを受けている。アンジェラ・デイビスにいたっては、珍しい事に自分の幼い頃の思い出まで語っている!この感じが90年代ぽい!スパイク・リーに触発された若い人々により、インテリ系の怒れる黒人が台頭してきた頃。90年代のあの頃の「らしさ」を凄く感じる!!なのでアイス・キューブが物凄くディスられているw。
ロサンジェルスの空港近くの黒人移住区であるイングルウッドの10代の3人が(というか1人は全く話さないので正確には2人だけど)、とても饒舌でしかも雄弁。「重要なのは学問・学歴だよ。それさえあれば、ここから抜け出せる。分かってるんだ。だから学校をサボった事はない。俺が抜け出せば、家族も友達も救える。それに遅いなんて事はないんだ!って、次の世代にも言わないとね」と... この映画からちょうど20年。頑張ってるかな、あの子たち...
マーロン・リッグスが死を覚悟した遺作であった。
(4.5点/5点満点中:6/17/14:DVDにて鑑賞)