やっとDVD化。やほい!女性スタンダップコメディの先駆者であるJackie “Moms” Mabley / ジャッキー・”マムズ”・メイブリーのドキュメンタリー映画。あのウーピー・ゴールドバーグが監督。しかも彼女ほどの人気があるにも関わらず、一般人から寄付を募るキック・スターターを頼っての制作。その後に映画祭で上映され、HBOにて放送。
マムズ・メイブリーは、1897年(1894年説もある)にノースカロライナでロレッタ・メアリー・エイキンとして生まれた。11歳で父を事故で無くし、14歳に家出。その間に2度もレイプ被害に遭い(映画では語られないが一人は地元の白人シェリフらしい)、しかもその2回共妊娠・出産という経験をしている。オハイオの宣教師の所で世話になり、その後にエンターテイナーのジャック・メイブリーと恋仲に。その彼の名前を頂いて芸名「ジャッキー・マムズ・メイブリー」としてステージに立つようになった。お母さん=Momに複数の「s」がついているのは、他のコメディアン達の母親代わりになるという意味がある。夫婦エンターテイナーのバタービンズ・アンド・スージーに見出され、全米を回るようになる。ニューヨークでもアポロ劇場やカーネギーホールなどに出演。それは黒人女性のパフォーマーとしては初の事であった。映画『Killer Diller / 日本未公開 (1948)』にも出演。やがて、白人の人々にも彼女の名が知られるようになる。人気の「エド・サリバン・ショー」や「スモザース・ブラザーズ」の番組に出たからだった...
上の説明は映画からだけじゃなくて、自分の持っている本からも足しましたが...ざっとこんな感じです。この映画でマムズについて語る面々がこれまた豪華!シドニー・ポワチエにハリー・ベラフォンテにビル・コズビーにクインシー・ジョーンズにエディ・マーフィ...そしてもちろんウーピー・ゴールドバーグ自身も語る語る。あ、あと先日他界してしまったジョーン・リバースも語っておりました。女性としてスタンダップコメディアンヌのマムズを尊敬しているようでした。エディ・マーフィは『The Nutty Professor / ナッティ・プロフェッサー/クランプ教授の場合 (1996)』のお婆ちゃんの変装は服装だけじゃなく話し方と声もマムズ・メイブリーを真似た!と暴露していたよ。という事で、彼女の特徴的なのはその服装。エリカ・バドゥの曲に「Bag Lady」っていうのがあるけど、まさにその女性の姿がマムズ・メイブリー。バッグ・レディとは見るからに貧しい女性の事で、そのバッグには彼女のコレクションが詰まっているという意味もある。コレクションといっても豪華な宝石とかそういうものじゃなくて、彼女の悲しい過去。そういう過去を引きずりながら抱えているのがバッグ・レディ。男に捨てられた過去とか色々。マムズの場合は、上にも書いた通りに2回ものレイプ被害がある。正にバッグ・レディだったんだ。その過去ゆえなのか、マムズは同性愛者として知られていた。でも当時は同性愛者とかそういう感じではなく、みな口を合わせて「マムズは、ミスター・マムズ・メイブリーだったのよ」という事である。でも舞台上では若い男が大好きというキャラもあって、彼女は最初の「クーガー」だとも言われている。
この映画ではプレイボーイ誌の番組にサミー・デイビス・ジュニアと出演した映像が見られる!サミーがいかにマムズがステキな女性か語り、「そうだ、俺が好きなあの曲歌ってよ!」とサミーがマムズに歌を歌わせる。それが「Abraham, Martin and John」という曲。暗殺されたリンカーンとキング牧師とジョン・F・ケネディの事を歌った曲。この曲でマムズはトップ40入りをしている。トップ40入りした最年長者となった。この曲をマムズが歌い終わると、そっとさりげなく涙をぬぐって、サミー・デイビス・ジュニアがマムズを優しくハグするシーンが滅茶苦茶ステキ!サミーのカッコよさを垣間見た。大爆笑させておいて、泣かす事も出来るマムズの事を、誰だかは「パワフルなコミュニケーション」と言っていて、その通りだと感じた。そして、ハリー・ベラフォンテがプロデュースした古いTV番組「A Time for Laugher」の映像まで見れた!ゴッドフリー・ケンブリッジとダイアナ・サンズと共にコントしていた!すげー!!
私が好きなマムズのジョークが「A woman's a woman until the day she dies, but a man's only a man as long as he can.(女は死ぬその日まで女だけど、男は出来るまでが男)」というもの。あははー、酷いけど、当時ここまで言えるなんてカッコいいわー。
(4.5点/5点満点中:9/28/14:DVDにて鑑賞)