The Angel Levine / さまよえる天使 (1970) 888本目
末広がりでメデタイぞろ目の888本目は天使の映画。何かいい感じっす。
この前からしつこい位に書いているビル・ガンが脚本を書いた作品。ビル・ガンは70年代に活躍していた数少ない黒人の脚本家の一人。彼は黒人故の苦悩を率直に台詞にいつも託していた。そのガンが、バーナード・マラマッドのショートストーリーを脚本にした。制作は主演も務めるハリー・ベラフォンテ。ハリー・ベラフォンテもつい先日に「オバマ大統領はガッカリ」と発言したりと、今でも現役の政治的な活動家でもある。その2人が組んでいるから、中々厳しい台詞が飛び交います。
物語は貧しいユダヤ人の妻が病気で寝たきり。彼は看病しながら、仕立て屋の仕事をしていたけど、その仕立て屋も火事に遭い、しかも保険にも入ってなかった。ある日、神よ!と叫ぶようにお祈りすると、なぜかアパートのキッチンに居たのが、黒人の男。それがハリー・ベラフォンテ。彼はなんと神から保護観察中の天使だった。このユダヤ人を演じたのがゼロ・モステル。彼自身がハリウッドの赤狩りで被害にあった人。心優しいユダヤ人の老人を好演してます。あんなに可哀想な役が似合う人もいない。もう見た目からいい人そう。助ける側の天使を助けてしまう。でも次第にお互いが必要である事が分かるのです。
その優しいユダヤ人の老人に向かって、天使はNワードを発する。凄い事ですよ。1970年ですからね。ビル・ガンらしいなーと唸ってしまいました。これはユダヤ人に向かってだから出来た事だろうし、監督がヤン・カダールというハンガリー出身の監督だから出来たかもしれない。この監督の手腕も素晴らしい。オープニングはかっこよ過ぎ。
それにしてもハリー・ベラフォンテは、今も現役ですが、60年代の公民権運動時には活動に精力的に参加していました。彼とサミー・デイビス・ジュニアはお金もつぎ込んでいるんですよね。NAACPがデモとかして捕まると、保釈金を払っていたのがベラフォンテとデイビスだったそう。ベラフォンテの方は何かあるとすぐに電話が掛かってきて、直ぐにお金を用意した。シドニー・ポワチエが自伝で明かしてましたね。
凄くビル・ガンだし、ハリー・ベラフォンテらしさもある。そこにゼロ・モステルが好演であります。
(4.75点/5点満点中:DVDにて鑑賞)