なんか最近私にはアフリカが足りないぞ...と感じてます。
なんとあの古典「カルメン」の南アフリカバージョン。しかも南アフリカの言語のひとつであるコサ語にて演じております。コサ語は、あの舌を打ち鳴らすような吸着音で有名。アメリカのコメディアンも、アフリカ人に化ける時に、あの音を真似する事が多い位、アフリカぽい言語かもしれない。その言葉で歌っていくあの「カルメン」の名曲達。あの「ハバネラ」を吸着音で歌うのが、恰幅のいいカルメン事、ポーリン・メールファネ。ジル・スコットを思わせます。ちなみに、アメリカの黒人版「カルメン」として有名なのが、あの名作「Carmen Jones / カルメン (1954)」ですね。あちらは、主演のドロシー・ダンドリッジもハリー・ベラフォンテも俳優としてだけでなく、歌手としても一流でハリー・ベラフォンテに至っては、歌手としての方がもしかしたら有名かもしれない位なのに、なぜか劇中の歌は吹き替えなんですよねー。でもこちらは出演者が歌っているようです。
内容はかなり「カルメン」とは違いますが、これもまた立派な「カルメン」なのです。アメリカ黒人版の「カルメン」の主役カルメンを演じたのは、ドロシー・ダンドリッジ。彼女はかなり白人に近い容姿の黒人。それもあって人気というのもあった。しかし、この南アフリカのカルメンはそんなの関係ない!いきなり冒頭から、南アフリカでは色が濃くて恰幅のいい、口もしっかりしていて、切れ目なのが良い!と宣言しています。切れ目という英語は、普通英語圏では我々アジア人への偏見の言葉となってますが、一方では意外と黒人の切れ目も多い。所変われば、美意識も全く違う。というか、そうやって宣言しちゃっている所が気持ちいいよね。痩せなきゃ!とか、焦っている女性達よりも、これが私の魅力なの!!って堂々としていて素敵。そういう自信がかっこ良く見える。最初は私も、いやいや「カルメン」じゃないでしょ?って思いました。さすがにね。でも、見ているうちに、彼女も立派なカルメンだわ!って思わす、かっこ良さがあるのです。
しかも物語を現代の南アフリカに据え置いている所もユニーク。葉巻工場が、タバコ工場になっているのも上手い。主役の男性は闘牛士から警察官へと変化。アメリカ黒人版の場合は、ハリー・ベラフォンテは軍人でしたよね。しかも、南アフリカの警察の腐敗も取り入れている。主役の男性の婚約者は、別の形で出てくる。アフリカの家族の密度とか固さを知れます。タロット占いも、アフリカに移れば上手く魔術師に変化します。
元々は舞台だったようですが、映画化するに当たって、これまた空間の面白さも演出。主役のカルメンがケープタウンのタウンシップを駆け回るシーンは面白い。そしてこの映画のカルメンを演じた恰幅のいい女優さんと、この映画の監督はなんと夫婦なのだそう!!監督はイギリス出身の白人男性。今は南アフリカにその女優と住んでいるらしい。2人のコンビネーションの良さもあってか、ベルリン映画祭で金熊賞を取ってます。
(4.75点/5点満点中:4/14/12にDVDにて鑑賞)