A Man Apart / ブルドッグ (2003) 1240本目
なぜかあんまり黒人としては見られていないヴィン・ディーゼル。特に日本では。実の父には会ったことが無いらしいが、黒人の血が流れていたと言われている。育ての親の父はアフリカ系アメリカ人。そんな所が、ヴィン・ディーゼルの背景にある文化の骨格をつくった。まあそれが彼を苦しめた部分もあるらしいが。そんなヴィン・ディーゼルが下積み時代に脚本から監督まで全部自身で作ったのが「Multi-Facial」。白人にも見えない、かと言って黒人にも見えない、ヒスパニックでもないのでヒスパニックを話す事も出来ない...エキセントリックな容姿ゆえにオーディションで中々役を得られない若手俳優を描いた作品。「not too light, not too dark(白すぎでもなく黒すぎでもない)」... それがヴィン・ディーゼルの個性でもある。この自主制作のショート映画をスピルバーグがたまたま見かけて、「プライベート・ライアン」に抜擢。イタリア系の兵士を演じ、一気にハリウッドで注目される事になったのが、ヴィン・ディーゼル。正に「マルチな顔を持つ男」。
メキシコの大物麻薬カーテルであるメモ・ルセロ(ジーノ・シルヴァ)を7年間の捜査の末、ようやく居場所を突き止める事に成功したのがロサンジェルスの麻薬捜査官(DEA)ショーン(ヴィン・ディーゼル)であった。ルセロは捕まった時に、ショーンに向かって「後悔する事になるぞ」と言い残し、警察の車に乗り込んだ。ショーンや相棒のヒックス(ラレンゾ・テイト)やDEA捜査官たちはパーティで手放しに喜んだ。これで少しは静かになると。しかし、そんな矢先にショーンの家が襲われる。ショーンは撃たれながらも暴漢たちを始末したが、妻が弾に当たり亡くなった。そして暴漢の1人が「ディアブロに近づくからだ」という言葉を残した。ディアブロが何者か全く分からない状況から、ディアブロを追い続けるショーン。一方で、刑務所に居るルセロの妻と息子が何者かに殺された。怒りに狂うルセロ。ディアブロの情報が欲しいショーンはルセロに近づく。ルセロも妻と息子が殺された復讐に燃えていたので、ショーンに情報を流す。その情報を元にショーンは覆面捜査としてディアブロの一味に近づくが、「バカな捜査官の妻を殺したんだ」と言われ、平常心を失い、覆面捜査がパーとなった。ショーンはDEAのバッチを失い、ずっと仲間だったヒックスからも見放されて...
話が面倒だけど、思った通りの作品。まあー、とにかくヴィン・ディーゼルが「らしさ」を爆発させている。優秀なDEA捜査官のくせに、昔は自分も悪だったパターン。こういうストリート・スマート系の役にディーゼルはぴったりとハマリますよね。日本だったら、確実にクラスに1人は居る、勉強は出来ないけれどスポーツは得意で体が大きくて威圧感があるけど、情には厚い親分タイプ。ジャイアンともまたちょっと違う。ルックスにも恵まれているから。とにかく強そうでカッコいい。妻を殺されたという悲哀を背負ったディーゼルが仇をとるために、得体の知れないディアブロをジリジリ追い詰める。そしていかにも頭が悪そうだけど、要領だけは良くてイライラさせるハリウッド・ジャックというキャラクターをケチョンケチョンにしていく面白さもある。
そしてそんなディーゼルの相棒を演じたラレンズ・テイト...と言えば何と言っても「Menace II Society / メナース II ソサエティー/ポケットいっぱいの涙 (1993)」のオー・ドッグ!今回の役はディーゼルと同じく、元悪だけど今は更生して真面目にDEAで働くパパ。ついつい昔の癖で悪い言葉が出ちゃうし、サウスセントラルでチマチマ麻薬を売りさばいている小物の悪党の気持ちはちょっとだけ理解出来ちゃう男。オー・ドッグはギャングの戦闘員だったけれど、今回もDEAの戦闘員として頑張っている。
監督は「Friday / friday (1995)」や「The Negotiator / 交渉人 (1998)」のF・ゲイリー・グレー!!今回の映画ではメキシコとかコロンビアとか色々飛びますが、やっぱり彼にLAを撮らせると、LA独特のレイドバックした「らしさ」が出る(スヌープのレイドバック感と言えば伝わるかな?)!懐かしいLAの町並み。90年代ぽいLA映画なんだよね、これ。
ヴィン・ディーゼルが、人種とか国籍とかそういうこだわりなしで、俺様ヴィン・ディーゼル!として個性の魅力をたっぷりに出し切っているヴィン・ディーゼル様映画!
(3.75点/5点満点中:6/1/14:DVDにて鑑賞)