Life of a King / 日本未公開 (2014) 1199本目
今、音楽は80年代、映画は90年代なんだと思う。グラミーを取ったダフト・パンクの「Get Lucky」なんて、ナイル・ロジャースまで引っ張り出してきてモロに80年代の曲。ブルーノ・マーズは曲は70年代ぽいと一瞬思うけど、実際には80年代的。あのブルーノ独特な軽さとポップさと楽しさは、レディ・フォー・ザ・ワールドとか思い出しちゃう。で、映画は90年代。スパイク・リーが台頭し、その下の世代ジョン・シングルトンにマティ・リッチにヒューズ兄弟が出てきた頃の90年代。ロサンジェルスやニューヨークの都会生活の厳しさを訴えた作品。ジョン・シングルトンの「Boyz N The Hood / ボーイズ’ン・ザ・フッド (1991)」の成功以降、それらの作品が量産された。その時にもっとも量産されたのが、「Malcolm X / マルコムX (1992)」を最高峰とする、元犯罪者が改心して自分のコミュニティに還元していくという物語だ*1。この映画もその90年代の香りがする映画。なんて言ったって1996年にアカデミー賞の助演男優賞を受賞したキューバ・グッディング・ジュニアが主演なんですもの!!
実際にあった出来事からインスパイアされて出来た作品。ワシントンDCが舞台。キューバ・グッディング・ジュニア演じるユージンという男は監獄に居た。格子越しにシアーシー(デニス・ヘイスバート)とチェスをしていた。どうやらシアーシーがユージンにチェスを教え込み、その他の事も色々と面倒と見ていた様子で、ユージンはもうすぐ出所する予定だった。しかし出所したらしたで、娘のカトリーナは滅茶苦茶怒っているし、何しろ職が見つからない。でも昔からの友人が学校の掃除をしていて、その仕事を推薦してくれた。学校の校長(リサゲイ・ハミルトン)は予算が無いから、あんまり払えないよと言われた。しかもユージンは履歴書の「逮捕歴あり?」の欄で、嘘ついて無しと答えた。しばらくして、学校を掃除中に、居残りさせられていた生徒達が悪さをして、先生が出て行ってしまった。校長は少しの間だけ、子供たちを見ていてと近くに居たユージンに頼んだ。その時にチェスを子供たちにやらせようとしたが、子供たちはバカにしてやらなかった。しかし子供たちの騒ぎを静め、校長はびっくりした。学校で放課後にチェスクラブをやる事を許してくれた。ようやく地に足がついたユージンだが、昔の仲間ペリー(リチャード・T・ジョーンズ)がやたらとちょっかい出してくる。しかもペリーが校長にユージンの逮捕歴の事をバラしたようで、ユージンは学校をクビになってしまう。しかしユージンは自分で家を購入し、自分のチェスクラブを始めたのだった!
チェスで子供たちを更生するというのは「Brooklyn Castle / 日本未公開 (2012)」っていうドキュメンタリーでも観た。短絡的な事件が多発する子供たちの間には、先々の事を考えながら駒を進めるチェスというものが、非常に役に立つのかもしれない。この映画のユージンが子供たちに託したメッセージもそれだった。「キングを守る為に、先を考えて駒を進めろ」というもの。それが出来なかった若い頃のユージンは悪い事をして捕まり、長いこと監獄に居た。また自分もそういう環境で生まれ育ったから、学校で問題を抱えた子供たちの気持ちや状況をすぐに汲み取る事が出来た。そんなユージンという男を、これまたキューバ・グッディング・ジュニアは魅力的に演じている。顔をしわくちゃにしながら。時には兄貴、時には父親、時には仲間となって、学生達に向き合っているのが上手い。学生を演じた3人にも目を引く。最高に悪いクリフトンを演じたカールトン・バード、チェスの類まれな天才的な才能をみせたTを演じたマルコム・M・メイズ、その2人とは幼馴染でユージンにもすぐに心を開く人懐っこいピーナッツを演じたケビン・ヘンドリックス。等身大。ピーナッツ役の子は、クリス・ブラウン的小動物系の目がウルウルの母性本能をくすぐるタイプなので、あの結末は非常に辛い。
90年代的映画にあった「状況は悪いけど、私だってやったるで!」的なやる気を与えてくれる。キューバ・グッディング・ジュニア、最近でもいい映画に出ているんだけど、どうもDVDスルーなんだよね...
(3.75点/5点満点中:2/17/14:DVDにて鑑賞)