SOUL * BLACK MOVIE * ブラックムービー

ブラックムービー、ブラックスプロイテーションなどについて

Respect Yourself: The Stax Records Story / 日本未公開 (2007) (TV) 1183本目

元々テネシー州最西端メンフィスは、ブルース音楽のメッカであり、素晴らしい音楽を生み出す土壌はあった。同じテネシー州には、東に行けばカントリー音楽で有名なナッシュビルまである。そんなメンフィスで白人の姉と弟はカントリーのレーベルを始めようと思い、黒人街で使われなくなった劇場を買い取った。指をスナップするロゴでお馴染みの「スタックス」の誕生である。姉のエステル・アクストンは元々は教師で、その息子はバンド「マーキーズ」に所属し、そのバンドがその劇場を練習所にし、レコーディングした。バンド「マーキーズ」の面々は白人だったが、黒人音楽が好きな連中だった。そんな彼等が演奏する音楽は黒人音楽。黒人街だったので、彼等の音楽は外に漏れ、黒人達が集まってくる。その1人がブッカー・T・ジョーンズ。ブッカー・Tと「マーキーズ」のメンバーのスティーヴ・クロッパーとドラマーのアル・ジャクソン・ジュニア、そしてルイス・スタインバーグという2対2の人種混合バンド「ブッカー・T&ザ・MG's」が結成された。その当時、メンフィスは南部に蔓延るジム・クロウ法で白人の住む世界と黒人が住む世界は真っ二つに分かれていた。当時を知る公民権運動家も「メンフィスという町は、全てが真っ二つに分かれていたよ」と言う程。

そして稀代のソウルシンガーのオーティス・レディングがやってくる。スタックスのメンバーは「ずいぶんと大男が来たな」と思った。しかしその大きな体から発せられる声に魅了され、スタックスにてレコーディング。スタックスにソウルを持ち込んだ男だった。

それからスタックスにはアル・ベルが入る。彼の地元アーカンソー州のリトル・ロックではラジオのDJだった男。アル・ベルは公民権運動は「黒人は経済的にも独立すべき。黒人ビジネスを支援」という人だった。そんなアル・ベルと、創設者のエステル・アクストンは方向性の違いにより、弟の共同設立者のジム・スチュアートは悩んだ末にアル・ベルを選び、当時黒人としては珍しくジム・スチュアートと共同経営者となった。その頃のスタックスはサム&デイブ「Hold On, I'm Comin'」(明石家さんま恋のから騒ぎのエンディング曲)をヒットさせた。その曲を書いた一人がアイザック・ヘイズだった。アイザック・ヘイズはスタックスの裏方として活躍していたが、「ホット・バタード・ソウル」をソロでヒットさせた。そしてアル・ベルはデトロイトの「ヒッツビル」事、モータウンに対抗心を燃やしていた。そんなアル・ベルが持ってきた話が、”黒人監督による、黒人主演映画”の「Shaft / 黒いジャガー (1971) 」の曲作りだった。黒人のアイザック・ヘイズが担当すれば、”黒人監督による、黒人主演映画で、黒人音楽家が担当”という、アル・ベルの思想そのものが達成される事になるのだ。アイザック・ヘイズはこの「黒いジャガーのテーマ」でアカデミー賞を受賞。

順調に見えるスタックスだが、実際は違った。その間には、大事なオーティス・レディングを飛行機事故で亡くしていた。そしてその事故から数週間後には、ずっと提携していたアトランティックで決別。しかもジム・スチュアートは、知らない間にスタックスのオリジナルマスターの権利まで、アトランタに受け渡すサインをしていたのだった。悪い事は続く。ジム・スチュアートもアル・ベルも、そしてスタックスのアーティスト達もが、脅されるようになる。そこにやってきたのが、警備員の男2人。この2人はアイザック・ヘイズボディガードとして出入りするようになり、何かあれば銃でしょっちゅう脅していた、筋金入りのギャングだった。

その後は、アル・ベルがザ・ステイプル・シンガーズやコメディアンのリチャード・プライヤーやビル・コズビーのコメディアルバムを成功させたり、ロサンジェルスのワッツで開催した「Wattstax / ワッツタックス (1973)」を映画にしたり、更には「Sweet Sweetback's Baadasssss Song / スウィート・スウィートバック (1971)」のサントラまで発売している。

しかし新しく契約したCBSレコードとも上手くいかず、長年裁判で争う事になり、経営破綻。かつて、オーティス・レディングが...アイザック・ヘイズが集まって名曲を作り出したあの劇場も取り壊された。

なんとも切なくなるドキュメンタリー映画。そしてメンフィスといえば、キング牧師が暗殺されたホテルがある。あのホテルは、スタックスのアーティストにとって心のよりどころで、第2のオフィスまで言われていた場所だった。そしてその暗殺後にあった電話オペレーターの悲劇が明らかになるというエピソードもあったり、オーティス・レディングが熱唱する場面もあり、生前のアイザック・ヘイズが語る場面もあり、U2のボノやエルヴィス・コステロがスタックスについて語ったり...と、音楽好きにはたまらない。60-70年のあの時代の音楽が鮮明によみがえってくる。スタックスっていい音楽作っていたよねーと。あのレーベル同士の結束もいい。なんというか、人種融合派にとって、スタックスは理想郷だった。

尚、DVDには2007年にブッカー・T&ザ・MG's、ウィリアム・ベル、エディ・フロイド、そしてアイザック・ヘイズが集まってリハーサルしている映像がおまけ。ヘイズは演奏していなかったみたいだけど、部屋に居るのは確認出来る。それを見るだけでも買いだぞ!またこの映像が良い!一曲終わった後に気分良くなったのか「このままレコーディングするか!」と上機嫌。こんな感じがスタックスだったんだろうなー。

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(5点満点:12/26/13:DVDにて鑑賞)