An Oversimplification of Her Beauty / 日本未公開 (2012) 1160本目
取っ付きにくい芸術志向の実験的映画。訳わかめですか?そんな感じの映画です。難しいよ。ネイティブじゃないから余計に難しいよ。いやネイティブでも難しい筈。タイトルの「Oversimplification(単純化し過ぎ)」なんていう単語は、この映画で初めて聞いた。まあ正直、訳分からない映画は嫌いじゃない。逆に好きな方。同じようにタイトルからして取っ付きにくい「Symbiopsychotaxiplasm: Take One / 日本未公開 (1968)」とかみたいな実験的な映画も大好きだし、何ていったって今の所生涯ナンバーワン映画は起承転結の無い「Killer of Sheep / 日本未公開 (1977)」だしね。アイアンマンの父が作った「Putney Swope / 日本未公開 (1969)」みたいなアヴァンギャルドな映画も好み。(つーか、私が好きなのは、全部日本未公開かよ!)まあこの映画はそんな映画な実験的で起承転結がないアヴァンギャルドな映画であります。
テレンス(テレンス・ナンス)は日本式にベッドを組み立てようと、木材を持って帰宅した。彼女(ナミック・ミンター)が来る予定で、ワクワクしていたけれど、その帰宅途中で電話が鳴り、今夜は無理になったという電話だった。そこからテレンスの感情の変化を追っていく。
ドキュメンタリー風で、ドラマ調。人形劇やアニメーション。台詞はほとんどなく、ナレーションと音楽。そんな感じでテレンスと彼女の感情を追っていく。「どう感じるのか?」と観客に問いながら。ナレーションもただただ読み上げるというよりは、詩的に読み上げていく。
最初に書いたように起承転結なんて無い。だから答えなんてこの映画にはない。だってテレンスと彼女の感情だけが映しだされていくのだから。「最高」で「幸せ」な作られた物語なんて無い。この映画が分からない人は、それでしょうがない。だってそういう映画だから。
っていう映画を作ったのが、テレンス・ナンスという人。テキサス出身で、芸術一家に生まれた。お母さんは女優で、お父さんは写真家で、おじはジャズミュージシャン。こういう映画を作るために生まれてきたかのような人。大学に進み、その後にニューヨーク大学で芸術修士号まで取得。その頃にベッドスタイに住み始め、その前はパリに数年住んでいたらしい。今はベッドスタイとカリフォルニアのオークランドを行き来しているらしい。ミュージックビデオも手がけていて、コーディ・チェズナットやファロア・モンチ等。見事な履歴書。しかし映画を作るにあたっては、8ミリオン程のアイデアがある!と、フジワラの原西みたいな事を言っております。
ジェイZやドリーム・ハンプトンに女優のジョイ・ブライアントにコメディアンのワイアット・セナックが出資。なぜかIMDBとかオフィシャルサイトには記載されていないけど、実際の映画のクレジットにはザ・ルーツのクエストラブも名を連ねておりました!
「芸術は爆発だ!」と、私とは同郷で母校の小学校には彼の作品「喜び(通称リボンちゃん)」があって、彼が来た時には同じクラスの優等生君がスピーチもしたので生で見たことがあるのが私の自慢でもある、岡本太郎氏は言っていました。既存のものに沿っているだけでは、何も新しいものは生まれない。自分のオリジナリティと、既存が大好きな社会との衝突!これぐらいやらないと!!自らタイトルで「Advancing Black Cinema(進化遂げるブラック・シネマ)」だと主張。テレンス・ナンス、難しいけど、頑張れ!とにかく頑張れ!!”あなたのおかげでがんばったのよ!!”
(4.25点/5点満点中:DVDにて鑑賞)