カナダがアカデミー賞の外国語部門に出展し、最終まで残りノミネートを果たした作品。カナダ制作ではあるが、サブサハラのアフリカが舞台。コンゴ民主共和国で撮影しているが、そこを特定して舞台にしている訳じゃないらしい。
とあるアフリカの国で出産を控えている14歳の女の子コモナ(ラシェル・ムワンザ)。お腹の中に入る自分の子供に話しかけている。どうやら12歳の時まで遡るようだ。12歳だったコモナが水汲みから帰ってくると、村が襲われた。コモナは自分とたいして変わらない年齢であろう男の子達に捕らわれた。目の前には両親も捕らわれていた。ちょっと年上の男が言う。「殺せ」と銃を渡される。そして「お前が殺さなければ、俺がもっと苦痛なマチェーテで殺す」と。コモナは泣きながら両親を殺した。両親の亡骸を埋める事もできず、コモナと別の子供たちは森の中に連れて行かれる。そこで教えこまれたのが、これからはAK47がお前らの母であり父である...という事。反政府軍「グレート・タイガー」の子供兵となっていたのだった。コモナは人を殺していくうちに幽霊を見るようになる。そして撃ち合いになったときに両親の幽霊が現れて、コモナを危ない場面から救ったのだった。それからコモナはグレート・タイガーの「戦争魔女」となった。そんな中、同じグレート・タイガーの子供兵の一人であるマジシャン(セルジュ・カニアンダ)が、コモナに親切にするのだった。
最近良くあるアフリカの悪い状況だけをクローズアップした作品(私はアフリカン・エクスプロイテーションと呼んでいる)かな?と、ちょっと思ってしまったのだけど、暗い話ばかりじゃなかったので引き込まれた。確かにそういう部分が無いとは言えない。でもそういうアフリカン・エクスプロイテーションを見ると、気持ちは暗くなるばかりである。子供兵とかの問題も無くしたいとは思っても、映画を見るだけの私たちには何も出来ない無力しか感じなかった。悲しさだけが残る。でもこの映画はホンのちょっとではあったけれど、少しだけ明るい部分もある。コモナとマジシャンの恋である。
あの状況ではお互いに恋に落ちてしまうのは簡単。でもマジシャンの男意気には感動してしまう。自分だってたった16歳の子供なのに、妻を持つという責任感をもう分かっているのだ。コモナがお父さんから言われていた「結婚は白いニワトリを見つけるまで無理」というと、必死で探すのだった。でも「やっぱり無理!白いニワトリなんて迷信でいないんだ。俺はもうどこかに消える」と去ろうとすると、コモナは追う。そしてマジシャンはまた迷信かもしれない白いニワトリを探し始める。自分が大切にして物まで渡して探したのだった。マジシャンのおじさんのお陰もあって、2人はつかの間の幸せを堪能する。あのシーンとバイクで帰るシーンに非常にホッとした。
でもね、本当につかの間。コモナは「グレート・タイガー」にとって大事な「戦争魔女」。そんな時、コモナは両親が殺された同じ状況にまた陥ってしまう。そんな事は今度はしないと、コモナは殺される覚悟を決める。でもマジシャンは「お前は俺の妻だ。幸せになれ」と妻を必死に守る。うぉー!ですよ。もう号泣。結婚すらビビっている男が多い中、16歳の男の子が映画とは言えそんな事を言えるんですよ!!クッキーのシーンからマジシャンに釘付け。
ところでマジシャンは、アルビノなのです。そして出てくる幽霊は白塗り。白いニワトリ... と「白」が印象的でこの映画のメタファー。アフリカではアルビノというだけで、襲われる事もあるのです。そんなマジシャンが非常に逞しくて魅力的でした。全然状況とかは違うんだけど、コモナとマジシャンの2人を見ていて「小さな恋のメロディ」を思い出した。トロッコで逃げ出せたら、どんだけ幸せか!!この映画を見ると、あの「恋メロ」の2人の悩みなんかちっぽけに思えてくる。結婚するなら、マジでマジシャンみたいな男が良いわ。ちゃんとニワトリ探してくれるし、最後にあんな言葉言うし!!コモナを演じたラシェル・ムワンザは、ベルリン映画祭で主演女優部門で銀熊賞を受賞。執念が凄かったよね。やっぱり最後はマチェーテだよね。
あ、ジャン=クロード・ヴァン・ダム!!が出ていた。なんでこういう映画に出ているの!!とびっくりしていたら、子供兵たちがヴァン・ダムの映画を見て興奮しているというシーンでした。すっかり騙されました。上手い演出。というか、みんなヴァン・ダムには興味ないよね?だって、この前ものすごく面白いヴァン・ダムの映像をツイートしたら、反応ゼロだったもん。嫌い??
そして、この映画は戦争のPTSDも描いているのが面白い。そうだよね。子供なら尚更辛いよね。
(4.75点/5点満点中:9/16/13:DVDにて鑑賞)