やっと観れた。サム・ポラードの作品。サム・ポラードはスパイク・リーの下で編集とか制作とかやっているスパイク傘下の人。監督としては、このようにドキュメンタリーが好きみたい。ニューヨーク大のTischで編集教えているらしい。今年のサンダンス映画祭も既に盛り上がっていますが、去年のサンダンス映画祭で上映された作品。
夫が先に見ていて、怒ってたんだけど、後から観て納得。そりゃ怒りますよ、この事実を知った日にはね。タイトルがここまでぴったりな作品も珍しい。「別の名前を使った奴隷制度」。奴隷制度は1863年に奴隷解放宣言によって禁止された筈だったが、実際は名前を別に変えて行われていたという事実。それを追ったのが南部出身の新聞記者ダグラス・A・ブラックモン。この人、白人の記者。高校時代は半数以上が黒人という高校に通っていた人。彼が書いた同タイトルの本は、ピューリッツァー賞を受賞。この作品でももちろん語っております。今は縁あって南部に生息していますが、今まで住んでいた所...たとえばカリフォルニアとは違うなーってすぐに感じました。何が違うって、はっきり言えば白人男性ですね。覚悟はしていたけれど、正直びっくりしました。あからさま。「arrogant(傲慢な、横柄な)」っていう単語がよくお似合い。運転の仕方もだし、態度がそういう風に現れている。でももちろん全員じゃないよ。逆にこんな優しい人見たことない!っていう位に、スイートな人も居る。もちろん普通の人も居る。でも酷い人はこんな酷い人見たことないって位に酷い。だから余計に分からないし、混乱しますわ。南部は極端なのよね。カリフォルニアでは、表には現さない人ばかりでみんな平均。差別とは感じないのよね、表上は。住んでみると、その違いがすぐに分かるよ。
ちなみに映画では奴隷状態で働かされていた人の子孫と、使っていた側の子孫が出てきて話している。両方の話が聞けるのも面白い。しかもその働かされていた子孫の一人が、オバマ政権で司法長官を務めているエリック・ホルダーの妻シャロン・マローンが出演し話している。
チェイン・ギャングとかは知っていたし、冤罪の黒人男性が長いこと...下手したら死ぬまで囚人だったという話は聞く。コメディで軽くだけど「Life / エディ&マーティンの逃走人生 (1999)」でもそれは描かれている。うちの夫は小さい頃にチェイン・ギャングが道端で働かされているのを見ているらしい。いや、囚人が働かされているのは良いと思う。刑務所や監獄も税金使うし、それで賄えるなら良い。アイス・キューブも曲で「監獄は億万ビジネス」ってラップしてたね。でもそれが黒人だけだったというのが問題な訳だ。後々白人のジョン・W・ペースという人物が「Peonage(囚人労働・ただ働き)」で罰せられた。このペースは精神的に黒人を追い詰めていた。ただで働くのが当然の事だと。しかも町の裁判官が仲間で、何でもない罪でもペースのプランテーションで働く事を余儀なくされたらしい。面白いのが同じ裁判官がペースに禁固5年の刑を言い渡したという事。しかし当時の大統領であるセオドア・ルーズベルトがペースに恩赦を与え、ペースは一度も刑務所も監獄にも入っていない。でも黒人の多くはセオドア・ルーズベルトを信じていたから、中には家族が囚人労働させられているから助けて欲しいとルーズベルトに直接手紙を書いた人達も多かった。もちろんルーズベルトは返事をしていない。意外だよね。セオドア・ルーズベルトって、割りとアメリカでは人気のある大統領。これが1901年とか1903年の頃。
で、これがいつ終わったか...ですよね。なんと日本がパールハーバーを襲撃した5日後。パールハーバーを襲撃された当時の大統領フランクリン・ルーズベルトが「なぜ日本はアメリカを攻撃するのかね?」と訪ねた所、ある人物が「アメリカに於ける黒人の扱い方です」と答えたからと言われている。その5日後にルーズベルトは大統領令第3591号に署名した。それは「白人がただ働きや不本意な奴隷状態にさせたら積極的に起訴する。そして1942年にはこの奴隷状態の形を終了させてる事」という事だった。という事で奴隷状態だった事をアメリカは認めた形なんですよね。という事は奴隷解放から今年は150年だと思っていたけれど、本当はたったの71年目だったという事です... そりゃ怒るわ!
そして日本が関わっていた事が私には非常に興味深い。うちの夫は「たまたま」と言っていたけど、私はたまたま説は信じていない。そうなると、疋田保一とか中根中とかの合点していく。そして日本が第2次世界大戦での本当の敵というのも分かってくる。やっぱりそうだったんだ!と思えてくる。見る人によっては色々な気持ちが湧くんじゃないかな。久々に色々と調べたくなるパワーの持つ、面白いドキュメンタリーだった!
(5点満点:1/19/13:TV放映にて鑑賞)